1925年の夜業(パン焼工場)条約(第20号)

ILO条約 | 1925/06/08

パン焼工場に於ける夜業に関する条約(第20号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百二十五年五月十九日を以て其の第七回会議を開催し、
 右会議の会議事項の第四項目たるパン焼工場に於ける夜業に関する提案の採択を決議し、且
 該提案は国際条約の形式に依るべきものなることを決定し、
 国際労働機関の締盟国に依り批准せらるるが為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百二十五年六月八日、千九百二十五年の夜業(パン焼工場)条約と称せらるべき左の条約を採択す。

第 一 条

1 以下に定むる例外を条件として、パン、「ペーストリー」其の他の「フラワー、コンフエクシヨナリー」の夜間に於ける製造は、之を禁止す。
2 右の禁止は、右製品の製造に従事する事業主及労働者を包含する一切の者の作業に之を適用す。但し右は、同一の世帯に属する者の自家用の為にする右製品の製造に之を適用せず。
3 本条約は、「ビスケツト」の大量製造に之を適用せず。各締盟国は、如何なる製品が本条約に「ビスケツト」と称するものに包含せらるべきやを関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上決定することを得。

第 二 条

 本条約に於て「夜間」と称するは、少くとも七時間の継続時間を謂ふ。右時間の始時及終時は、関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上、各国に於ける権限ある機関之を定むべく、且右時間は、夜十一時より朝五時に至る時間を包含すべし。気候若は季節に依り必要あるとき又は関係ある使用者団体及労働者団体間の合意あるときは、夜十時より朝四時に至る時間を以て夜十一時より朝五時に至る時間に代ふることを得。

第 三 条

 各国の権限ある機関は、関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上、第一条に対する左の例外を設くることを得。
 (a) 準備又は補充の作業が必ず通常労働時間以外に行はるることを要する限度に於て、其の遂行に必要なる恒久的例外、但し右作業には厳密に必要なる数より多くの労働者及十八歳未満の年少者を使用することを得ず。
 (b) 熱帯国に於けるパン焼工業の特殊事情より生ずる要求の為必要なる恒久的例外
 (c) 週休の按配の為必要なる恒久的例外
 (d) 事業場をして業務の異常なる繁忙又は国の必要に応ずるを得しむる為必要なる一時的例外

第 四 条

 第一条の例外は、現に災害あり若は其の虞ある場合、機械若は工場設備に付緊急の処置を施すべき場合又は不可抗力の場合に於て、之を設くることを得。但し当該企業の通常の操業に対する重大なる障碍を除去するに必要なる限度を超ゆることを得ず。

第 五 条

 本条約を批准する各締盟国は、第一条に定むる禁止の有効に実施せらるることを確保する為適当なる措置を執るべく、且国際労働総会に依り其の第五回会議(千九百二十三年)に於て採択せられたる勧告に従ひ、使用者、労働者及其の各自の団体をして右の措置に付協力することを得しむべし。

第 六 条

 本条約の規定は、千九百二十七年一月一日に至る迄効力を発生せざるべし。

第 七 条

 国際労働機関憲章に定むる条件に依る本条約の正式批准は、登録の為国際労働事務局長に之を通告すべし。

第 八 条

1 本条約は、事務局長が国際労働機関の締盟国中の二国の批准を登録したる日より効力を発生すべし。
2 本条約は、該事務局に其の批准を登録したる締盟国のみを拘束すべし。
3 爾後本条約は、他の何れの締盟国に付ても、右事務局に其の批准を登録したる日より効力を発生するものとす。

第 九 条

 国際労働機関の締盟国中の二国が国際労働事務局に本条約の批准の登録を為したるときは、事務局長は、国際労働機関の一切の締盟国に右の旨を通告すべし。事務局長は、爾後該機関の他の締盟国の通告したる批准の登録を一切の締盟国に同様に通告すべし。

第 十 条

 本条約を批准する国際労働機関の各締盟国は、国際労働機関憲章第三十五条の規定に依り、其の殖民地、属地及保護国に之を適用することを約す。

第 十 一 条

 本条約を批准したる締盟国は、本条約の最初の効力発生の日より十年の期間満了後に於て、国際労働事務局長宛登録の為にする通告に依り之を廃棄することを得。右の廃棄は、該事務局に登録ありたる日以後一年間は其の効力を生ぜず。

第 十 二 条

 国際労働事務局の理事会は、少くとも十年に一回本条約の施行に関する報告を総会に提出すべく、且其の改正又は変更に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきや否やを審議すべし。

第 十 三 条

 本条約は、仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に正文とす。