1946年の健康検査(船員)条約(第73号)

ILO条約 | 1946/06/29

船員の健康検査に関する条約(第73号)
(1955年8月22日批准登録。2006年の海上の労働に関する条約の批准により2014年8月5日に批准廃棄)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二十一年六月十八日にその第百九回会期として会合し、八本の国際労働条約の廃止並びに十本の国際労働条約及び十一本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二十一年六月十八日に、千九百四十六年の健康検査(船員)条約(第七十三号)の廃止を決定する。国際労働事務局長は、この本文書廃止の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりシアトルに招集されて、千九百四十六年六月六日にその第二十八回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第五議題の一部である船員の健康検査に関する提案の採択を決定し、
 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の条約(引用に際しては、千九百四十六年の健康検査(船員)条約と称することができる。)を千九百四十六年六月二十九日に採択する。

第 一 条

1 この条約は、公有であると私有であるとを問わず、営利のために貨物又は旅客の運送に従事し、かつ、この条約の適用を受ける領域において登録されたすべての海上航行船舶について適用する。
2 船舶が海上航行船舶と認められるべき場合は、国内法令により定めるものとする。
3 この条約は、次の船舶については適用しない。
 (a) 登録された総トン数二百トン未満の船舶
 (b) ダウ、ジャンク等の原始的構造の木造船
 (c) 漁船
 (d) 河口航行船舶

第 二 条

 この条約は、次に掲げる者を除くほか、職務のいかんを問わず船内で勤務するすべての者に適用する。もつとも、次に掲げる者の健康の保持のための措置及び船内の他の者の健康に害が及ぶことを防止するための措置が執られることを妨げるものではない。
 (a) 乗組員でない水先人
 (b) 船舶所有者以外の者により船内に使用される者。ただし、無線電信会社の業務に従事する無線通信士又は無線通信員は、この限りでない。
 (c) 乗組員でない移動港湾労務者
 (d) 海上で通常使用されず港において使用される者

第 三 条

1 この条約の適用を受ける者は、その者が海上で行うべき勤務に適する旨の証明書で、医師によつて、又はもつぱら視力に関する場合には権限のある機関が証明書の発給を認めた者によつて署名されたものを提示しない限り、この条約の適用を受ける船舶内の使用のために雇い入れてはならない。
2 前項の規定にかかわらず、雇入れ前最近の二年間における相当の期間この条約の適用がある海上航行船舶内で使用されていた旨を立証する者は、この条約が関係領域について効力を生じた日から二年以内においては、雇い入れることができる。

第 四 条

1 権限のある機関は、関係のある船舶所有者団体及び船員団体に協議した上、健康検査の内容及び健康証明書に記入すべき事項を定めなければならない。
2 健康検査の内容を定める場合には、検査を受ける者の年齢及び従事する職務の性質に対して十分な考慮を払わなければならない。
3 健康証明書は、特に次のことを証明しなければならない。
 (a) その証明書を受ける者の聴力及び視力並びに、甲板部に使用される者(従事する労働に対する適性が色神の欠陥によつて影響されるおそれのない特殊な職務の者を除く。)については、色神がすべて満足すべきものであること。
 (b) 海上勤務によつて悪化し、若しくはその船員を海上勤務に適さないようにするおそれのある病気又は船内の他の者の健康に害を及ぼすおそれのある病気にかかつていないこと。

第 五 条

1 健康証明書は、発給の日から二年をこえない期間効力を有する。
2 健康証明書は、色神に関する限り、発給の日から六年をこえない期間効力を有する。
3 健康証明書は、その有効期間が航海中に満了した場合には、その航海の終了まで、なおその効力を有する。

第 六 条

1 緊急の場合には、権限のある機関は、前条までに定める要件を備えていない者の雇入れを一航海に限り許可することができる。
2 前項の場合において、その労働条件は、健康証明書を所持する同種の船員の労働条件と同じでなければならない。
3 この条の規定に基き許可される使用の期間は、その後において、第三条2の期間に算入してはならない。

第 七 条

 権限のある機関は、必要な健康証明書が発給されたことを証する所定の形式を備えた書類を、健康証明書に代わるものとして承認することを規定することができる。

第 八 条

 検査の結果証明書の発給を拒否された者が船舶所有者、船舶所有者団体又は船員団体に対し独立した医事審査員による新たな検査を求めることができるように、措置を講じなければならない。

第 九 条

 権限のある機関は、船舶所有者団体及び船員団体に協議した上、船員一般に関し類似の任務を有する行政庁又は団体に対しその事務の全部又は一部を委任することによつて、この条約に基くその任務を履行することができる。

第 十 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 十 一 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を事務局長が登録したもののみを拘束する。 
2 この条約は、次の諸国のうち七国(登録された総トン数百万トン以上の船腹を保有する国四国以上を含むことを要する。)の批准が登録された日の後六箇月で効力を生ずる。アメリカ合衆国、アルゼンティン共和国、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中華民国、デンマーク、フィンランド、フランス、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、ギリシャ、インド、アイルランド、イタリア、オランダ、ノールウェー、ポーランド、ポルトガル、スウェーデン、トルコ及びユーゴースラヴィア。この規定は、加盟国によるこの条約の早期の批准を容易にし、かつ、促進するために設けられたものである。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後六箇月で効力を生ずる。

第 十 二 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で1に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 三 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、この条約が効力を生ずるため必要な最後の批准登録を加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 四 条

 国際労働事務局長は、前条までの規定に従つて登録されたすべての批准書及び廃棄書の完全な明細を国際連合憲章第百二条による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。

第 十 五 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとにこの条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題をその総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 六 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、当然この条約の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有するものとする。

第 十 七 条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ともに正文とする。