1949年の移民労働者条約(改正)(第97号)

ILO条約 | 1949/07/01

移民労働者に関する条約(第97号)(1949年改正)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百四十九年六月八日を以てその第三十二回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第十一項目に含まれている第二十五回総会により採択された千九百三十九年の移民労働者条約の改正に関する提案の採択を決議し、且つ
 この提案は国際条約の形式によるを要することを思い、
 千九百四十九年の移民労働者条約(改正)として引用することができる次の条約を千九百四十九年七月一日に採択する。

第 一 条

 この条約を実施する国際労働機関の各加盟国は、要求に基き国際労働事務局及びその他の加盟国に次のものを利用させることを約する。
 (a) 出移民及び入移民に関する国策、法令及び規則に関する情報
 (b) 労務のための移民並びに移民労働者の労働及び生活条件に関する特別規定に関する情報
 (c) 加盟国により締結された一般協定及び特別取極に関する情報

第 二 条

 この条約を実施する各加盟国は、移民労働者を援助し且つ特に彼等に正確な情報を提供するため適当にして無料な施設を維持し、又はそれが維持されることを確認することを約する。

第 三 条

1 この条約を実施する各加盟国は、国内の法令及び規則が許す限り、出移民に関する誤まれる宣伝に対するすべての適当な措置を執ることを約する。
2 この目的のため、加盟国は、適当の場合には他の関係加盟国と協力して行動するものとする。

第 四 条

 各加盟国は、その管轄権内において移民労働者の出発、旅行及び受入を促進するため適当な措置を執らなければならない。

第 五 条

 この条約を実施する各加盟国は、その管轄権内において次のことについて責任ある適当の医療施設を維持することを約する。
 (a) 必要な場合には、出発及び到着のときに移民労働者及びこれと同伴し又は後から加わることを許されたその家族員が合理的の健康状態にあることを確めること。
 (b) 移民労働者及びその家族員が出発の際、旅行中及び目的の領土への到着の際、適当の医的手当及び良好な衛生状態を享受することを確保すること。

第 六 条

1 この条約を実施する各加盟国は、次の事項に関し、自国民に適用するところに劣らない待遇をその領域内において、国籍、人種、宗教又は性に関する差別なく、合法的に入移民に適用することを約する。
 (a) かかる事項が国内の法令若しくは規則により規律され又は行政機関の統制の下にある限り、
  (i)  報酬(報酬の一部を成す家族手当)、労働時間、超過時間の措置、有給休暇、家庭労働に関する制限、雇傭のための最低年令、徒弟及び訓練、婦人労働並びに年少者労働
  (ii)  労働組合の組合員資格及び団体交渉の利益の享受
  (iii) 宿泊設備
 (b) 社会保障(即ち、業務上の傷害、母性、疾病、廃疾、老令、死亡、失業及び家族責任並びに国内の法令若しくは規則により社会保障制度の適用をうけるその他の事故に関する法規)。尤も次の制限をうけるものとする。
  (i)  既に取得した権利及び取得の中途にある権利の保全のため適当の取極をすることができる。
  (ii) 入移民国の国内の法令又は規則は、全部公の基金から支払われる給付若しくはその一部に関する特別の措置、又は通常の年金の支給のために規定される醵出金条件を具備しない者に支払われる手当に関する特別の措置を規定することができる。
 (c) 使用される者に関し支払われるべき雇傭税、租税又は醵出金
 (d) この条約に掲げられる事項に関する法律上の手続
2 連邦国については、この条の規定は、この条において取扱われている事項が連邦の法令若しくは規則により規律され又は連邦の行政機関の統制下にある限り、これを適用しなければならない。連邦を構成する邦、州若しくは県の法令若しくは規則により規律され又はその行政機関の統制の下にある事項に関し、この条の規定が適用される程度及び方法は、各加盟国がこれを決定しなければならない。加盟国は、この条において取扱われている事項が連邦の法令若しくは規則により規律され又は連邦の行政機関の統制の下にある程度を、条約の適用に関するその年次報告において指摘しなければならない。連邦を構成する邦、州若しくは県の法令若しくは規則により規律され又はその行政機関の統制の下にある事項に関しては、加盟国は、国際労働機関憲章第十九条7(b)に定められる措置を講じなければならない。

第 七 条

1 この条約を実施する各加盟国は、移民に関係あるその職業紹介施設及びその他の施設が適当の場合において他の加盟国のこれに相当する施設と協力することを約する。   
2 この条約を実施する各加盟国は、その公共職業紹介施設が移民労働者に対して為す業務を無料ですることを確保することを約する。

第 八 条

1 永久的基礎において許容された移民労働者及びその移民労働者に随行し又は後からそのもとに赴くことを許容された家族員は、移民労働者が入国後に蒙つた疾病又は傷害のためにその職業を遂行することができない故を以て、その出身の領域又は出移民した領域にこれを送還することはできない。尤も関係ある者が希望し又は当該加盟国が当事者である国際協定に定められるときは、この限りではない。
2 移民労働者が入移民国に到着したときに永久的基礎において許容された場合は、右入移民国の権限ある機関は、本条第一項の規定が右移民労働者の許容の日から如何なる場合にも五年を超えない合理的な期間の経過の後にのみ効力を生ずる旨を定めることができる。

第 九 条

 この条約を実施する各加盟国は、通貨の移送及び移入に関する国内の法令及び規則により許される限度を考慮して、移民労働者の所得及び貯金であつてその移民が希望するような一部の移送を許可することを約する。

第 十 条

 加盟国の領域から他の加盟国の領域へ赴く移民の数が相当に多い場合においては、関係領域の権限ある機関は、必要であるか又は望ましいときは、この条約の規定の適用に関連して起る共通利害事項を規律する目的のため協定を締結しなければならない。

第 十 一 条

1 この条約において「移民労働者」とは、自己の計算以外において使用される目的を以て一国から他国へ移民する者を云い、且つ移民労働者として通常みとめられる者を包含する。
2 この条約は、次のものに適用しない。
 (a) 国境労働者
 (b) 自由職業に従事する者及び芸術家の短期間の入国
 (c) 海員

第 十 二 条

 この条約の正式批准は、登録のため国際労働事務局長にこれを通告しなければならない。

第 十 三 条

1 この条約は、事務局長にその批准を登録した国際労働機関の加盟国のみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長に登録された日から十二箇月後に効力を発生する。
3 爾後この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日から十二箇月後にその効力を発生する。

第 十 四 条

1 この条約を批准する各加盟国は、その批准に添附する宣言により、この条約の附録の一部又は全部をその批准から除外することができる。
2 かかる宣言の条件の留保の下に、この条約の附録の規定は、この条約の規定と同一の効力を有する。
3 かかる宣言を為す加盟国は、爾後新しい宣言により宣言中に掲げられる附録の一部又は全部を受諾することを事務局長に通告することができる。かかる通告の事務局長に登録の日から、かかる附録の規定は、当該加盟国に適用されなければならない。
4 本条1に基き為される宣言が附録に関し依然有効な間は、加盟国は、その附録を勧告の効力を有するものとして受諾するの希望を宣言することができる。

第 十 五 条

1 国際労働機関憲章第三十五条2に従い国際労働事務局長に通告される宣言は、次のものを指摘しなければならない。
 (a) 関係加盟国が変更を加えないでこの条約の規定を適用することを約する地域
 (b) 関係加盟国が変更を加えてこの条約の規定を適用することを約する地域及び右変更の詳細
 (c) 条約を適用することができない地域及びかかる場合には適用することができない理由
 (d) 関係加盟国が更に事情を考慮するまでその決定を留保する地域
2 本条1(a)及び(b)に掲げられる約束は、批准の不可分の一部とみなされ、且つ批准の効力を有する。
3 加盟国は、本条1(b)、(c)又は(d)によりその原宣言において為した留保を爾後の宣言により何時でも全部的又は一部的に取消すことができる。
4 加盟国は、第十七条の規定に従い条約を廃棄することができる場合何時でも、以前の宣言の条件を他の点において変更し、且つその明示する地域に関する現状を述べた宣言を事務局長に通告することができる。

第 十 六 条

1 国際労働機関憲章第三十五条4又は5に従い国際労働事務局長に通告される宣言は、この条約の規定が変更を加えないで又は変更を加えて関係地域において適用されるか否かを指摘しなければならない。宣言は、条約の規定が変更を加えて適用されることを指摘する場合には、右変更の詳細を示さなければならない。
2 関係ある加盟国又は国際機関は、以前の宣言において指摘した変更を援用する権利を爾後の宣言により何時でも全部的又は一部的に放棄することができる。
3 関係ある加盟国又は国際機関は、第十七条の規定に従いこの条約又は附録の一部若しくは全部を廃棄することができる場合何時でも、以前の宣言の条件を他の点において変更し、且つ条約の適用に関する現状を述べた宣言を事務局長に通告することができる。

第 十 七 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を発生した日から十年の期間満了後において、国際労働事務局長宛登録のためにする通告によりこれを廃棄することができる。右の廃棄は、その登録のあつた日の後一年間はその効力を生じない。
2 この条約を批准した各加盟国であつて前項に掲げた十年の期間の経過後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年間拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件によりこの条約を廃棄することができる。
3 前項の規定に従いこの条約を廃棄することができる場合何時でも、これを廃棄しない加盟国は、その加盟国に対し実施される条約の附録を別に廃棄する宣言を事務局長に通告することができる。
4 この条約又はその附録の一部若しくは全部の廃棄は、これに基き移民又はその家族員に与えられる権利が引続いて有効であるか否かの問題が起る地域に関し条約又は関係ある附録が実施されている間に、移民が入移民したときは、右の権利に影響を及ぼさない。

第 十 八 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通告をうけたすべての批准、宣言及び廃棄の登録を国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通告をうけた第二回目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する場合、この条約が効力を発生する日について国際労働機関の加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 九 条

 国際労働事務局長は、前数条の規定に従い登録されたすべての批准、宣言及び廃棄の詳細を国際連合憲章第百二条の規定による登録のため国際連合事務総長に通告しなければならない。

第 二 十 条

 国際労働事務局の理事会は、この条約の効力発生後各十年の期間満了毎にこの条約の実施に関する報告を総会に提出すべく、且つその全部又は一部の改正に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきや否やを審議しなければならない。

第 二 十 一 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する新条約を採択する場合には、新条約が別段の規定をしない限り、
 (a) 一加盟国による新改正条約の批准は、新改正条約が効力を発生したとき、前記第十七条の規定に拘わらず、当然にこの条約の即時の廃棄を生ぜしめる。
 (b) 新改正条約の効力発生の日から、この条約は、加盟国により批准され得ないようになる。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准しないものに対しては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容において引続いて効力を有する。

第 二 十 二 条

1 国際労働総会は、当該問題が議題に包含される総会において、この条約の附録の一部又はそれ以上の改正文を三分の二の多数決により採択することができる。
2 この条約を実施する各加盟国は、総会の会期の閉会から一年の期間内に又は例外の場合には十八箇月の期間内に、立法又はその他の措置のためその問題に付て権限ある機関にかかる改正文を付議しなければならない。
3 かかる改正文は、この条約を実施する各加盟国に対しては、その加盟国が改正文の受諾を通告する宣言の国際労働事務局長宛通告のときに有効となるものとする。
4 附録の改正文の総会による採択の日から、改正文のみが加盟国による受諾の対象となるものとする。

第 二 十 三 条

 この条約は、イギリス語及びフランス語の本文を以て共に正文とする。

〔附録一〕
集団移送のため政府の監督の下に行われる協定以外の方法で募集される移民労働者の募集、職業紹介及び労働条件

第 一 条

 この附録は、集団移送のため政府の監督の下に行われる協定以外の方法で募集される移民労働者に適用する。

第 二 条

 この附録において、
 (a) 「募集」とは、次のことを云う。
  (i)  一領域における者を他の領域における使用者のために雇入れること。又は
  (ii) 一領域における者に他の領域における労務を提供することを約すること。
   及び出移民を探し求め且つこれを選考すること並びに出移民の出発準備を含む(i)及び(ii)に掲げられる活動に関連する措置を執ること。
 (b) 「移入」とは、本条(a)の意味において募集された者の一領域への到着又は入域を確保し又は容易にするための活動を云う。
 (c) 「職業紹介」とは、本条(b)の意味において移入された者の労務を確保し又は容易にするための活動を云う。

第 三 条

1 この附録を実施する各加盟国であつてその法令及び規則が第二条に定義される移民労働者の募集、移入及び職業紹介の活動を許すものは、この条の規定に従いその法令及び規則により許されるが如き活動を規律しなければならない。
2 次の項の規定の留保の下に、募集、移入及び職業紹介の活動に従事する権利は、次のものに制限されなければならない。
 (a) 活動が行われる領域の公共職業紹介施設又はその他の公の機関
 (b) 活動が行われる以外の領域の公の機関であつて関係政府間の協定によりその領域において活動することを許容されるもの
 (c) 国際文書の条項に従い設立された機関
3 国内の法令及び規則又は双務協定が許す限りにおいて、募集、移入及び職業紹介の活動は、次のものがこれを行うことができる。
 (a) 将来の使用者又はそのために行動するその労務に服する者であつて、移民の利益のために必要なときは権限ある機関の承認及び監督に服するもの
 (b) 私の機関。尤も(i)右の活動が行われる領域の法令及び規則により又は(ii)出移民の領域の権限ある機関又は国際文書の条項に従い設けられた機関と入移民の領域の権限ある機関との間の協定により定められる場合及び条件において、右の活動が行われる領域の権限ある機関により事前の許可を与えられるときに限る。
4 活動が行われる領域の権限ある機関は、3(b)に従い許可が発せられた機関及び個人の活動を監督しなければならない。尤も国際文書の条項に従い設けられた機関であつて、その地位が右国際文書の条項により又は右の機関と権限ある機関との間の協定により引続いて規律される場合は、この限りではない。
5 この条のいかなる規定も、移民労働者が加盟国の領域に入ることを入移民の領域の権限ある機関以外の個人又は機関が受諾することを許すものとみとめることができない。

第 四 条

 この附録を実施する各加盟国は、移民労働者の募集、移入又は職業紹介に関連して公共職業紹介施設が為す業務を無料ならしめることを確保することを約する。

第 五 条

1 この附録を実施する各加盟国であつて、使用者又はそのために行動する者と移民労働者との間の雇傭契約に対する監督制度を維持するものは、次のことを要求することを約する。
 (a) 移民が出発する前又は関係政府が同意するときは入移民の領域に到着する際、収容所において雇傭契約の写を交付すること。
 (b) その契約には労働条件特に移民に給される報酬を示す条項を包含させること。
 (c) 移民が出発前、個人的に関係ある又は右移民が団員である移民集団に関係ある書類により、入移民の領域内において適用される一般生活条件及び労働条件に関する情報を文書を以て受理すべきこと。
2 移民が入移民の領域内に到着の際契約の写が交付される場合には、移民は、出発前、個人的に関係ある又は右移民が団員である移民集団に関係ある書類により、その移民の使用される業種及びその他の労働条件特に移民に保障される最低賃金について文書を以て知らされなければならない。
3 権限ある機関は、前項の規定が実施されること及びこれが違反に関し適当の刑罰が適用されることを確保しなければならない。

第 六 条

 この条約の第四条により執られる措置は、適当の場合には、次のものを包含しなければならない。
 (a) 管理上の手続の簡素化
 (b) 通訳係の設置
 (c) 移民及びこれに随行し又はその後から赴く家族員の移民地における最初の期間中の必要な援助
 (d) 移民及びこれに随行し又はその後から赴く家族員の旅行中特に船上における福祉の保護

第 七 条

1 一加盟国の領域から他の加盟国の領域に赴く移民労働者の数が相当多い場合においては、関係領域の権限ある機関は、必要な場合又は望ましい場合、この附録の規定の適用に関連して生ずる共通利害事項を規律するため協定を締結しなければならない。
2 加盟国が雇用契約に関する監督制度を維持する場合には、かかる協定は、使用者の契約上の義務が履行されるべき方法を指摘しなければならない。

第 八 条

 密移民又は不法の移民を促進する者は、適当の刑罰に処せられなければならない。

〔附録二〕
集団移送のため政府の監督の下に行われる協定に基き募集される移民労働者の募集、職業紹介及び労働条件

第 一 条

 この附録は、集団移送のため政府の監督の下に行われる協定に基き募集される移民労働者に適用する。

第 二 条

 この附録において、
 (a) 「募集」とは、次のことを云う。
  (i)  集団移送のため政府の監督の下に行われる協定に基き一領域における者を他の領域における使用者のため雇入れること。又は
  (ii) 一領域における者に他の領域における労務を提供することを約すること。
   及び出移民を探し求め且つこれを選考すること並びに出移民の出発準備を含む(i)及び(ii)に掲げられる活動に関連する措置を執ること。
 (b) 「移入」とは、本条(a)の意味において募集される者の一領域への到着又は入域を確保し又は容易にするための活動を云う。
 (c) 「職業紹介」とは、本条(b)の意味において移入された者の労務を確保し又は容易にするための活動を云う。

第 三 条

1 この附録を実施する各加盟国であつてその法令及び規則が第二条に定義される移民労働者の募集、移入及び職業紹介の活動を許すものは、この条の規定により許されるが如き活動を規律しなければならない。
2 次の項の規定の留保の下に、募集、移入及び職業紹介の活動に従事する権利は、次のものに制限されなければならない。
 (a) 活動が行われる領域の公共職業紹介施設又はその他の公の機関
 (b) 活動が行われる以外の領域の公の機関であつて関係政府間の協定によりその領域において活動することを許容されるもの
 (c) 国際文書の条項に従い設立された機関
3 国内の法令及び規則又は双務協定が許す限りにおいて、且つ移民のため必要な場合権限ある機関の承認及び監督を受けるものとして、募集、移入及び職業紹介の活動は、次のものがこれを行うことができる。
 (a) 将来の使用者又はそのために行動するその労務に服する者
 (b) 私の機関
4 募集、移入及び職業紹介の活動に従事する権利は、(i)右の活動が行われる領域の法令及び規則により又は(ii)出移民の領域の権限ある機関又は国際文書の条項に従い設けられた機関と入移民の領域の権限ある機関との間の協定により定められる場合及び条件において、右の活動が行われる領域の権限ある機関により事前の許可を与えられるときに限る。
5 活動が行われる領域の権限ある機関は、権限ある関係機関の間で締結された協定に従い、前項により許可が発せられた機関及び個人の活動を監督しなければならない。尤も国際文書の条項に従い設けられた機関であつて、その地位が右国際文書の条項により又は右の機関と権限ある関係機関との間の協定により引続いて規律されるものは、この限りではない。
6 入移民の領域の権限ある機関は、移民労働者の移入を許可する前、当該労働を為すことができる資格ある者の数が既に充分にあるか否かを確めなければならない。
7 この条のいかなる規定も、移民労働者が加盟国の領域に入ることを入移民の領域の権限ある機関以外の個人又は機関が受諾することを許すものとみとめることができない。

第 四 条

1 この附録を実施する各加盟国は、移民労働者の募集、移入又は職業紹介に関連してその公共職業紹介施設が為す業務を無料ならしめることを確保することを約する。
2 募集、移入及び職業紹介の管理費は、移民に負担させてはならない。

第 五 条

 第三国を通過する必要がある一国より他国への移民の集団移送については、通過領域の権限ある機関は、遅滞及び管理上の困難を避けるため通行を促進する措置を講じなければならない。

第 六 条

1 この附録を実施する各加盟国であつて、使用者又はそのために行動する者と移民労働者との間の雇傭契約に対する監督制度を維持するものは、次のことを要求することを約する。
 (a) 移民が出発する前又は関係政府が同意するときは入移民の領域に到着する際、収容所において雇傭契約の写を交付すること。
 (b) この契約には労働条件特に移民に給される報酬を示す条項を包含させること。
 (c) 移民が出発前、個人的に関係ある又は右移民が団員である移民集団に関係ある書類により、入移民の領域内において適用される一般生活条件及び労働条件に関する情報を文書を以て受理すべきこと。
2 移民が入移民の領域内に到着の際契約の写が交付される場合には、移民は、出発前、個人的に関係ある又は右移民が団員である移民集団に関係ある書類により、その移民の使用される業種及びその他の労働条件特に移民に保障される最低賃金について文書を以て知らされなければならない。
3 権限ある機関は、前項の規定が実施されること及びこれが違反に関し適当の刑罰が適用されることを確保しなければならない。

第 七 条

 この条約の第四条により執られる措置は、適当の場合には、次のものを包含しなければならない。
 (a) 管理上の手続の簡素化
 (b) 通訳係の設置
 (c) 移民及びこれに随行し又はその後から赴く家族員の移民地における最初の期間中の必要な援助
 (d) 移民及びこれに随行し又はその後から赴く家族員の旅行中特に船上における福祉の保護
 (e) 永久的基礎において許される労務のための移民の財産の整理及移送に関する許可

第 八 条

 権限ある機関は、移民労働者の雇用条件に関する問題につき最初の期間これを援助するため適当の措置を講じなければならない。適当の場合には、かかる措置は、承認された任意的機関との協力においてこれを講ずることができる。

第 九 条

 この附録の第三条の規定に従い一加盟国の領域に移入される移民労働者が、自己に責任のない理由で、その募集された労務又はその他適当な労務に就くことができないときは、その帰還費及び移民に随行し又はその後から赴くことを許された家族員の帰還費は、最後の目的地までの管理費、輸送及び生活費並びに家事用品の運送費を含め、これを移民に負担させてはならない。

第 十 条

 入移民の領域の権限ある機関であつて移民労働者がこの附録の第三条により募集された労務が不適当であるということが分つたと思惟するときは、内国人労働者を阻害しない適当の労務を見出す上において移民を援助するため適当の措置を講ずべく、且つかかる労務が紹介されるまで、又は移民がその募集当時帰還を希望し若しくはこれに同意するときは移民が募集の地域へ帰還するまで、又は他の処へ再移民するまで、その生活を確保する措置を講じなければならない。

第 十 一 条

 避難民又は移動者たる移民労働者であつてこの附録の第三条に従い入移民の領域に入つたものがその領域内のある労務において過剰となるときは、その領域の権限ある機関は、右移民をして内国人労働者を阻害しない適当の労務を得しめるため最善の努力を払い、且つ適当の労務に紹介されるまで又は他の処へ再移民するまで、その生活を確保する措置を講じなければならない。

第 十 二 条

1 関係領域の権限ある機関は、この附録の規定の適用に関連して生ずる共通利害事項を規律するため協定を締結しなければならない。
2 加盟国が雇用契約に関する監督制度を維持する場合には、かかる協定は、使用者の契約上の義務が履行されるべき方法を指摘しなければならない。
3 かかる協定は、適当な場合には、第八条の規定により移民に与えられるべきその雇用条件に関する援助に関し、出移民領域の権限ある機関又は国際文書の条項に従い設けられた機関と入移民の領域の権限ある機関との間の協力について規定しなければならない。

第 十 三 条

 密移民又は不法な移民を促進する者は、適当の刑罰に処せられなければならない。

〔附録三〕
移民労働者の個人的所持品、工具及び装具の移入

第 一 条

1 移民労働者及びこれに随行し又はその後から赴くことを許された家族員に属する個人的所持品は、入移民の領内に到着の際関税を免除されなければならない。
2 労働者がその各個の業務の遂行のため通常所持する種類の携帯用工具及び携帯用装具であつて、移民労働者及びこれに随行し又はその後から赴くことを許された家族員に属するものは、入移民の領域内に到着の際関税を免除されなければならない。尤も移民がかかる工具及び装具を現に所有するものなること、相当の期間所有し且つ使用していたこと、並びにその業務遂行中これを使用せんとする積りなることを移民当時証明することができる場合に限る。

第 二 条

1 移民労働者及びこれに随行し又はその後から赴くことを許された家族員に属する個人的所持品は、右の者がその出身国に帰還する際関税を免除されなければならない。尤もかかる者が出身国へ帰還する当時その国籍を保持している場合に限る。
2 労働者がその各個の業務の遂行のため通常所持する種類の携帯用工具及び携帯用装具であつて移民労働者及びこれに随行し又はその後から赴くことを許された家族員に属するものは、かかる者がその出身国に帰還する際関税を免除されなければならない。尤もかかる者が出身国に帰還する当時その国籍を保持し、且つ移民がかかる工具及び装具を現に所有するものなること、相当の期間所有し且つ使用していたこと、並びにその業務遂行中これを使用せんとする積りなることを移民当時証明することができる場合に限る。