1921年の週休(工業)条約(第14号)

ILO条約 | 1921/11/17

工業的企業に於ける週休の適用に関する条約(第14号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百二十一年十月二十五日を以て其の第三回会議を開催し、
 右会議の会議事項の第七項目の一部たる工業上の使用に於ける週休日に関する提案の採択を決議し、且
 該提案は国際条約の形式に依るべきものなることを決定し、
 国際労働機関の締盟国に依り批准せらるるが為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百二十一年の週休(工業)条約と称せらるべき左の条約を採択す。

第 一 条

1 本条約に於て「工業的企業」と称するは、左に掲ぐるものを包含す。
 (a) 鉱山業、石切業其の他土地より鉱物を採取する事業
 (b) 物品の製造、改造、浄洗、修理、装飾、仕上、販売の為にする仕立、破壊若は解体を為し又は材料の変造を為す工業(造船並電気又は各種動力の発生、変更及伝導を含む。)
 (c) 建物、鉄道、軌道、港、船渠、棧橋、運河、内地水路、道路、隧道、橋梁、陸橋、下水道、排水道、井、電信電話装置、電気工作物、瓦斯工作物、水道其の他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更又は解体及上記の工作物又は建造物の準備又は基礎工事
 (d) 道路、鉄軌道又は内地水路に依る旅客又は貨物の運送(船渠、岸壁、波止場又は倉庫に於ける貨物の取扱を含むも人力に依る運送を含まず。)
2 右の定義は、工業的企業における労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する華盛頓条約の定むる特殊国の例外に其の本条約に適用せられ得る限り従ふべし。
3 各締盟国は、右列記の外、必要に応じ工業と商業及農業との分界を定むることを得。

第 二 条

1 左の諸条に別段の規定なき限り、一切の公私の工業的企業又は其の各分科に於て使用せらるる総ての従業者は、七日の期間毎に一回少くとも継続二十四時間の休暇を享受すべし。
2 右休暇は、右企業の総ての従業者に対し能ふ限り同時に之を与ふべし。
3 右休暇は、当該の国又は地方の因襲又は慣習に依り既に定まれる日と能ふ限り一致する様定めらるべし。

第 三 条

 各締盟国は、同一の家に属する者のみを使用する工業的企業に使用せらるる者を第二条の規定の適用より除外することを得。

第 四 条

1 各締盟国は、人道的及経済的の相当なる一切の考察を特に参酌し且責任ある使用者団体及労働者団体の存在するときは之と協議したる上、第二条の規定の全部又は一部の例外(停止又は短縮を含む。)を許可することを得。
2 右の協議は、現行法制の下に例外の既に定まれる場合に於ては之を要せず。

第 五 条

 各締盟国は、第四条に基く停止又は短縮に対し代償休暇を能ふ限り設くべし。但し、協定又は慣習に依り右休暇の既に設けられたる場合は、此の限に在らず。

第 六 条

1 各締盟国は、第三条及第四条に基く例外の表を作成し、国際労働事務局に之を通告すべく、且該表に加へらるる変更を爾後二年毎に通告すべし。
2 国際労働事務局は、本件に関する報告を国際労働機関の総会に提出すべし。

第 七 条

 本条約の規定の適用を容易ならしむる為、各使用者、理事者又は支配人は、左の義務を有すべし。
 (a) 総ての従業者に対し週休を全般的に与ふる場合に於ては、工場其の他の便宜の場所に見易き様掲示することに依り又は政府の承認する他の方法に依り、右全般的休暇の日及時を知らしむること。
 (b) 総ての従業者に対し休暇を全般的に与へざる場合に於ては、労働者又は使用人にして特別なる休暇制度に服する者を当該国の法令又は権限ある機関の規則の承認する方法に従ひ作成せらるる出勤者名簿に依り知らしむべく且右制度を指示すること。

第 八 条

 国際労働機関憲章に定むる条件に依る本条約の正式批准は、登録の為国際労働事務局長に之を通告すべし。

第 九 条

1 本条約は、事務局長が国際労働機関の締盟国中の二国の批准を登録したる日より効力を発生すべし。
2 本条約は、該事務局に其の批准を登録したる締盟国のみを拘束すべし。
3 爾後本条約は、他の何れの締盟国に付ても、右事務局に其の批准を登録したる日より効力を発生するものとす。

第 十 条

 国際労働機関の締盟国中の二国が国際労働事務局に本条約の批准の登録を為したるときは、事務局長は、国際労働機関の一切の締盟国に右の旨を通知すべし。事務局長は、爾後該機関の他の締盟国の通知したる批准の登録を一切の締盟国に同様に通告すべし。

第 十 一 条

 本条約を批准する各締盟国は、千九百二十四年一月一日迄に第一条、第二条、第三条、第四条、第五条、第六条及第七条の規定を実施し、且右規定を実施するに必要なる措置を執ることを約す。

第 十 二 条

 本条約を批准する国際労働機関の各締盟国は、国際労働機関憲章第三十五条の規定に依り、其の殖民地、属地及保護国に之を適用することを約す。

第 十 三 条

 本条約を批准したる締盟国は、本条約の最初の効力発生の日より十年の期間満了後に於て、国際労働事務局長宛登録の為にする通告に依り之を廃棄することを得。右の廃棄は、該事務局に登録ありたる日以後一年間は其の効力を生ぜず。

第 十 四 条

 国際労働事務局の理事会は、少くとも十年に一回本条約の施行に関する報告を総会に提出すべく、且其の改正又は変更に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきや否やを審議すべし。

第 十 五 条

 本条約は、仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に正文とす。