1973年の最低年齢勧告(第146号)

ILO勧告 | 1973/06/26

就業の最低年齢に関する勧告(第146号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十三年六月六日にその第五十八回会期として会合し、
 児童労働の実効的な廃止及び就業の最低年齢の漸進的な引上げが児童及び年少者の保護と育成の一側面にすぎないことを認識し、
 そのような保護及び育成が国際連合制度全体の関心事であることに留意し、
 千九百七十三年の最低年齢条約を採択し、
 国際労働機関の関心事である政策要綱を更に明確にすることを希望し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である就業の最低年齢に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百七十三年の最低年齢条約を補足する勧告の形式をとるべきであると決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百七十三年の最低年齢勧告と称することができる。)を千九百七十三年六月二十六日に採択する。

I 国内政策

1 千九百七十三年の最低年齢条約第一条に規定する国内政策の成功を確保するため、国内の開発政策及び開発計画における児童及び年少者の必要に応じるための企画及びその実施並びに心身の発達のためできる限り最善の条件を児童及び年少者に与えるために必要な相互に関連のある措置の漸進的な拡充に対し、高度の優先権が与えられるべきである。
2 これに関連して、次のような企画及び政策の分野に特別の注意が払われるべきである。
(a) 千九百六十四年の雇用政策条約及び勧告に基づく国の完全雇用政策の追求に関する確固たる誓約並びに農村及び都市地域において雇用指向的な開発を促進することを目的とする措置の採用
(b) 貧困が存在するところにおいてはそれを軽減するため並びに児童の経済活動に依存することを必要としないような家族の生活水準及び収入を確保するための他の経済的及び社会的な措置の漸進的な拡充
(c) 児童の扶養を確保することを目的とする社会保障及び家族福祉に関する措置(児童手当を含む。)のいかなる差別も伴わない開発及び漸進的な拡充
(d) 形式及び内容において関係児童及び関係年少者の必要に適した教育、職業指導及び職業訓練のための適切な施設の開発及び漸進的な拡充
(e) 児童及び年少者(被用者である年少者を含む。)の保護及び福祉のため並びにそれらの者の発育の促進のための適当な施設の開発及び漸進的な拡充
3 家族のない又は家族と同居していない児童及び年少者並びに家族とともに生活しながら移動している児童及び年少者の必要について、特別の配慮が必要に応じて行われるべきである。その目的のためにとられる措置には、奨学金の支給及び職業訓練の提供を含むべきである。
4 全日制の学校への出席又は認定された職業指導課程若しくは職業訓練課程の受講は、少なくとも、千九百七十三年の最低年齢条約第二条の規定に従つて明示された就業の最低年齢を下回らない年齢に達するまで要求され、かつ、効果的に確保されるべきである。
5(1) 特定の業務につき千九百七十三年の最低年齢条約第三条の規定に従つて定められた最低年齢が全日制の義務教育を終了する年齢よりも高い場合には、そのような業務のための準備訓練(危険を伴わないもの)のような措置に対して考慮が払われるべきである。
(2) 特定の職業がその職業上の要件として全日制の義務教育を終了する年齢よりも高い就業の最低年齢を含む場合には、同様の措置が考慮されるべきである。

II 最低年齢

6 最低年齢は、経済活動のすべての部門につき、同一の水準に定められるべきである。
7(1) 加盟国は、千九百七十三年の最低年齢条約第二条の規定に従つて明示された就業の最低年齢を、十六歳まで漸進的に引き上げることを目標とすべきである。
(2) 千九百七十三年の最低年齢条約第二条の規定に基づく就業の最低年齢が十五歳未満である場合には、当該最低年齢をその水準まで引き上げるため、緊急の措置がとられるべきである。
8 農業及び農村地域における農業に関連する活動におけるすべての使用について直ちに最低年齢を定めることが不可能な場合には、少なくとも、農園及び千九百七十三年の最低年齢条約第五条3にいう他の農業的企業における使用につき、最低年齢が定められるべきである。

III 危険な業務

9 年少者の健康、安全又は道徳を損なうおそれのある業務に就かせることができる最低年齢が十八歳未満である場合には、当該最低年齢をその水準まで引き上げるため、直ちに措置がとられるべきである。
10(1) 千九百七十三年の最低年齢条約第三条の規定の適用を受ける業務を決定するに当たり、危険な物質、因子若しくは工程(電離放射線を含む。)並びに重量物の取扱い及び坑内労働に関する国際的な労働基準等の関係のある国際的な労働基準につき、十分な考慮が払われるべきである。
(2) 当該業務の一覧表は、定期的に再検討され、必要に応じ、特に進歩する科学及び技術の知識に照らして改正されるべきである。
11 千九百七十三年の最低年齢条約第五条の規定に関連し、一定の経済活動の部門又は一定の種類の企業について最低年齢が直ちに定められない場合には、それらにおいて、適当な最低年齢の規定が年少者にとつて危険な業務について適用されるようにすべきである。

IV 就業の条件

12(1) 児童及び十八歳未満の年少者の就業の条件が満足な水準に達し、かつ、その水準で維持されることを確保するための措置がとられるべきである。その条件は、厳重な管理監督の下に置かれるべきである。
(2) 児童及び年少者が企業、訓練施設及び職業教育又は技術教育のための学校における職業指導及び職業訓練を受ける条件を保障し、かつ、監督するための措置並びにそれらの者の保護及び発育に関する基準を作成するための措置が同様にとられるべきである。
13(1) 12の規定の適用に関連し、千九百七十三年の最低年齢条約第七条3の規定の実施に当たり、次のことに特別の注意が払われるべきである。
(a) 同一労働に対する同一賃金の原則を考慮した公正な報酬の支払及びその保護
(b) 教育及び訓練(家庭における学習に必要な時間を含む。)、労働日における休息並びに余暇活動のために十分な時間がとれるような一日及び一週間の労働時間に対する厳格な制限並びに時間外労働の禁止
(c) 夜間における継続十二時間以上の休息及び慣例的な週休日の付与(真に緊急な場合を除くほか、例外の可能性が認められない。)
(d) 四週間以上の年次有給休暇の付与。ただし、いかなる場合にも、成人に与えられる年次有給休暇よりも短いものであつてはならない。
(e) 業務災害給付、医療及び疾病給付の制度を含む社会保障制度の適用(就業の条件のいかんを問わない。)
(f) 安全及び衛生に関する満足な基準の維持並びに適当な教育及び監督
(2) (1)の規定は、年少船員が(1)で取り扱われている事項につき海上労務に関する国際労働条約又は勧告によつて保護されない限り、年少船員について適用する。

V 実施

14(1) 千九百七十三年の最低年齢条約及びこの勧告の効果的な適用を確保するための措置には、次のことを含むべきである。
(a) 労働監督及びこれに関連する業務の必要な強化。例えば、児童及び年少者の就業における酷使を発見し並びにそれを是正するための監督官の特別の訓練
(b) 企業内訓練の改善及び監督のための業務の強化
(2) 関係規定を遵守する効果的な方法に関し情報及び助言を与え、その実施を確保する上で監督官が果たすことのできる役割が強調されるべきである。
(3) 労働監督及び企業内訓練の監督は、最大の経済的効率を確保するため緊密に調整されるべきであり、また、労働行政機関は、一般に、児童及び年少者の教育、訓練、福祉及び指導について責任を負う機関との密接な協力の下に運営されるべきである。
15 次のことに特別の注意が払われるべきである。
(a) 危険な業務における使用に関する規定の実施
(b) 教育又は訓練が義務的な場合におけるそれらの教育又は訓練の時間中の児童及び年少者の就業の防止
16 次の措置が年齢の確認を容易にするためにとられるべきである。
(a) 公の機関は、出生証明書の発給を含む出生の登録に関する効果的な制度を維持すべきである。
(b) 使用者は、その使用する児童及び年少者のみではなく、当該使用者の企業において職業指導又は職業訓練を受ける児童及び年少者の氏名及び年齢又は生年月日(できる限り正当に証明されたもの)を示した名簿その他の文書を保存し並びに権限のある機関の利用に供することを要求されるべきである。
(c) 街頭、露店、公共の場所若しくは巡回職業において又は使用者の保持する記録を点検することが不可能なその他の環境において労働する児童及び年少者は、それらの労働に対する適格性を示す許可証その他の文書の発給を受けるべきである。