1965年の年少者健康診断(坑内労働)条約(第124号)

ILO条約 | 1965/06/23

鉱山の坑内労働に使用される年少者の適格性についての健康診断に関する条約(第124号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十五年六月二日にその第四十九回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第四議題に含まれる鉱山の坑内労働に使用される年少者の適格性についての健康診断に関する提案の採択を決定し、
 鉱山に適用される千九百四十六年の年少者健康診断(工業)条約が、児童及び十八歳未満の年少者は完全な健康診断によつて使用されるべき作業に適すると認められるのでなければ工業的企業によつて使用されてはならないこと、児童又は十八歳未満の年少者を継続して使用する場合には一年をこえない間隔をおいて繰り返し健康診断を受けさせなければならないこと及び国内法令は追加的な再診断に関して規定を設けなければならないことを規定していることに留意し、
 前記の条約が、健康上高度の危険のある職業においては少なくとも二十一歳に達するまで使用されるための適格性について健康診断及び再診断を行なわなければならないこと及び国内法令はこの要件の適用を受ける職業若しくは職業の範囲を定めるか又はこのような職業若しくは職業の範囲を定める権限を適当な機関に付与しなければならないことをさらに規定していることに留意し、
 鉱山の坑内労働に固有な健康上の危険にかんがみ、二十一歳に達するまで鉱山の坑内労働に使用されるための適格性について健康診断及び定期的再診断を要求し、かつ、これらの診断の性質を定める国際基準が望ましいことを考慮し、
 この基準が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百六十五年の年少者健康診断(坑内労働)条約と称することができる。)を千九百六十五年六月二十三日に採択する。

第 一 条

1 この条約の適用上、「鉱山」とは、坑内において人間を使用することにより地下から物質を採取するためのすべての公私の事業場をいう。
2 鉱山の坑内における使用又は労働に関するこの条約の規定は、採石場の坑内における使用又は労働についても適用される。

第 二 条

1 二十一歳未満の者が鉱山の坑内労働において使用され、又は労働するためには、使用されるための適格性について完全な健康診断及び一年をこえない間隔をおいて行なわれる定期的再診断が必要とされる。
2 十八歳から二十一歳までの年少者の医学的管理の代替的措置は、権限のある機関が、医学的助言に基づいてこれらの措置が1の規定により要求される措置と同等であるか又は一層効果的であることを確認し、かつ、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議して合意に達した場合には、許されるものとする。

第 三 条

1 第二条に定める健康診断は、
 (a) 権限のある機関によつて承認された有資格の医師の責任及び監督の下に行なわれなければならず、また、
 (b) 適当な方法で証明されなければならない。
2 最初の健康診断の際に、及び医学的に必要と認められるときはその後の再診断の際に、肺のX線写真が要求されるものとする。
3 この条約によつて要求される健康診断は、年少者又はその両親若しくは後見人に費用を負担させるものであつてはならない。

第 四 条

1 この条約の規定の有効な実施を確保するため、権限のある機関は、すべての必要な措置(適当な刑罰を設けることを含む。)を執らなければならない。
2 この条約を批准する各加盟国は、この条約の規定の適用を監督するために適当な監督制度を維持するものとし、又は適当な監督が実施されることを確認するものとする。
3 国内法令は、この条約の規定の遵守について責任を負う者を定めなければならない。
4 使用者は、坑内において使用され又は労働する二十一歳未満の者について次の事項を記載した記録を保持し、かつ、監督官の利用に供さなければならない。
 (a) 生年月日(可能な限り正当な証明を受けるものとする。)
 (b) 業務の性質の説明
 (c) 使用されるための適格性を有することを証明するが医学的資料を含まない証明書
5 使用者は、4に掲げる情報を、労働者代表の要求があるときは、その利用に供さなければならない。

第 五 条

 各国の権限のある機関は、この条約の適用に関する一般政策を決定し、及びこの条約を実施する規則を採用するに先だち、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議しなければならない。

第 六 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 七 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 八 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 九 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 一 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 二 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第八条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 三 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。