1973年の港湾労働条約(第137号)

ILO条約 | 1973/06/25

港湾における新しい荷役方法の社会的影響に関する条約(第137号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十三年六月六日にその第五十八回会期として会合し、
 重要な変化が、港湾における荷役方法(例えば、ユニット・ロードの採用、ロールオン・ロールオフ方式の導入、機械化及びオートメーションの進展)及び貨物の移動の形態に生じており及び生じつつあること並びにそのような変化が将来一層広範囲に生ずると予想されることを考慮し、
 そのような変化が、貨物の移動を速め、船舶が港湾において停泊する時間を短縮し及び輸送の費用を低下させることにより、当該国の経済全体に利益をもたらし、また、生活水準の向上に寄与するであろうことを考慮し、
 そのような変化が、また、港湾における雇用の水準並びに港湾労働者の労働条件及び生活状態にかなり大きな影響を及ぼすものであること並びにそれに起因する問題の発生を防止し又は減少させるための措置がとられるべきであることを考慮し、
 港湾労働者が、新しい荷役方法の導入がもたらす利益の配分にあずかるべきであり、したがつて、雇用の恒常化、収入の安定化等の方法その他港湾労働者の労働条件及び生活状態に関する措置並びに港湾労働の安全衛生面に関する措置による港湾労働者の地位の永続的な向上のための対策が、新しい荷役方法の企画及び導入と同時に企画され、かつ、採用されるべきであることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第五議題である新しい荷役方法の社会的影響(港湾)に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであると決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百七十三年の港湾労働条約と称することができる。)を千九百七十三年六月二十五日に採択する。

第 一 条

1 この条約は、港湾労働者として常時就労することができる者であつて、年間の主たる収入を港湾労働者としての労働によつて得るものについて適用する。
2 この条約の適用上、「港湾労働者」及び「港湾労働」とは、国内の法令又は慣行により、それぞれ、港湾労働者として定義される者及び港湾労働として定義される業務をいう。そのような定義の決定及び改正については、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議し又はそれらの団体を参加させるものとする。この場合において、新しい荷役方法及びこれが港湾労働者の種々の職種に及ぼす影響について考慮が払われる。

第 二 条

1 すべての関係者に対し、実行可能な限り港湾労働者について常用雇用又は常時雇用を確保するように奨励することを国家の政策とする。
2 港湾労働者は、いかなる場合においても、当該国及び当該港湾の経済的及び社会的な事情に即した方法及び範囲内で、最低の雇用期間又は最低の収入が保障される。

第 三 条

1 登録は、国内の法令又は慣行によつて定められる方式で、港湾労働者のすべての職種について設け、かつ、維持する。
2 登録港湾労働者は、港湾労働への雇入れについて優先権を有する。
3 登録港湾労働者は、国内の法令又は慣行によつて定められる態様で就労が可能であることを要求される。

第 四 条

1 登録の定数は、当該港湾の需要に適合した水準に達するように定期的に再検討する。
2 登録の定数の削減が必要である場合には、港湾労働者に対する不利益を防止し又は最小限にとどめるための措置がとられる。

第 五 条

 新しい荷役方法による社会的利益を最大限に確保するため、使用者又は使用者団体と労働者団体との間で、適当な場合には権限のある機関の参加を得て、港湾における労働能率の向上について協力するように奨励することを国家の政策とする。

第 六 条

 各加盟国は、安全、衛生、福祉及び職業訓練に関する適切な規定が港湾労働者について適用されることを確保する。

第 七 条

 この条約は、労働協約若しくは仲裁裁定により又は国内慣行に合致するその他の方法によつて実施する場合を除くほか、国内法令によつて実施する。

第 八 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 九 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 一 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 ニ 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 三 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 四 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 五 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。