1947年の雇用契約(土民労働者)条約(第86号)

ILO条約 | 1947/07/11

土民労働者の雇用契約の最長期間に関する条約(第86号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千十八年五月二十八日にその第百七回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である六本の国際労働条約の廃止及び三本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千十八年六月五日に、千九百四十七年の雇用契約(土民労働者)条約(第八十六号)の廃止を決定する。国際労働事務局長は、本条約廃止の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百四十七年六月十九日を以つてその第三十回会議を開催し、
この会議の会議事項の第三項目に含まれている土民労働者の雇用契約の最長期間に関する提案の採択を決議し、且つ
この提案は国際条約の形式によるべきものなることを決定したので、
千九百四十七年の雇用契約(土民労働者)条約として引用することができる次の条約を千九百四十七年七月十一日に採択する。

第 一 条

 この条約において、
(a) 「労働者」と称するのは、土民労働者即ち非本土地域の土民に属し又はこれに類する労働者を言う。
(b) 「使用者」と称するのは、反対の指示がない限り、非土民たると土民たるとを問わず、公の機関、個人、会社又は団体を含む。
(c) 「法規」と称するのは、関係地域に効力を有する法律及び(又は)規則を言う。
(d) 「契約」と称するのは、反対の指示がない限り、労働者が現金又はその他の形式の報酬を得るために労働者として使用者に勤務する雇用契約を言う。但し法規中の徒弟に関する特別規定に依りなされた徒弟契約を含まない。

第 二 条

1 権限ある機関は、この条約の適用より次のものを除外することができる。
(a) 契約であつて、これにより労働者が法規に定められた一定数以上の労働者を雇用しないか、又は当該法規に定められた他の基準を満さない土民使用者の労務に就くもの
(b) 労働者に与えられる唯一の又は主要な報酬がその使用者に属する土地の占有又は使用にある契約
2 権限ある機関は、関係利益を代表する使用者団体及び労働者団体と協議した後、文字を解し、且つ職業選択の自由が充分保障されている労働者と使用者との間に締結された契約をこの条約の適用より除外することができる。この除外は、一地域の全労働者、特定産業の全労働者、特定企業の全労働者又は特定群の労働者に適用することができる。

第 三 条

1 法規は、文書によると口頭によるとに拘わらず、すべての契約において定められ又は述べられる最長労働期間を定めなければならない。
2 長期の且つ費用のかかる旅程を伴わない雇用契約において定められ又は述べられる最長労働期間は、如何なる場合においても、労働者が家族を同伴しない場合においては十二箇月、労働者が家族を同伴する場合においては二年を超えることができない。
3 長期でしかも費用のかかる旅程を伴う雇用契約において定められ又は述べられる最長労働期間は、如何なる場合においても、労働者が家族を同伴しない場合においては二年、労働者が家族を同伴する場合においては三年を超えることができない。

第 四 条

1 一地域(以下原地域と言う。)において締結された契約が行政を異にする地域(以下雇用地域と言う。)における雇用に関係があるときは、右契約において定められ又は述べられる最長労働期間は、原地域の法規により定められる最長期間又は雇用地域の法規により定められる最長期間を超えることができない。
2 原地域及び雇用地域の権限ある機関は、必要ある場合又は望ましい場合は何時でも、この条約の規定の適用より生ずる共通関係事項を規制する目的を以て協定しなければならない。

第 五 条

 この条約は、その適用に疑義がある地域に対してこの条約が効力を発生する以前に締結された契約には適用されない。

第 六 条

1 この条約を批准する加盟国は、千九百四十六年の国際労働機関憲章改正文書により改正された国際労働機関憲章第三十五条に規定される地域で、当該改正条項の4及び5に規定される地域以外のものについては、左記事項をのべた宣言をその批准書に添付し、又は批准後なるべく速かに国際労働事務局長に通告しなければならない。
(a) この条約の諸規定を何等の変更を加えずに適用することを約する地域
(b) この条約の諸規定を変更を加えて適用することを約する地域。この場合には右の変更に関する詳細事項をも掲げるものとする。
(c) この条約を適用することができない地域及びその適用できない理由
(d) 決定を留保する地域
2 この条の1(a)及び(b)に掲げた約束は、批准の不可分の一部とみなされ、且つ批准と同一の効力を有するものとする。
3 加盟国は、この条の1(b)、(c)又は(d)によつて、その最初の宣言でなした留保を爾後の宣言によつていつでも包括的に又は部分的に取消すことができる。
4 第十一条の規定に従つてこの条約を廃棄することができる期間中は何時でも、加盟国は、以前の宣言中の条項を他の点について変更し、且つ特に指摘する地域についての現状をのべた宣言を事務局長に通告することができる。

第 七 条

1 この条約の主要問題が非本土地域の自治権の範囲内に属する場合には、その地域の国際関係に対して責任を有する加盟国は、その地域の政府の同意を得て、その地域に代つて、この条約の義務を受諾する宣言を国際労働事務局長に通告することができる。
2 この条約の義務を受諾する宣言は、次のものが国際労働事務局長に通告することができる。
(a) 国際労働機関の二以上の加盟国の共同統治下にある地域については、それらの加盟国 又は
(b) 国際連合憲章その他により国際機関が統治の責任を有する地域については、その国際機関
3 この条の前諸項に従い国際労働事務局長に通告される宣言は、この条約の諸規定が変更なしに関係地域において適用されるか、又は変更をうけて適用されるかを指摘しなければならない。条約の諸規定が変更をうけて適用されることを指摘している場合には、右の宣言は、その変更に関する詳細事項を示さなければならない。
4 関係加盟国又は国際機関は、以前の宣言中に指摘した変更を援用する権利を爾後の宣言によつて包括的に又は部分的に何時でも放棄することができる。
5 関係加盟国又は国際機関は、第十一条の規定に従いこの条約を廃棄することができる場合何時でも、以前の宣言中の条項を他の点について変更し、且つこの条約の適用についての現状をのべた宣言を事務局長に通告することができる。

第 八 条

 この条約の規定の変更を明記する宣言が実施されている地域に関しては、この条約の適用に関する年次報告には、前記の変更を援用する権利を放棄することを可能ならしめる目的を以て、進歩がどの程度為されているかを指摘しなければならない。

第 九 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知しなければならない。

第 十 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長により登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 一 条

1 この条約を批准した各加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によってこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、それが登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した各加盟国で、1に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年間拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基づいて、十年の期間が満了するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 ニ 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准、宣言及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 三 条

 国際労働事務局長は、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准、宣言及び廃棄の完全な明細を国際連合憲章第百二条による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。

第 十 四 条

 国際労働機関の理事会は、この条約の効力発生の後十年の期間が満了するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出しなければならず、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 五 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第十一条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、この条約を批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 六 条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ひとしく正文とする。