1925年の労働者補償(職業病)条約(第18号)

ILO条約 | 1925/06/10

労働者職業病補償ニ関スル条約(第18号)
(昭和三年十月八日批准登録)

 国際労働機関ノ総会ハ
 国際労働事務局ノ理事会ニ依リジユネーヴニ招集セラレ千九百二十五年五月十九日ヲ以テ其ノ第七回会議ヲ開催シ
 右会議ノ会議事項ノ第一項目ノ一部タル労働者職業病補償ニ関スル提案ノ採択ヲ決議シ且
 該提案ハ国際条約ノ形式ニ依ルベキモノナルコトヲ決定シ
 国際労働機関ノ締盟国ニ依リ批准セラルルガ為国際労働機関憲章ノ規定ニ従ヒ千九百二十五年六月十日千九百二十五年ノ労働者補償(職業病)条約ト称セラルベキ左ノ条約ヲ採択ス

第 一 条

1 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ職業病ニ因リ労働不能ト為リタル労働者ニ、又ハ右疾病ノ為死亡シタルトキハ其ノ被扶養者ニ、産業災害補償ニ関スル当該国ノ法制ノ一般原則ニ従ヒ補償ヲ支払フベキヲ定ムルコトヲ約ス
2 右ノ補償ノ率ハ産業災害ニ因リ生ズル傷害ニ関スル当該国ノ法制ノ定ムル率ヲ下ルコトヲ得ズ、右ノ規定ヲ条件トシテ各締盟国ハ前記ノ疾病ニ対スル補償ノ支払ハルベキ条件ヲ当該国ノ法令又ハ規則中ニ定ムルニ付又産業災害補償ニ関スル其ノ法制ヲ前記疾病ニ適用スルニ付其ノ便宜ト思惟スル変更及修正ヲ加フルコトヲ得

第 二 条

 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ本条附表ニ掲グル料品ニ因リ生ズル疾病及中毒ガ右附表ニ於テ対当シテ掲ゲラルル工業又ハ職業ニ従事スル労働者ヲ冒シ且当該国ノ法制ノ適用ヲ受クル企業ニ於ケル就業ノ結果生ズルトキハ右疾病及中毒ヲ職業病ト認ムルコトヲ約ス

〔附 表〕

(疾病及有毒料品ノ種目) (之ニ対当スル工業又ハ職業ノ種目)
鉛、其ノ合金又ハ化合物ノ中毒及其ノ続発症
含鉛礦石ノ取扱(亜鉛工場ニ於ケル鉛灰ヲ含ム)
古亜鉛及鉛ノ「インゴツト」鋳造
鋳造又ハ鉛合金ヨリ成ル物品ノ製造
複写業ニ於ケル作業
鉛化合物ノ製造
蓄電池ノ製造及修理
鉛ヲ含ム「エナメル」ノ製造及使用
鉛鑪又ハ鉛ヲ含ム「パテ」粉ヲ以テスル琢磨
鉛顔料ヲ含ム塗料、膠着料品又ハ着色料品ノ製造
及取扱ヲ含ム一切ノ塗布作業
水銀、其ノ「アマルガム」及化合物ノ中毒並其ノ続発症 水銀礦石ノ取扱
水銀化合物ノ製造
計量器具及実験用器具ノ製造
製帽業用ノ粗製材料ノ製造
「アマルガム」鍍金
灼熱灯ノ製造ニ於ケル水銀喞筒ノ使用
雷汞雷管ノ製造
炭疽病感染 炭疽病ニ感染セル動物ニ関聯スル作業
皮蹄及角ヲ包含スル動物ノ残骸又ハ右残骸ノ一部ノ取扱
商品ノ積込及荷卸又ハ運送

第 三 条

 国際労働機関憲章ニ定ムル条件ニ依ル本条約ノ正式批准ハ登録ノ為国際労働事務局長ニ之ヲ通告スベシ

第 四 条

1 本条約ハ事務局長ガ国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スベシ
2 本条約ハ該事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル締盟国ノミヲ拘束スベシ
3 爾後本条約ハ他ノ何レノ締盟国ニ付テモ右事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スルモノトス

第 五 条

 国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ガ国際労働事務局ニ本条約ノ批准ノ登録ヲ為シタルトキハ事務局長ハ国際労働機関ノ一切ノ締盟国ニ右ノ旨ヲ通告スベシ事務局長ハ爾後該機関ノ他ノ締盟国ノ通告シタル批准ノ登録ヲ一切ノ締盟国ニ同様ニ通告スベシ

第 六 条

 本条約ヲ批准スル各締盟国ハ千九百二十七年一月一日迄ニ第一条及第二条ノ規定ヲ実施シ且右規定ヲ実施スルニ必要ナルベキ措置ヲ執ルコトニ同意ス尤モ第四条ノ規定ニ従フモノトス

第 七 条

 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ国際労働機関憲章第三十五条ノ規定ニ依リ其ノ殖民地、属地及保護国ニ之ヲ適用スルコトヲ約ス

第 八 条

 本条約ヲ批准シタル締盟国ハ本条約ノ最初ノ効力発生ノ日ヨリ五年ノ期間満了後ニ於テ国際労働事務局長宛登録ノ為ニスル通告ニ依リ之ヲ廃棄スルコトヲ得右ノ廃棄ハ該事務局ニ登録アリタル日以後一年間ハ其ノ効力ヲ生ゼズ

第 九 条

 国際労働事務局ノ理事会ハ少クトモ十年ニ一回本条約ノ施行ニ関スル報告ヲ総会ニ提出スベク且其ノ改正又ハ変更ニ関スル問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グベキヤ否ヤヲ審議スベシ

第 十 条

 本条約ハ仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トス