1970年の災害防止(船員)勧告(第142号)

ILO勧告 | 1970/10/30

船員の職業上の災害の防止に関する勧告(第142号)


 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十年十月十四日にその第五十五回会期として会合し、
 多くの国において船員の職業上の災害を減少させるため多くのことが行なわれているにもかかわらず、それらの災害について一層の研究を行ない及びそれらの災害の防止のため一層の措置をとる余地があること並びに海事部門における適切な活動計画を具体化する国際的な基準を設けることが望ましいことを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第五議題である海上及び港における船内の災害の防止に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百七十年の災害防止(船員)条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定し、
 次の基準が政府間海事協議機関の協力の下に作成されたこと並びに、それらの基準の適用を促進し及び確保するにあたつては、同機関の継続的な協力を求めることが望まれることに留意して、
 次の勧告(引用に際しては、「千九百七十年の災害防止(船員)勧告」と称することができる。)を千九百七十年十月三十日に採択する。

1 この勧告の適用上、
 (a) 「船員」とは、海洋航行に通常従事する船舶(軍艦を除く。)に雇い入れられているすべての者(資格のいかんを問わない。)をいう。
 (b) 「職業上の災害」とは、船員の職務に関連して又は職務の遂行中に生ずる災害をいう。

2 加盟国は、千九百七十年の災害防止(船員)条約第二条3の規定を実施するにあたり、国際労働機関が確立する船員の災害を記録する国際的組織を考慮すべきである。

3 千九百七十年の災害防止(船員)条約第三条の規定による調査の対象には、次の事項を含めることができる。
 (a) 作業の場所、機械類の配置、通行及び照明の方法等の作業環境並びに作業方法
 (b) 年齢別の災害発生状況
 (c) 船内環境がもたらす特殊な生理的又は心理的の問題
 (d) 特に労働量の増加により船内における肉体的圧迫から生ずる問題
 (e) 技術革新から生ずる問題及び技術革新が乗組員の構成に及ぼす影響
 (f) 不注意等の人の過失から生ずる問題

4 加盟国は、千九百七十年の災害防止(船員)条約第四条の規定により要求される災害防止規定を定めるにあたり、国際労働機関が発行する船員の安全及び健康に関する慣行例規を考慮すべきである。

5 千九百七十年の災害防止(船員)条約第五条の規定を実施するにあたり、千九百六十三年の機械防護条約第七条及び第十一条の規定並びに千九百六十三年の機械防護勧告の相当する規定を考慮すべきである。それらの規定においては、使用者は、使用中の機械に適当な防護装置を施し、及び適当な防護装置が施されていない機械の使用を禁止する要求を遵守する義務を課され、労働者は、防護装置が所定の箇所に設けられていない機械を使用せず、及び設けられている防護装置を無効にしない義務を課されている。

6(1) 千九百七十年の災害防止(船員)条約第八条3に規定する委員会その他の機関の職務には、次のことを含めることができる。
(a) 災害防止に関する規定、規則及び手引きを作成すること。
(b) 災害防止のための訓練及び計画を組織すること。
(c) 災害防止のための広報活動(映画、ポスター、掲示及びパンフレットを含む。)を組織すること。
(d) 災害防止の読物及び情報を船内にある船員に届くように配布すること。
 (2) 災害防止措置又は勧告される慣行の本文を作成するにあたり、適切な国の機関若しくは団体又は責任のある国際海事機関が採択する関係のある規定又は勧告を考慮すべきである。

7 千九百七十年の災害防止(船員)条約第九条に規定する教科課程の概要は、定期的に検討し、船舶の型式、大きさ及び設備の発達並びに乗組みの慣行、国籍、言語及び船内作業組織の変更に照らして最新のものに維持すべきである。

8(1) 災害防止のための広報活動を継続的に行なうべきである。
 (2)  (1)の広報活動は、次の形式をとることができる。
(a) 船員のための職業訓練所における教育用映画、スライド及び短編映画の映写並びに可能な場合には船内におけるそれらの映写
(b) 安全に関するポスターの船内における掲示
(c) 船員が講読する定期刊行物への海上労働の危険及び災害防止措置に関する記事の掲載
(d) 災害防止及び安全作業の慣行に関し船員を教育するため各種の広報手段が用いられる特別の運動
 (3) 広報活動を行なうにあたり、船内にある船員の国籍、言語及び習慣がしばしば異なることを考慮すべきである。

9(1) 加盟国は、千九百七十年の災害防止(船員)条約第十条の規定を実施するにあたり、国際労働事務局が刊行する安全規則基準集又は慣行例規及び他の国際機関が基準化のために採用する適切な基準を考慮すべきである。
 (2) 加盟国は、さらに、職業上の災害を防止するための活動を継続的に促進するにあたり国際協力が必要であることを考慮すべきである。それらの協力は、次の形式をとることができる。
(a) 災害防止のための基準及び安全装置の統一に関する二国間又は多数国間の協定
(b) 船員に影響のある特殊な危険及び災害防止の方法に関する情報の交換
(c) 船舶の登録国の規則による設備の検査及び監督の援助
(d) 災害防止に関する規定、規則及び手引きの作成及び配布に関する協力
(e) 教材の提供及び使用に関する協力
(f) 災害防止及び安全作業慣行に関する船員の訓練のための共同施設の設置又は相互援助