1996年の船員の募集及び職業紹介勧告(第186号)

ILO勧告 | 1996/10/22

船員の募集及び職業紹介に関する勧告(第186号) 

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二十一年六月十八日にその第百九回会期として会合し、八本の国際労働条約の廃止並びに十本の国際労働条約及び十一本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二十一年六月十八日に、千九百九十六年の船員の募集及び職業紹介勧告(第百八十六号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十六年十月八日にその第八十四回会期として会合し、
 前記の会期の議事日程の第三議題である千九百二十年ノ海員紹介条約の改正に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百九十六年の船員の募集及び職業紹介条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百九十六年の船員の募集及び職業紹介勧告と称することができる。)を千九百九十六年十月二十二日に採択する。

1 権限のある機関は、次のことを行うべきである。
  (a) 公共であるか又は民間であるかを問わず、募集及び職業紹介機関の間の効果的な協力を促進するために必要な措置をとること。
  (b) 船員の訓練計画を作成するに当たり、船舶所有者、船員及び関連のある訓練機関の参加を得て国内的及び国際的な海運業における需要を考慮すること。
  (c) 公共の募集及び職業紹介機関が存在する場合には、代表的な船舶所有者団体と船員団体との間の当該機関の組織及び運営における協力のために適当な措置をとること。
  (d) 次の事項を含む海事労働市場に関連するすべての情報の収集及び分析のための措置を維持すること。
   (i)  年齢、性別、等級及び資格ごとに分類された船員の現在の及び将来見込まれる供給並びに海運業の需要。ただし、年齢及び性別に関する情報の収集は、統計上の目的のために又は年齢及び性別に基づく差別を防止するための計画の枠組みにおいて使用される場合にのみ認められる。
   (ii)  自国及び外国の船舶における雇用の可能性
   (iii) 雇用の継続性
   (iv)  見習、練習生その他の訓練生に対する職業紹介
   (v)  将来船員になることが見込まれる者に対する職業指導
  (e) 募集及び職業紹介機関を監督する責任を有する職員が十分に訓練され、かつ、海運業に関連する知識を有していることを確保すること。
  (f) 募集及び職業紹介機関の運営上の基準を定め又は承認すること並びに当該機関の業務上及び職業倫理上の規範の策定を奨励すること。
  (g) 質的基準の制度に基づく継続的な監督を促進すること。
2 1(f)の運営上の基準には、次の事項に関する規定を含むべきである。
  (a) 募集及び職業紹介機関の経営者及び職員に求められる資格及び訓練。この資格及び訓練は、海事部門の知識、特に訓練、資格証明及び労働基準に関する海事関係の国際的な文書についての知識を含むべきである。
  (b) 海上における雇用を求める船員の登録簿の保管
  (c) 健康検査、予防接種、船員の証明書その他船員が雇用を得るために必要とされるもの
3 1(f)の運営上の基準は、特に、募集及び職業紹介機関が次のことを行うことを規定すべきである。
  (a) プライバシーの権利及び秘密保護の必要性に十分な考慮を払って、募集及び職業紹介の制度の対象となる船員の十分かつ完全な記録を保管すること。この記録は、主として、次のものを含むべきである。
   (i)  船員の資格
   (ii)  雇用に関する履歴
   (iii) 雇用に関連する個人に係る情報
   (iv)  雇用に関連する健康に係る情報
  (b) 乗組員の供給先である船舶の最新の乗組員名簿を保管し及び緊急の場合にはいつでも連絡が取れるための手段があることを確保すること。
  (c) 特定の船舶又は会社による雇用の提供に関して船員が募集及び職業紹介機関又はその職員により搾取されないことを確保するための正式な手続を有すること。
  (d) 当該機関が取り扱う使用者と当該使用者が使用する船員との間における賃金の前払又は金銭上の取引から生ずる船員の搾取を防ぐための正式な手続を有すること。
  (e) 船員が負担することとなる健康検査又は証明書の経費を明確に公表すること。
  (f) 船員が雇用により従事することとなる職務に適用される特定の条件及び船員の雇用に関する使用者の特定の方針について当該船員に情報が与えられることを確保すること。
  (g) 能力のないこと又は訓練を受けていないことに関連する事例を取り扱うために、自然的正義の原則に基づくとともに、国内法令及び国内慣行並びに適当な場合には労働協約に合致する正式な手続を有すること。
  (h) 雇用のために提出される船員の資格証明書及び健康証明書が最新のものであり、かつ、不正に取得されたものでないこと並びに雇用に関する履歴が確認されていることを実行可能な限り確保するための正式な手続を有すること。
  (i) 船員が海上にいる間、当該船員の家族による情報又は助言の要請が迅速かつ好意的に及び無料で処理されることを確保するための正式な手続を有すること。
  (j) 政策の問題として、適用される法令及び労働協約に従った雇用条件を船員に提示する使用者に対してのみ船員を供給すること。
4 次の事項を含む加盟国及び関係機関との間における国際協力が促進されるべきである。
  (a) 二者間、多数者間及び地域における海運業及び海事労働市場に関する情報の体系的な交換
  (b) 海事労働法制に関する情報の交換
  (c) 船員の募集及び職業紹介に関する政策、運営方法及び法制の調和
  (d) 船員の国際的な募集及び職業紹介のための手続及び条件の改善
  (e) 船員の需給及び海運業の需要を考慮に入れた労働力計画の策定