1966年の船員設備(漁船員)条約(第126号)

ILO条約 | 1966/06/21

漁船の船内船員設備に関する条約(第126号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十六年六月一日にその第五十回会期として会合し、
 この会期の議事日程の第六議題に含まれる漁船の船内船員設備に関する提案の採択を決定し、
 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の条約(引用に際しては、千九百六十六年の船員設備(漁船員)条約と称することができる。)を千九百六十六年六月二十一日に採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

1 この条約は、公有であると私有であるとを問わず、塩水において海上漁業に従事し、かつ、この条約の適用を受ける領域において登録されたすべての種類の機械推進の海洋航行船舶及び舟艇に適用する。
2 国内の法令は、船舶及び舟艇がこの条約の適用上海洋航行船舶及び舟艇と認められる場合を決定しなければならない。
3 この条約は、七五トン未満の船舶及び舟艇には適用しない。ただし、この条約は、権限のある機関が漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上合理的かつ実行可能であると決定する場合には、二五トンと七五トンとの間の船舶及び舟艇に適用するものとする。
4 権限のある機関は、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、この条約の適用上、トン数の代わりに長さを基準として使用することができるが、この場合には、この条約は、長さ八〇フィート(二四・四メートル)未満の船舶及び舟艇には適用しない。ただし、この条約は、権限のある機関が漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上合理的かつ実行可能であると決定する場合には、四五フィートと八〇フィートとの間(一三・七メートルと二四・四メートルとの間)の船舶及び舟艇に適用するものとする。
5 この条約は、次のものには適用しない。
 (a) 通常スポーツ又はレクリエーションのための漁ろうに従事する船舶及び舟艇
 (b) 本来帆により推進されるが、補助機関を有する船舶及び舟艇
 (c) 捕鯨又は類似の業務に従事する船舶及び舟艇
 (d) 漁業調査船及び漁業保護船
6 この条約の次の規定は、母港から離れている期間が通常三十六時間未満の船舶であつて、入港中船員が常時船内で居住しないものには適用しない。
 (a) 第九条4
 (b) 第十条
 (c) 第十一条
 (d) 第十二条
 (e) 第十三条1
 (f) 第十四条
 (g) 第十六条
  ただし、前記の船舶においても、適当な衛生設備、食事及び調理の施設並びに休養設備を設けなければならない。
7 この条約の第三部の規定は、権限のある機関が、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、変更を加えてもこの条約の規定を完全に適用した場合より全体として不利でない条件が保証されることを確認する場合には、すべての船舶について変更することができる。加盟国は、すべての前記の変更の詳細を国際労働事務局長に通知するものとし、事務局長は、これを国際労働機関のすべての加盟国に通告するものとする。

第 二 条

 この条約において
 (a) 「漁船」又は「船舶」とは、この条約が適用される船舶又は舟艇をいう。
 (b) 「トン」とは、登録された総トン数をいう。
 (c) 「長さ」とは、船首楼甲板の延長線上の船首材の前面から船尾材の頭部の後面まで、又は船尾材がないときは舵柱の前面までの長さをいう。
 (d) 「職員」とは、船長以外の者で、国内法令により、又は国内法令がないときは労働協約若しくは慣習により職員として階級づけられる者をいう。
 (e) 「部員」とは、職員以外の乗組員をいう。
 (f) 「船員設備」とは、乗組員の使用に供される寝室、食堂及び衛生設備をいう。
 (g) 「所定の」とは、国内法令により、又は権限のある機関により定められることをいう。
 (h) 「認可された」とは、権限のある機関により認可されたことをいう。
 (i) 「登録替え」とは、船舶の登録領域及び所有権の同時変更が行なわれる場合に登録替えされることをいう。

第 三 条

1 この条約の適用を受ける各加盟国は、この条約の第二部、第三部及び第四部の規定の適用を確保する法令を実施することを約束する。
2 前記の法令は、
 (a) 前記の規定をすべての関係者に周知させることを権限のある機関に要求しなければならない。
 (b) 前記の規定の遵守について責任を負う者を定めなければならない。
 (c) 前記の規定の効果的な実施を確保するため、適当な監督制度の維持について規定しなければならない。
 (d) 前記の規定の違反に対する適当な罰則を規定しなければならない。
 (e) 規則の作成について、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと定期的に協議し、かつ、その運用について、これらの当事者とできる限り協力することを権限のある機関に要求しなければならない。

第 二 部 船員設備の計画及び監督

第 四 条

 漁船の建造の開始及び現存の船舶の船員設備の実質的な変更又は改修に先だつて、設備の詳細な設計図及び設備に関する情報を権限のある機関に提出して、その認可を受けなければならない。

第 五 条

1 次の場合には、権限のある機関は、船舶を検査し、かつ、船員設備が法令の定める要件に適合していることを確認しなければならない。
 (a) 漁船を登録し、又は登録替えする場合
 (b) 船舶の船員設備を実質的に変更し、又は改修する場合
 (c) 船員の全部若しくは一部を代表する公認の漁船員団体又は所定の数若しくは比率の船員が、船員設備がこの条約の規定に適合していないという申立てを、所定の方式により、かつ、漁船の遅延を避けるため十分早期に、権限のある機関に行なつた場合
2 権限のある機関は、その裁量により定期的な検査を行なうことができる。

第 三 部 船員設備の要件

第 六 条

1 船員設備の他の場所との関係における位置、出入手段、構造及び配列は、適当な安全性、天候及び海波からの防禦並びに暑熱、寒気及び他の場所からの過度の騒音又は悪臭からの隔離を確保するようなものでなければならない。
2 すべての船員設備には、必要な限り非常口を設けなければならない。
3 魚艙(そう)、魚粉室、機械室、調理室、ランプ室及び塗料室から、又は機関部、甲板部その他の部の倉庫、乾燥室、共同洗面所若しくは便所から寝室への直接の開口を設けないようできる限り努力しなければならない。寝室から前記の場所を隔離する隔壁及び外部隔壁は、鋼板又は他の認可された材料で効果的に建造しなければならず、また、防水及び防ガスでなければならない。
4 寝室及び食堂の外部隔壁は、十分に熱をしや断するものでなければならない。すべての機関室壁及び調理室その他熱を生ずる場所のすべての境界隔壁は、隣接の船員設備又は通路に熱効果を生ずる可能性があるときは、十分に熱をしや断するものでなければならない。蒸気及び(又は)熱湯パイプの熱効果からの防護についても、注意を払わなければならない。
5 内部隔壁は、害虫がひそむおそれのない認可された材料で建造しなければならない。
6 寝室、食堂、娯楽室及び船員設備の中の通路は、冷却又は過熱を防ぐため十分にしや断されなければならない。
7 ウインチ及び類似の装置のための主要な蒸気パイプ及び排気パイプは、技術的に可能なときは、船員設備の中又は船員設備への通路を通してはならない。これらのパイプを船員設備の中又は通路を通す場合には、これらのパイプは、十分に熱をしや断するものでなければならず、かつ、被覆されなければならない。
8 内部の羽目板又は板張は、表面を容易に清潔に保つことができる材料で作らなければならない。さねはぎの板又は害虫がひそむおそれのあるその他の構造のものは、使用してはならない。
9 権限のある機関は、船員設備の構造中にいかなる程度まで火災予防又は延焼防止の措置を執るべきかを決定しなければならない。
10 寝室及び食堂の壁面及び天井は、容易に清潔に保つことができるものでなければならず、ペンキを塗る場合には、明るい色にしなければならない。石灰塗りは、行なつてはならない。
11 壁面は、必要に応じて、取り換え、又は修繕しなければならない。
12 すべての船員設備における甲板は、認可された材料及び構造のものでなければならず、また、その表面は、湿気を通さず、かつ、容易に清潔に保つことができるものでなければならない。
13 船員設備の上の暴露甲板は、木又は同等の絶縁材で被覆しなければならない。
14 床面が接合してある場合には、床面と側壁との接ぎ目は、すき間ができないように丸くしなければならない。
15 十分な排水設備を設けなければならない。
16 はえその他の害虫が船員設備の中に入らないように、すべての実行可能な措置を執らなければならない。

第 七 条

1 寝室及び食堂は、十分に換気しなければならない。
2 換気装置は、いかなる天候及び気候条件の下においても空気を満足な状態に維持し、かつ、十分な空気の流通を確保するように操作されるものでなければならない。
3 熱帯地方その他同様の気候条件の地方の航行に定期的に従事する船舶には、その気候条件に応じて、機械換気装置及び電気扇風機の双方を備え付けなければならない。ただし、これらの装置の一方で満足な換気が確保される場合においては、それのみ採用することができる。
4 前記以外の地方の航行に従事する船舶には、機械換気装置又は電気扇風機のいずれかを備え付けなければならない。権限のある機関は、北半球又は南半球の寒冷水域において通常使用される船舶については、この要件を免除することができる。
5 3及び4の規定により要求される換気装置を操作するための動力は、実行可能なときは、船員が船内において居住し、又は労働している場合において必要なときはいつでも、利用することができるものでなければならない。

第 八 条

1 船員設備には、気象条件に応じて十分な暖房装置を備え付けなければならない。
2 暖房装置は、実行可能なときは、船員が船内において居住し、又は労働している場合において必要なときはいつでも、利用することができるものでなければならない。
3 裸火による暖房は、禁止しなければならない。
4 暖房装置は、船舶が航行中遭遇する普通の天候及び気候条件の下で船員設備内の温度を満足な水準に維持することができるものでなければならない。権限のある機関は、その基準を定めなければならない。
5 ラジエーターその他の暖房器具は、火災の危険又は居住者に対する危害若しくは不快を避けるような位置に置き、かつ、必要があるときは、しや蔽(へい)し、かつ、安全装置を取り付けなければならない。

第 九 条

1 船員が使用するすべての場所は、十分に照明しなければならない。居室における自然光の最低基準は、自由に行動することができるいかなる場所においても晴天の日に通常の視力を持つ者が普通の新聞を読むことができるようなものでなければならない。十分な自然光を採ることができないときは、前記の基準の人工照明を設けなければならない。
2 すべての船舶は、実行可能な限り、船員設備に電灯を備え付けなければならない。独立した二つの照明用電源がない場合には、緊急用の適当な構造のランプ又は照明器具を別に備え付けなければならない。
3 人工照明は、室内の居住者に最大の利便を与えるように配置しなければならない。
4 船室の通常の照明のほかに、それぞれの寝台に十分な読書用の照明を備え付けなければならない。
5 寝室には、さらに、夜間、青色の常夜燈を備え付けなければならない。

第 十 条

1 寝室の位置は、船舶の中央部又は後部でなければならない。権限のある機関は、特別な場合において、船舶の大きさ、型又は用途により寝室を他の場所に設けることが不合理又は実行不可能であるときは、寝室を船舶の前部に設けることを許可することができる。ただし、その位置は、いかなる場合も衝突隔壁より前であつてはならない。
2 寝室の一人あたりの床面積は、寝台及びロッカーが占める面積を除き、次の面積を下回つてはならない。
 (a) 二五トン以上五〇トン未満の船舶においては……五・四平方フィート(〇・五平方メートル)
 (b) 五〇トン以上一〇〇トン未満の船舶においては……八・一平方フィート(〇・七五平方メートル)
 (c) 一〇〇トン以上二五〇トン未満の船舶においては……九・七平方フィート(〇・九平方メートル)
 (d) 二五〇トン以上の船舶においては……一〇・八平方フィート(一・〇平方メートル)
3 権限のある機関が第一条4の規定に従いこの条約の適用上長さを基準として使用することを決定する場合には、寝室の一人あたりの床面積は、寝台及びロッカーが占める面積を除き、次の面積を下回つてはならない。
 (a) 長さ四五フィート(一三・七メートル)以上六五フィート(一九・八メートル)未満の船舶においては……五・四平方フィート(〇・五平方メートル)
 (b) 長さ六五フィート(一九・八メートル)以上八八フィート(二六・八メートル)未満の船舶においては……八・一平方フィート(〇・七五平方メートル)
 (c) 長さ八八フィート(二六・八メートル)以上一一五フィート(三五・一メートル)未満の船舶においては……九・七平方フィート(〇・九平方メートル)
 (d) 長さ一一五フィート(三五・一メートル)以上の船舶においては……一〇・八平方フィート(一・〇平方メートル)
4 寝室の天井の高さは、できる限り、六フィート三インチ(一・九〇メートル)を下回つてはならない。
5 各部に対して別個の室を提供するように十分な数の寝室を設けなければならない。ただし、権限のある機関は、小型船舶についてはこの要件を緩和することができる。
6 寝室の占用を許される者の数は、次の最大限度をこえてはならない。
 (a) 職員 できる限り一室に一人とし、いかなる場合にも二人をこえてはならない。
 (b) 部員 できる限り一室に二人又は三人とし、いかなる場合にも次の人数をこえてはならない。
  (i)  二五〇トン以上の船舶においては、四人
  (ii) 二五〇トン未満の船舶においては、六人
7 権限のある機関が第一条4の規定に従いこの条約の適用上長さを基準として使用することを決定する場合には、寝室の占用を許される部員の数は、いかなる場合にも次の人数をこえてはならない。
 (a) 長さ一一五フィート(三五・一メートル)以上の船舶においては、四人
 (b) 長さ一一五フィート(三五・一メートル)未満の船舶においては、六人
8 権限のある機関は、特別な場合において、船舶の大きさ、型又は用途により6及び7の要件が不合理又は実行不可能であるときは、これらの要件の例外を認めることができる。
9 寝室の最大収容人員は、室内の見やすい場所に、読みやすく、かつ、消えないように掲示しなければならない。
10 船員には、各自の寝台を与えなければならない。
11 寝台は、いずれかの寝台に行くために他の寝台を乗り越えなければならないように並べて配置してはならない。
12 寝台は、二段をこえて配置してはならない。船側に沿つて置かれる寝台の場合において横窓が寝台の上にあるときは、一段のみでなければならない。
13 二段の寝台の場合には、下段の寝台は、床から一二インチ(〇・三〇メートル)以上としなければならない。上段の寝台は、下段の寝台の底部と天井の横梁(りょう)の下側とのおおむね中間に置かなければならない。
14 寝台の内側の最小寸法は、できる限り、六フィート三インチと二フィート三インチ(一・九〇メートルと〇・六八メートル)としなければならない。
15 寝台の骨組及び側板(もしあれば)は、堅い、滑らかな、かつ、腐蝕し又は害虫がひそむおそれのない認可された材料のものでなければならない。
16 管状の骨組が、寝台の構造に用いられる場合には、それらの骨組は、完全に密封されて、害虫が侵入する穴のないものでなければならない。
17 各寝台には、認可された材料のバネ付き蒲団又は認可された材料のバネ底及び蒲団を備え付けなければならない。害虫がひそむおそれのあるわらその他の材料の詰め物は、使用してはならない。
18 一の寝台が他の寝台の上に置かれるときは、木材、帆布又は他の適当な材料の防塵(じん)底を上段の寝台の底に取り付けなければならない。
19 寝室は、居住者に適度な安楽を確保し、かつ、整とんを容易にするように設計し、かつ、設備しなければならない。
20 備品には、南京錠用の留金及び衣服用ハンガーをかけるための棒を備えた各居住者のためのロッカーを含めなければならない。権限のある機関は、このようなロッカーをできる限り広くすることを確保しなければならない。
21 各寝室には、固定式、折りたたみ式又は引出し式のテーブル又は机及び必要に応じて快適な腰掛けの設備を備え付けなければならない。
22 備品は、そり、腐蝕し又は害虫がひそむおそれのない滑らかな、かつ、堅い材料のものでなければならない。
23 備品には、できる限り二立方フィート(〇・〇五六平方メートル)を下回らない各居住者のためのたんす又はこれに相当するものを含めなければならない。
24 寝室には、横窓用のカーテンを備え付けなければならない。
25 寝室には、鏡、化粧品用の小たんす、書架及び十分な数の衣服掛けを備え付けなければならない。
26 船員の寝台は、実行可能な限り、当直別に分け、かつ、日勤者が当直者と室を同じくしないように配置しなければならない。

第 十 一 条

1 十人をこえる船員が乗り組むすべての船舶においては、寝室と別個の食堂設備を設けなければならない。可能な場合には、十人以下の船員が乗り組む船舶においても、前記の食堂設備を設けなければならないが、これが実行不可能なときは、食堂を寝室と併設することができる。
2 公海における漁業に従事し、かつ、二十人をこえる船員が乗り組む船舶においては、船長及び職員のため別個の食堂設備を設けることができる。
3 各食堂の広さ及び備品は、同時にこれを使用することがある人数に十分なものでなければならない。
4 食堂には、同時にこれを使用することがある人数に十分なテーブル及び認可された腰掛けを備え付けなければならない。
5 食堂は、できる限り調理室に接近していなければならない。
6 食器室が食堂に接近していない場合には、食器用の十分なロッカー及び食器を洗うための適当な設備を設けなければならない。
7 テーブル及び腰掛けの表面は、き裂のない、かつ、掃除の容易な耐湿材料のものでなければならない。
8 食堂は、実行可能な限り、レクリエーション室として使うことができるように設計され、かつ、設備されなければならない。

第 十 二 条

1 すべての船舶には、洗面器並びに浴槽及び(又は)シャワーを含む十分な衛生設備を備え付けなければならない。
2 個人用設備が附属している部屋に居住していないすべての船員のための衛生設備は、実行可能な限り、各部の船員について次の規模で設けなければならない。
 (a) 八人又はそれ以下の人数ごとに一の浴槽及び(又は)シャワー
 (b) 八人又はそれ以下の人数ごとに一の便所
 (c) 六人又はそれ以下の人数ごとに一の洗面器
  ただし、いずれか一の部の人数が、前記の数の半分より少ない数だけ前記の数の倍数をこえるときは、この超過分は、この2の規定の適用上無視することができる。
3 すべての共同洗面所においては、清水及び湯又は湯沸し設備を利用しうるようにしなければならない。権限のある機関は、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、一人につき一日に供給すべき清水の最少量を定めることができる。
4 洗面器及び浴槽は、十分な大きさのものでなければならず、かつ、き裂を生じ、はがれ、又は腐蝕するおそれのない滑らかな表面の認可された材料のものでなければならない。
5 すべての便所の換気装置は、船員設備の他の部分とは別個に直接外気に通ずるものでなければならない。
6 便所に置かれる衛生設備は、認可された型のものでなければならず、また、いつでも使用し、かつ、独立に操作することができる十分な水を供給するものでなければならない。
7 汚水管及び排水管は、十分な大きさのものでなければならず、また、詰まる危険を最小にし、かつ、掃除を容易にするように作らなければならない。これらの管は、清水又は飲料水のタンクの中を通してはならず、また、実行可能なときは、食堂又は寝室の上部を通してはならない。
8 二人以上の者の使用に供される衛生設備は、次の要件に適合しなければならない。
 (a) 床は、掃除の容易な、かつ、湿気を通しにくい認可された耐久性材料のものでなければならず、また、適当に排水されなければならない。
 (b) 隔壁は、鋼鉄その他の認可された材料のものでなければならず、また、甲板面から少なくとも九インチ(〇・二三メートル)の高さまで防水でなければならない。
 (c) 設備は、十分に照明し、暖房し、及び換気しなければならない。
 (d) 便所は、寝室及び洗面所から便利な位置に、これとは別に設けなければならず、また、便所の出入口は、寝室又は寝室と便所との間の他に出入口のない通路に直接に面してはならない。ただし、この要件は、便所が合計四人をこえない者を収容する二つの寝室の間にある場合には、適用しない。
 (e) 一区画中に二以上の便所がある場合には、それらの便所は、人目につかないように十分にしや蔽(へい)しなければならない。
9 衣服の洗濯及び乾燥のための施設は、船員の人数及び通常の航行期間に適した規模で設けなければならない。
10 洗濯設備を別個に設けることが実行不可能なときは、衣服の洗濯のための施設として洗面所の中に排水装置のある適当な流しを設けることができる。この流しには、清水及び湯を十分に供給し、又は湯沸し設備を備えなければならない。
11 衣服の乾燥のための施設は、寝室、食堂及び便所とは別個の区画に設け、十分に換気し、及び暖房し、並びに衣服をつるすためのひもその他の装置を備えなければならない。

第 十 三 条

1 病気にかかり又は負傷した船員のため、できる限り、独立した船室を設けなければならない。五〇〇トン以上の船舶には、病室を設けなければならない。権限のある機関が第一条4の規定に従いこの条約の適用上長さを基準として使用することを決定する場合には、長さ一五〇フィート(四五・七メートル)以上の船舶には、病室を設けなければならない。
2 医師を乗り組ませないすべての船舶には、平易な説明書付きの認可された医療箱を備えなければならない。この点について、権限のある機関は、千九百五十八年の船内医療箱勧告及び千九百五十八年の海上医療助言勧告を考慮しなければならない。

第 十 四 条

 十分な数のかつ十分に換気される防水着掛設備を寝室の外の便利な位置に設けなければならない。

第 十 五 条

 船員設備は、清潔な、かつ、相当な居住性を有する状態に維持しなければならず、また、居住者の個人的所有に属しない物品の置き場所にしてはならない。

第 十 六 条

1 十分な調理設備を、船内に設けなければならず、また、実行可能な限り、別個の調理室の中に置かなければならない。
2 調理室は、調理の目的に合つた十分な広さのものでなければならず、また、十分に照明し、及び換気しなければならない。
3 調理室には、調理器具、必要な数の食器戸棚及び棚、錆止(さびどめ)材料の流し及び皿掛け並びに十分な排水装置を備え付けなければならない。飲料水は、パイプによつて調理室に供給しなければならない。飲料水が加圧供給される場合には、逆流防止装置を取り付けなければならない。湯が調理室に供給されない場合には、湯沸し器を備えなければならない。
4 調理室には、船員に常時熱い飲物を準備するため適当な設備を設けなければならない。
5 食料の品質低下を避けるため、乾燥した、涼しい、かつ、十分に換気された状態に維持しておくことができる十分な容積の食料庫を備えなければならない。必要な場合には、冷蔵庫又は他の低温貯蔵所を備えなければならない。
6 調理室で調理のためブタン・ガス又はプロパン・ガスを使用する場合には、ガス容器は、暴露甲板上に置かなければならない。

第 四 部 現存漁船に対する条約の適用

第 十 七 条

1 2、3及び4の規定を留保して、この条約は、登録領域についてこの条約が効力を生じた後にキールを据え付けた船舶に適用する。
2 登録領域についてこの条約が効力を生じた日に竣工(しゅんこう)している船舶であつて、この条約の第三部に定める基準に満たないものについては、権限のある機関は、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、次の場合に、当該船舶をこの条約の要件に適合させるため、発生する実際上の問題を考慮して可能と認められる変更を当該船舶に加えることを要求することができる。
 (a) 当該船舶が登録替えされる場合
 (b) 事故又は緊急事態の結果としてではなく、長期計画の結果として当該船舶に実質的な構造上の変更又は大修理を加える場合
3 登録領域についてこの条約が効力を生じた日に建造中及び(又は)改造中の船舶については、権限のある機関は、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、当該船舶をこの条約の要件に適合させるため、発生する実際上の問題を考慮して可能と認められる変更を当該船舶に加えることを要求することができる。この変更が行なわれたことにより、当該船舶が登録替えされない限り、この条約の規定に最終的に適合しているものとみなされる。
4 2及び3に掲げる船舶又はこの条約の規定が建造中に適用された船舶以外の船舶が、ある領域についてこの条約が効力を生じた日の後に当該領域において登録替えされるときは、権限のある機関は、漁船所有者団体及び漁船員団体があるときはそれらと協議の上、当該船舶をこの条約の要件に適合させるため、発生する実際上の問題を考慮して可能と認められる変更を当該船舶に加えることを要求することができる。この変更が行なわれたことにより、当該船舶が再び登録替えされない限り、この条約の規定に最終的に適合しているものとみなされる。

第 五 部 最終規定

第 十 八 条

 この条約のいかなる規定も、この条約に規定された条件よりも有利な条件を確保している法律、裁定、慣行又は漁船所有者と漁船員との間の協約に影響を及ぼすものではない。

第 十 九 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 ニ 十 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 二 十 一 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 二 十 ニ 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 二 十 三 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 四 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 五 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第二十一条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 六 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。