1958年の賃金、労働時間及び定員(海上)改正条約(第109号)

ILO条約 | 1958/05/14

賃金、船内労働時間及び定員に関する条約(第109号)(1958年の改正条約)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二十一年六月十八日にその第百九回会期として会合し、八本の国際労働条約の廃止並びに十本の国際労働条約及び十一本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二十一年六月十八日に、千九百五十八年の賃金、労働時間及び定員(海上)改正条約(第百九号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十八年四月二十九日にその第四十一回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第二議題である千九百四十九年の賃金、労働時間及び定員(海上)改正条約の一般的改正に関する提案の採択を決定し、
 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを考慮して、
 次の条約(引用に際しては、千九百五十八年の賃金、労働時間及び定員(海上)改正条約と称することができる。)を千九百五十八年五月十四日に採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

 この条約のいかなる規定も、法律、裁定、慣習又は船舶所有者と船員との間の協約による、賃金、船内労働時間又は定員に関する規定で、この条約が定める条件より一層有利な条件を船員に確保するものを害するものとみなしてはならない。

第 二 条

1 この条約は、公有であると私有であるとを問わず、次のいずれにも該当するすべての船舶に適用する。
 (a) 機械推進のもの
 (b) この条約が実施される領域において登録されたもの
 (c) 商業目的のため貨物又は旅客の輸送に従事するもの
 (d) 海洋航行に従事するもの
2 この条約は、次のものには適用しない。
 (a) 総トン数五百トン未満の船舶
 (b) ダウ及びジャンク等の原始的構造の木造船
 (c) 漁撈又はこれと直接関係がある作業に従業する船舶
 (d) 江湾船

第 三 条

 この条約は、資格のいかんを問わず船内で勤務するすべての者に適用する。ただし、次の者を含まない。
 (a) 船長
 (b) 乗組員でない水先人
 (c) 医師
 (d) もつぱら看護の職務に従事する看護人及び病室に勤務する者
 (e) 牧師
 (f) もつぱら教育の職務に従事する者
 (g) 楽士
 (h) もつぱら船内の貨物に関する職務に従事する者
 (i) もつぱら自己の計算において労働する者又はもつぱら利益若しくは所得の分配により報酬を受ける者
 (j) 自己の勤務に対し報酬を受けない者又は名目のみの給料若しくは賃金を報酬として受ける者
 (k) 船舶所有者以外の使用者により船内で使用される者。ただし、無線電信会社の勤務に服する者を含まない。
 (l) 乗組員でない移動港湾労働者
 (m) 法令により、又は、船員団体が締結する捕鯨に関する特別の労働協約若しくは類似の協約の規定で労働時間その他の労働条件を定めるものにより規制される条件に従つて、捕鯨又は類似の作業のため捕鯨船、工船、運送船その他において使用される者
 (n) 乗組員でない者(雇入契約に基いて勤務しているかどうかを問わない。)で船舶が入港中船舶の修理、清掃、積込、取卸若しくは類似の作業又は救援、維持、監視若しくは管理の職務に使用されるもの

第 四 条

 この条約において、
 (a) 「職員」とは、船長以外の者で海員名簿に職員として記載されている者又は法律、労働協約若しくは慣習により職員の職務と認められる職務に従事するものをいう。
 (b) 「属員」とは、船長又は職員以外の乗組員をいい、かつ、免状を有する海員を含む。
 (c) 「有能海員」とは、国内法令により、又は、国内法令がない場合には労働協約により、甲板部に勤務する属員について要求される職務で指導的又は専門的属員の職務以外のものを行う技能を有すると認められる者をいう。
 (d) 「基本給又は基本賃金」とは、食費、時間外手当、賞与その他の現金又は現物による手当を除き、現金による職員又は属員の報酬をいう。

第 五 条

1 この条約を批准する加盟国は、批准に付した宣言により、第二部をその批准から除外することができる。
2 前記の宣言の条項を留保して、第二部の規定は、この条約の他の規定と同一の効力を有するものとする。
3 前記の宣言を行う加盟国は、また、この条約が適用される船舶において使用される有能海員の一暦月間の勤務に対する基本給又は基本賃金を示す情報を提供するものとする。
4 前記の宣言を行う加盟国は、後に新たな宣言により、当該加盟国が第二部を受諾することを事務局長に通告することができる。第二部の規定は、事務局長によりその通告が登録された日から当該加盟国に対して適用されるものとする。
5 1の規定に従つて行われた宣言が第二部について効力を有する間、当該加盟国は第二部を勧告の効力を有するものとして受諾する意思があることを宣言することができる。

第 二 部 賃金

第 六 条

1 この条約が適用される船舶において使用される有能海員の一暦月間の勤務に対する基本給又は基本賃金は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国の通貨で十六ポンド、アメリカ合衆国の通貨で六十四ドル又は他の通貨でそれに相当する額を下つてはならない。
2 千九百四十六年六月二十九日以後国際通貨基金に通告されたポンド若しくはドルの平価の変動については、又はこの条約の採択後にこのような変動が通告された場合には、
 (a) 前項に定める最低基本賃金で前記の通告がなされた通貨によるものは、他方の通貨と等価を維持するよう調整されなければならない。
 (b) この調整は、国際労働事務局長から国際労働機関の加盟国に通告しなければならない。
 (c) このように調整された最低基本賃金は、前項に定める賃金と同様にこの条約を批准した加盟国を拘束し、かつ、おそくとも事務局長が加盟国にその変動を通告した月に続く第二の暦月の初めまでに各当該加盟国に対して効力を生ずるものとする。

第 七 条

1 他の属員を使用する場合より多人数の使用を必要とするような属員群が使用されている船舶においては、有能海員の最低基本給又は最低基本賃金は、前条に定める最低基本給又は最低基本賃金の相当額を調整した額によるものとする。
2 調整額は、同一労働同一賃金の原則に従つて定められるものとする。また、次の事項を正当にしんしやくしなければならない。
 (a) 使用されている前記の属員群のうちの余分の属員数
 (b) その属員群の使用の結果として生ずる船舶所有者の費用の増減
3 調整額は、関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約により、又は、その協約がなく、かつ、関係両国がこの条約を批准していることを条件として、関係船員群が属する領域の権限のある機関により定められるものとする。

第 八 条

 食事が無償で支給されない場合には、最低基本給又は最低基本賃金は、関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約が定める額、又はその協約がない場合には権限のある機関が定める額だけ増加されるものとする。

第 九 条

1 第六条に定める、最低基本給又は最低基本賃金の他の通貨による相当額を決定するために使用すべき率は、その通貨の平価とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国のポンド又はアメリカ合衆国のドルの平価との間の比率とする。
2 国際通貨基金の加盟国である国際労働機関の加盟国については、その平価は、国際通貨基金協定の条項に基いてその時に実施されているものとする。
3 国際通貨基金の加盟国でない国際労働機関の加盟国の通貨については、その平価は、金又は千九百四十四年七月一日現在の量目及び純分を有するアメリカ合衆国ドルで表わされる公定換算率で国際取引のための支払及び振替についてその時に実施されているものとする。
4 前二項のいずれの規定によつても処理することができない通貨については、
 (a) この条の適用上採用すべき率は、国際労働機関の当該加盟国が決定するものとする。
 (b) 当該加盟国は、その決定を国際労働事務局長に通告し、事務局長は、この条約を批准した他の加盟国に直ちに通告するものとする。
 (c) この条約を批准した他の加盟国は、事務局長から通告を受けた日から六箇月以内に、当該国がその決定に反対であることを事務局長に通告することができる。事務局長は、直ちに前記の決定を行つた加盟国及びこの条約を批准した他の加盟国に通告し、かつ、第二十二条に定める委員会にこの問題を報告するものとする。
 (d) 前記の諸規定は、加盟国が決定を変更した場合に適用されるものとする。
5 他の通貨における相当額の決定のための率の変更に伴う基本給又は基本賃金の変更は、おそくとも関係通貨の相対的平価の変更が効力を生ずる月に続く第二の暦月の初めまでに効力を生ずるものとする。

第 十 条

 加盟国は、次の事項のために必要な措置を執るものとする。
 (a) 監督及び処罰の制度により、この条約が要求する率を下らない率で報酬が支払われることを確保すること。
 (b) この条約が要求する率よりも低い率で支払を受けた者が低廉かつ迅速な司法又は他の手続により支払不足額を回収することができることを確保すること。

第 三 部 船内労働時間

第 十 一 条

 この部は、次の者には適用しない。
 (a) 一等航海士又は機関長
 (b) 事務長
 (c) 各部を担当する職員で航海当直をしない他のもの
 (d) 船舶の事務部又はまかない部で使用されている者で次に該当するもの
  (i)  関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約が定める上位の者
  (ii)  主として自己の計算において労働する者
  (iii) もつぱら手数料により、又は、主として利益若しくは所得の分配により報酬を受ける者

第 十 二 条

 この条約のこの部において、
 (a) 「近海航路船」とは、もつぱら出発国から遠くとも次のいずれかに該当する地理的範囲内の隣接諸国の近接港までの航海に従事する船舶をいう。
  (i)  国内法令又は船舶所有者団体と船員団体との間の労働協約により明示された範囲
  (ii)  この条約のこの部のすべての規定の適用に関し一様である範囲
  (iii) 加盟国がその批准を登録するときその批准に付した宣言により通告した範囲
  (iv)  他の関係加盟国と協議の結果定めた範囲
 (b) 「遠洋航路船」とは、近海航路船以外の船舶をいう。
 (c) 「旅客船」とは、十二人をこえる旅客を輸送することを許可された船舶をいう。
 (d) 「労働時間」とは、乗組員が上位の者の命令により、船舶又は船舶所有者のために労働することを要求される時間をいう。

第 十 三 条

1 この条は、近海航路船の甲板部、機関部及び無線部で使用される職員及び属員に適用する。
2 職員又は属員の通常の労働時間は、次の制限をこえてはならない。
 (a) 船舶が航行中のときは、連続二日の期間につき二十四時間
 (b) 船舶が入港中のときは、
  (i) 週休日には、通常の職務及び衛生上の職務のために必要であつて二時間をこえぬ時間
  (ii) 他の日には、労働協約によりさらに短い時間を定める場合を除き、八時間
 (c) 連続二週間の期間につき百十二時間
3 前項の(a)及び(b)に定める制限をこえる労働時間は、時間外労働とみなし、これに対し当該職員又は属員は、第十八条の規定に従つて補償を受ける権利を有するものとする。
4 連続二週間の期間における労働時間の合計(時間外労働とみなされる時間を除く。)が百十二時間をこえる場合には、当該職員又は属員は、入港中の休息時間により、又は関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約が定める他の方法により補償を受ける権利を有するものとする。
5 国内法令又は労働協約は、この条の適用上船舶が航行中であると認めるべき場合及び船舶が入港中であると認めるべき場合を決定するものとする。

第 十 四 条

1 この条は、遠洋航路船の甲板部、機関部及び無線部で使用される職員及び属員に適用する。
2 船舶が航行中のとき及び入出港日には、職員又は属員の通常の労働時間は、一日につき八時間をこえてはならない。
3 船舶が入港中のときは、職員又は属員の通常の労働時間は、次の制限をこえてはならない。
 (a) 週休日には、通常の職務及び衛生上の職務のために必要であつて二時間をこえない時間
 (b) 他の日には、労働協約によりさらに短い時間を定める場合を除き八時間
4 前諸項に定める一日当りの制限をこえる労働時間は、時間外労働とみなし、これに対し当該職員又は属員は、第十八条の規定に従つて補償を受ける権利を有するものとする。
5 一週間の期間における労働時間の合計(時間外労働とみなされる時間を除く。)が四十八時間をこえる場合には、当該職員又は属員は、入港中の休息時間により、又は関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約が定める他の方法により補償を受けるものとする。
6 国内法令又は労働協約は、この条の適用上船舶が航行中であると認めるべき場合及び船舶が入港中であると認めるべき場合を決定するものとする。

第 十 五 条

1 この条は、船舶のまかない部において使用される者に適用する。
2 旅客船の場合には、通常の労働時間は、次の制限をこえてはならない。
 (a) 船舶が航行中のとき及び入出港日には、連続十四時間につき十時間
 (b) 船舶が入港中のときは、
  (i)  旅客が船内にある場合に連続十四時間につき十時間
  (ii) 他の場合には、
  週休の前日には五時間
  週休日には司ちゆうに従事する者については五時間、他の者については通常の職務及び衛生上の職務のために必要であつて二時間をこえない時間
  他の日には八時間
3 旅客船でない船舶の場合には、通常の労働時間は、次の制限をこえてはならない。
 (a) 船舶が航行中のとき及び入出港日には、十三時間につき九時間
 (b) 船舶が入港中のときは、
 週休日には五時間
 週休日の前日には六時間
 他の日には十二時間につき八時間
4 連続二週間の期間における労働時間の合計が百十二時間をこえる場合には、関係者は、入港中の休息時間により、又は関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約が定める他の方法により補償を受けるものとする。
5 国内法令又は関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の労働協約は、夜間当直者の労働時間を規制するための特別の措置を定めることができる。

第 十 六 条

1 この条は、近海航路船及び遠洋航路船で使用される職員及び属員に適用する。
2 入港中の休息時間は、職員及び属員は入港中可能な最大限の休息時間を与えられるべきであり、かつ、その休息時間は休暇として計算すべきではないということに基いて、関係船舶所有者団体と関係船員団体との間の交渉の対象とされなければならない。

第 十 七 条

1 権限のある機関は、次の条件に従つて、第十一条によりこの部の適用から除外されていない職員をこの部の適用から除外することができる。
 (a) 当該職員は、労働協約により、権限のある機関がこの部を適用しないことに対する十分な補償となると認める雇用条件をうける権利を有しなければならない。
 (b) その労働協約は、最初千九百四十六年六月三十日の前に締結されたものでなければならず、また、同協約又はその更新されたものは、現在も有効でなければならない。
2 前項の規定を援用する加盟国は、前記の労働協約の詳細を国際労働事務局長に提出し、事務局長は、自己が受領した報告の概要を第二十二条に掲げる委員会に提出するものとする。
3 前記の委員会は、同委員会に報告された労働協約が、この部を適用しないことに対する十分な補償となる雇用条件を定めているかどうかを検討するものとする。この条約を批准する加盟国は、その協約に関する同委員会の意見又は示唆に対して考慮を払うことを約束し、かつ、その意見及び示唆について同協約の当事者である船舶所有者団体及び職員団体の注意を促すことを約束する。

第 十 八 条

1 時間外労働に対する補償率は、国内法令又は労働協約により定めるものとする。しかし、いかなる場合においても時間外労働に対する一時間当りの支給率は、一時間当りの基本給又は基本基金の一・二五倍を下つてはならないものとする。
2 労働協約は、現金支給に代る同等時間の休息下船又は他の補償方法を定めることができる。

第 十 九 条

1 恒常的な時間外労働は、できる限り避けなければならない。
2 次の作業に従事した時間は、この部の適用上、通常の労働時間に含まれず、また、時間外労働とみなされない。
 (a) 船長が船舶、積荷又は船内の人命の安全のために必要かつ緊急であると認める作業
 (b) 遭難している他の船舶又は人に対し援助を与えるために船長が要求する作業
 (c) その時に実施されている「海上における人命の安全のための国際条約」に定められているような招集、消火訓練、救命艇訓練及び類似の訓練
 (d) 通関手続又は検疫その他の衛生手続のための特別の作業
 (e) 船舶の位置測定及び気象観測のため職員が行う通常の必要な作業
 (f) 通常の当直交代のため必要な時間
3 この条約のいかなる規定も、船舶の安全かつ能率的な運航のために必要であると船長が認める作業を要求する船長の権利義務又はその作業を行う職員若しくは属員の義務を害するものとみなしてはならない。

第 二 十 条

1 十六歳未満の者は、夜間労働をしてはならない。
2 この条の適用上、「夜間」とは、午前零時の前後にわたる少くとも連続九時間の時間で国内法令又は労働協約が定めるものをいう。

第 四 部 定員

第 二 十 一 条

1 この条約が適用されるすべての船舶には、次の目的のために十分かつ効果的に人員を乗り組ませなければならない。
 (a) 海上における人命の安全を確保すること。
 (b) 第三部の規定を実施すること。
 (c) 乗組員の過労を防止し、かつ、できる限り、時間外労働を避け又は減少させること。
2 加盟国は、船舶の定員に関する苦情又は紛争の調査及び解決のため効果的な機関を維持すること又は維持されていることを確認することを約束する。
3 船舶所有者団体及び船員団体の代表は、単独で又は他の者若しくは当局とともに前項の機関の運営に参加するものとする。

第 五 部 条約の適用

第 二 十 二 条

1 この条約の実施は、(a)法令により、(b)船舶所有者と船員との間の労働協約(第二十一条2に関する場合を除く。)により、(c)法令と、船舶所有者と船員との間の労働協約との組合せにより行うことができる。この条約の規定は、この条約に別段の定がある場合を除き、批准国の領域において登録されるすべての船舶及びその船舶において利用されるすべての者に適用されるものとする。
2 前項の規定に従つて労働協約によりこの条約のいずれかの規定が実施された場合には、第十条の規定にかかわらず、加盟国は、この条約の規定で労働協約によりそのように実施されたものに関しては、第十条に基くいかなる措置を執ることも要求されないものとする。
3 この条約を批准する加盟国は、国際労働事務局長に対し、この条約を適用する方法に関する情報(同条約のいずれかの規定を実施する現行の労働協約に関する詳細を含む。)を提供するものとする。
4 この条約を批准する加盟国は、政府、船舶所有者団体及び船員団体を代表し、かつ、国際労働事務局の合同海事委員会の代表を顧問として含むすべての委員会で、この条約を実施するために執られる措置を審議する目的で設置されることのあるものに、三者代表の方法により参加することを約束する。
5 事務局長は、3の規定に従つて受領した情報の概要を前記の委員会に提出するものとする。
6 同委員会は、報告された労働協約がこの条約の規定を完全に実施しているかどうかを審議するものとする。この条約を批准する加盟国は、条約の適用に関する同委員会の意見又は示唆に考慮を払い、さらに、1に掲げる労働協約の当事者である船舶所有者団体及び船員団体に対し、その協約がこの条約の規定を実施する程度に関する同委員会の意見又は示唆について注意を促すことを約束する。

第 二 十 三 条

1 この条約を批准する加盟国は、その領域で登録される船舶に対する同条約の規定の適用について責任を負い、かつ、労働協約により同条約が実施される場合を除き、次の法令の実施を怠つてはならない。
 (a) 同条約の遵守を確保するため、船舶所有者及び船長の責任を決定するもの
 (b) 同条約の違反に対し適当な刑罰を定めるもの
 (c) 同条約第四部の遵守に関する適当な公の監督を定めるもの
 (d) 第三部の適用上必要な労働時間の記録並びに時間外労働及び超過労働に対して与えられた補償に関する記録の保持を要求するもの
 (e) 時間外労働及び超過労働に対する補償として船員に支払われるべき給与の回収について、他の未払給与を回収するときと同一の救済手段を船員に確保するもの
2 この条約の規定を実施するためのすべての法令の作成に当つては、合理的でかつ実行することができる限り、関係船舶所有者団体及び船員団体と協議するものとする。

第 二 十 四 条

 この条約の実施に関して相互に援助を行うため、同条約を批准する加盟国は、自国の領域内にあるすべての港の権限のある機関に対し、他の批准国の領域で登録された船舶内でこの条約の要求が遵守されていないことを知つたときは、当該加盟国の領事官又は他の適当な機関に対しその事件を通告するよう命令することを約束する。

第 六 部 最終規定

第 二 十 五 条

1 この条約は、千九百四十六年及び千九百四十九年の賃金、労働時間及び定員(海上)条約を改正するものである。
2 千九百三十六年の労働時間及び定員(海上)条約の第二十八条の適用上、この条約は、また、その条約を改正する条約とみなされるものとする。

第 二 十 六 条

 この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。

第 二 十 七 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、次の条件が満たされた日の後六箇月で効力を生ずる。
 (a) 次の加盟国のうち九国の批准が登録されたこと。アルゼンティン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ連邦共和国、ギリシャ、インド、アイルランド、イタリア、日本国、オランダ、ノールウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、トルコ、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国、ユーゴースラヴィア
 (b) 批准を登録した加盟国のうち少くとも五国が登録の日にそれぞれ総トン数百万トンを下らない船腹を保有すること。
 (c) 批准を登録した加盟国の登録時における保有船腹の総トン数の合計が千五百万トンを下らないこと。
3 前項の規定は、加盟国によるこの条約の早期の批准を容易にし、かつ、促進するため加えられたものである。
4 この条約が最初に効力を生じた後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後六箇月で効力を生ずる。

第 二 十 八 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から五年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で1に掲げる五年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに五年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、五年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 九 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准、宣言及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
2 事務局長は、この条約が効力を生ずるため必要な最後の批准の登録を加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日について加盟国の注意を喚起しなければならない。

第 三 十 条

 国際労働事務局長は、前条までの規定に従つて登録されたすべての批准書、宣言書及び廃棄書の完全な明細を国際連合憲章第百二条の規定による登録のため国際連合事務総長に通知しなければならない。

第 三 十 一 条

 国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとにこの条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題をその総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。

第 三 十 二 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第二十八条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 三 十 三 条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ともに正文とする。