1964年の雇用政策条約(第122号)

ILO条約 | 1964/07/09

雇用政策に関する条約(第122号)
(1986年6月10日批准登録)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十四年六月十七日にその第四十八回会期として会合し、
 フィラデルフィア宣言が完全雇用及び生活水準の向上を達成するための計画を世界の諸国間において促進する国際労働機関の厳粛な義務を認めていること並びに国際労働機関憲章の前文が失業の防止及び妥当な生活賃金の支給を規定していることを考慮し、
 更に、フィラデルフィア宣言によれば、「すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ」との基本的目的に照らして、経済政策及び財政政策の雇用政策に及ぼす影響を検討し及び考慮することが、国際労働機関の責任であることを考慮し、
 世界人権宣言が、「すべての者は、労働し、職業を自由に選択し、公正かつ良好な労働条件を享受し及び失業に対する保護を受ける権利を有する」と規定していることを考慮し、
 雇用政策に直接に関係のある現行の国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百四十八年の職業安定組織条約及び千九百四十八年の職業安定組織勧告、千九百四十九年の職業指導勧告、千九百六十二年の職業訓練勧告並びに千九百五十八年の差別(雇用及び職業)条約及び千九百五十八年の差別(雇用及び職業)勧告の規定に留意し、
 これらの文書が、完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択を基礎とする経済拡大のための国際的計画の一層広範な枠組みの中に位置付けられるべきであると考え、
 前記の会期の議事日程の第八議題に含まれる雇用政策に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百六十四年の雇用政策条約と称することができる。)を千九百六十四年七月九日に採択する。

第 一 条

1 加盟国は、経済の成長及び発展の促進、生活水準の向上、労働力需要の充足並びに失業及び不完全就業の克服を図るとの観点から、完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択を促進するための積極的な政策を、主要目標として宣言し及び遂行する。
2 1の政策は、次のことを確保することを目的とする。
 (a) 仕事に就くことができ、かつ、仕事を求めているすべての者のために仕事があること。
 (b)  (a)の仕事ができる限り生産的なものであること。
 (c) 職業選択の自由があること並びに労働者が、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、国民的系統又は社会的出身のいかんを問わず、自己に適する職業に必要な技能を習得し並びにその職業において自己の技能及び才能を活用するための可能な最大限度の機会を有すること。
3 1の政策は、経済発展の段階及び水準並びに雇用に関する目的と他の経済的及び社会的目的との間の相互の関係に妥当な考慮を払うものとし、また、国内事情及び国内慣行に適する方法によつて遂行する。

第 二 条

 加盟国は、国内事情に適する方法により及び国内事情に適する範囲内で、次のことを行う。
 (a) 調整された経済社会政策の枠組みの中において、前条に定める目的を達成するためにとるべき措置を決定し及び検討すること。
 (b)  (a)の措置の実施に必要な手段(適当な場合には、計画の作成を含む。)をとること。

第 三 条

 この条約の適用に当たつては、とられる措置により影響を受ける者の代表者、特に、使用者の代表者及び労働者の代表者の経験及び見解を十分に考慮し並びに雇用政策の立案及び雇用政策に対する支持の獲得に当たつてこれらの代表者の十分な協力を確保するため、雇用政策に関しこれらの代表者と協議する。

第 四 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 五 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 六 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 七 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 八 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 九 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第六条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 一 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。