1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)

ILO条約 | 1949/07/01

団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(第98号)
(日本は1953年10月20日批准)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーブに招集されて、千九百四十九年六月八日にその第三十二回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第四議題である団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する諸提案の採択を決定し、
 それらの提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約と称する次の条約を千九百四十九年七月一日に採択する。

第 一 条

1 労働者は、雇用に関する反組合的な差別待遇に対して充分な保護を受ける。
2 前記の保護は、特に次のことを目的とする行為について適用する。
 (a) 労働組合に加入せず、又は労働組合から脱退することを労働者の雇用条件とすること。
 (b) 組合員であるという理由又は労働時間外に若しくは使用者の同意を得て労働時間内に組合活動に参加したという理由で労働者を解雇し、その他その者に対し不利益な取扱をすること。

第 二 条

1 労働者団体及び使用者団体は、その設立、任務遂行又は管理に関して相互が直接に又は代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける。
2 特に、労働者団体を使用者又は使用者団体の支配の下に置くため、使用者若しくは使用者団体に支配される労働者団体の設立を促進し、又は労働者団体に経理上の援助その他の援助を与える行為は、本条の意味における干渉となるものとする。

第 三 条

 前各条に定める団結権の尊重を確保するため、必要がある場合には、国内事情に適する機関を設けなければならない。

第 四 条

 労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、必要がある場合には、国内事情に適する措置を執らなければならない。

第 五 条

1 この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内の法令で定める。
2 国際労働機関憲章第十九条八に掲げる原則に従い、加盟国によるこの条約の批准は、この条約の保障する権利を軍隊又は警察の構成員に与えている既存の法律、裁定、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされない。

第 六 条

 この条約は、公務員の地位を取り扱うものではなく、また、その権利又は分限に影響を及ぼすものと解してはならない。

第 七 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 八 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、ニ加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 九 条

1 国際労働機関憲章第三十五条2の規定に従って国際労働事務局長に通知する宣言は、次の事項を示さなければならない。
 (a) 当該加盟国がこの条約の規定を変更を加えずに適用することを約束する地域
 (b) 当該加盟国がこの条約の規定を変更を加えて適用することを約束する地域及びその変更の細目
 (c) この条約を適用することができない地域及びその適用することができない理由
 (d) 当該加盟国がさらに事情を検討する間決定を留保する地域
2 前項(a)及び(b)に掲げる約束は、批准の不可分の一部とみなされ、かつ、批准と同一の効力を有する。
3 加盟国は、1(b)、(c)又は(d)に基きその最初の宣言において行った留保の全部又は一部をその後の宣言によっていつでも取り消すことができる。
4 加盟国は、第十一条の規定に従ってこの条約を廃棄することができる期間中はいつでも、前の宣言の条項を他の点について変更し、かつ、指定する地域に関する現況を述べた宣言を事務局長に通知することができる。

第 十 条

1 国際労働機関憲章第三十五条4又は5の規定に従って国際労働事務局長に通知する宣言は、当該地域内でこの条約の規定を変更を加えずに適用するか又は変更を加えて適用するかを示さなければならない。その宣言は、この条約の規定を変更を加えて適用することを示している場合には、その変更の細目を示さなければならない。
2 関係のある1若しくは2以上の加盟国又は国際機関は、前の宣言において示した変更を適用する権利の全部又は一部をその後の宣言によっていつでも放棄することができる。
3 関係のある1若しくは2以上の加盟国又は国際機関は、第十一条の規定に従ってこの条約を廃棄することができる期間中はいつでも、前の宣言の条項を他の点について変更し、かつ、この条約の適用についての現況を述べた宣言を国際労働事務局長に通知することができる。

第 十 一 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で前項に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 十 二 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准、宣言及び廃棄の登録を国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 十 三 条

 国際労働事務局長は、前条までの規定に従って登録されたすべての批准書、宣言書及び廃棄書の完全な明細を国際連合憲章第百二条の規定による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。

第 十 四 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとにこの条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 十 五 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第十一条の規定にかかわらず、当然この条約の即時廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 六 条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ともに正文とする。