1979年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約(第152号)

ILO条約 | 1979/06/25

港湾労働における職業上の安全及び衛生に関する条約(第152号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十九年六月六日にその第六十五回会期として会合し、
 関係のある現行の国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百二十九年の重量標示(船舶運送の包装貨物)条約、千九百六十三年の機械防護条約及び千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約の規定に留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である千九百三十二年の災害からの保護(港湾労働者)に関する条約(改正)(第三十二号)の改正に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを考慮して、
 次の条約(引用に際しては、千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約と称することができる。)を千九百七十九年六月二十五日に採択する。

第 一 部 適用範囲及び定義

第 一 条

 この条約の適用上、「港湾労働」とは、船舶の荷積み又は荷卸しの作業の全部又は一部及びそれらに付随する作業をいう。そのような作業の定義は、国内法令又は国内慣行によつて定める。この定義の設定及び改訂については、関係のある使用者団体及び労働者団体は、協議を受けるものとし又はその他の方法でこれらに参加する。

第 二 条

1 加盟国は、次の条件の下に、交通が不定期的であり、かつ、小型船舶に限定される場所における港湾労働及び漁船又は特定の種類の漁船に係る港湾労働に関して、この条約の規定の適用の除外又は例外を認めることができる。
 (a) 安全な労働条件が維持されること。
 (b) 権限のある機関が、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、あらゆる事情の下でこのような適用の除外又は例外の存在が合理的であると認めること。
2 第三部の特定の要件は、権限のある機関が、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、修正が同等の利益をもたらし、かつ、与えられる保護が全体としてこの条約の規定の完全な適用から生ずるものに劣らないと認める場合には、これを修正することができる。
3 1の規定に基づいて認められた適用の除外又は例外及び2の規定に基づいてなされた重要な修正並びにそれらの理由は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する報告において述べるものとする。

第 三 条

 この条約の適用上、
 (a) 「労働者」とは、港湾労働に従事する者をいう。
 (b) 「資格を有する者」とは、一又は二以上の特定の職務の遂行上要求される知識及び経験を有する者であつて、権限のある機関がこのような知識及び経験を有する者として受け入れることができるものをいう。
 (c) 「責任を負う者」とは、一又は二以上の特定の職務の遂行について責任を負う者として、場合に応じ、使用者、船長又は用具の所有者によつて指名される者であつて、十分な知識及び経験並びにその職務の適正な遂行のために必要な権限を有するものをいう。
 (d) 「権限を与えられた者」とは、使用者、船長又は責任を負う者によつて一又は二以上の特定の任務を担当する権限を与えられた者であつて、必要な技術的知識及び経験を有するものをいう。
 (e) 「荷揚用機械」とは、荷をつり、揚げ若しくは卸すために又は荷をつり若しくは支えながらある場所から他の場所へ動かすために、陸上又は船上で使用されるすべての固定式又は移動式の荷役用機械(陸上にある動力式ランプを含む。)をいう。
 (f) 「玉掛用具」とは、荷をそれによつて荷揚用機械に取り付け得る用具であつて、機械又は荷の一部を成さないものをいう。
 (g) 「通行」には、退出を含む。
 (h) 「船舶」とは、軍艦を除くすべての種類の船舶、はしけ又はホーバークラフトをいう。

第 二 部 一般規定

第 四 条

1 国内法令は、港湾労働に関し、次のことを目的として、第三部の規定に合致する措置がとられることを規定する。
 (a) 安全で健康障害の危険がない作業場、設備及び作業方法を提供しかつ維持すること。
 (b) 作業場への安全な通行の手段を提供しかつ維持すること。
 (c) 業務に起因し又は業務の遂行中に生ずる事故又は健康障害の危険からの労働者の保護を確保するために必要な情報、訓練及び監督を提供すること。
 (d) 事故又は健康障害の危険からの適切な保護が、他の手段によつて提供され得ない場合には、合理的に要求される個人用保護具及び保護衣並びに救命具を労働者に提供すること。
 (e) 適当かつ十分な救急及び救助の施設を提供しかつ維持すること。
 (f) 起こり得る緊急事態に対処するための適切な手続を開発しかつ設定すること。
2 この条約に基づいてとられるべき措置には、次の事項を含む。
 (a) 港湾の建造物及び港湾労働が行われるその他の場所の建設、設備及び保守に関する一般的要件
 (b) 火災及び爆発の予防及び防護
 (c) 船舶、船倉、足場、設備及び荷揚用機械への安全な通行の手段
 (d) 労働者の輸送
 (e) ハッチの開閉及び防護並びに船倉内での作業
 (f) 荷揚用機械その他の荷役用機械の組立て、保守及び使用
 (g) 足場の建設、保守及び使用
 (h) 船舶のデリックの装着及び使用
 (i) 適当な場合には、荷揚用機械、玉掛用具(鎖及びロープを含む。)並びに荷の一部を成すスリングその他のつり具の試験、検査、点検及び証明
 (j) 種々の形態の積荷の取扱い
 (k) 物品の積重ね及び貯蔵
 (l) 危険物質及び作業環境におけるその他の危害
 (m) 個人用保護具及び保護衣
 (n) 衛生設備、洗濯(せんたく)施設及び福利施設
 (o) 健康管理
 (p) 救急及び救助の施設
 (q) 安全衛生に関する組織
 (r) 労働者の訓練
 (s) 職業上の事故及び疾病の届出及び調査
3 1の規定に従つて定められる要件の実際的な実施は、権限のある機関によつて認められる技術基準若しくは実施基準により又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の適当な手段によつて確保され又は援助される。

第 五 条

1 国内法令は、第四条1に規定する措置の履行につき、場合に応じ、使用者、所有者、船長又はその他の適当な者に責任を負わせるものとする。
2 二人以上の使用者が同一の作業場において同時に活動を行う場合には、それらの使用者は、被用者の健康及び安全に関する各使用者の責任を損うことなしに、所定の措置を履行するために協力する義務を有する。権限のある機関は、適当な場合には、この協力のための一般的手続を定める。

第 六 条

1 労働者について、次の事項を目的とする措置がとられる。
 (a) 労働者が、自己又は他の者の保護のために提供される安全装置又は設備につき、その機能を正当な理由なく妨げ又は誤用しないように要求されること。
 (b) 労働者が、自己の安全について及び作業における自己の行動又は怠慢によつて影響を受ける他の者の安全について、合理的な注意を払うこと。
 (c) 労働者が、危険をもたらし得ると信ずる理由があり、かつ、労働者自身では是正し得ない状態を、是正措置がとられ得るように、直ちに直接の監督者に報告すること。
2 労働者は、作業場において、作業設備及び作業方法に対するその管理の範囲内で作業の安全の確保に参加し、かつ、安全に影響を及ぼすような採用される作業手順について意見を表明する権利を有する。この権利は、国内法令及び国内慣行に適合している限り、第三十七条の規定に従い安全委員会及び衛生委員会が設けられた場合には、これらの委員会を通じて行使される。

第 七 条

1 国内法令により又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の適当な方法によつてこの条約の規定を実施するに当たつては、権限のある機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、これを行う。
2 第四条1に規定する措置の適用に当たり、使用者及び労働者の間の又はそれぞれの代表者の間の密接な協力が規定される。

第 三 部 技術的措置

第 八 条

 作業場が安全でなくなるとき又は健康障害の危険が存在するときは、当該作業場が再び安全になるまで、労働者を保護するため(柵(さく)を施すこと、旗をたてること又は他の適当な方法(必要な場合には、作業の停止を含む。)により)、効果的な措置がとられる。

第 九 条

1 港湾労働が行われているすべての場所及びそこへ通ずるすべての通路は、適当かつ十分に照明される。
2 荷揚用機械、車両又は人の動きにとつて危険となるおそれのある障害物は、実際上の理由によつて除去することができないときは、適当にかつ目立つように印をつけられ、また、必要な場合には、十分に照明される。

第 十 条

1 車両の通行のため又は物品若しくは資材の積重ねのために使用されるすべての床面は、そのような目的に適合するものでなければならず、また、適切に維持される。
2 物品又は資材の積重ね、積込み、取崩し又は取卸しの作業を行う場合には、当該作業は、物品又は資材の性質及びその包装を考慮の上、安全なかつ整然とした方法で行われる。

第 十 一 条

1 車両及び荷役用機械の安全な使用を可能にするため、十分な幅員をもつた通路が確保される。
2 必要かつ実行可能な場合には、別個の歩行者用通路を提供する。このような通路は、十分な幅員をもち、実行可能である限り、車両用通路から隔てられる。

第 十 二 条

 港湾労働が行われる場所において使用されるため、適当かつ十分な消火の手段が提供され、かつ、いつでも利用し得るようにする。

第 十 三 条

1 機械のすべての危険な部分は、有効に防護される。ただし、当該部分が、その位置又は構造のために、有効に防護されたときと同程度に安全である場合には、この限りでない。
2 非常の場合に動力を迅速に遮断(しゃだん)することが必要である機械に関しては、このことのために有効な措置がとられる。
3 人を危険にさらす掃除、保守又は修理の作業が機械について行われなければならない場合には、当該作業が開始される前に機械が停止されるものとし、また、当該作業が完了するまでは機械が再び始動され得ないようにするために適当な措置がとられる。ただし、責任を負う者は、機械が停止している間には実施することができない試験又は調整のために、機械を再び始動させることができる。
4 権限を与えられた者のみが、次のことを行うことを許される。
 (a) 作業の実施のために必要な場合には、防護装置を取りはずすこと。
 (b) 掃除、調整又は修理のために、安全装置を取りはずし又はその機能を停止させること。
5 防護装置が取りはずされる場合には、適切な防護策がとられるものとし、かつ、当該防護装置は、実行可能な限り速やかにもとの位置に戻される。
6 安全装置は、取りはずされ又はその機能が停止させられる場合には、実行可能である限り速やかにもとの位置に戻され又はその機能が回復させられるものとし、また、安全装置がもとの位置に戻され又はその機能が回復させられるまでは、関係設備が使用され得ないようにし又は不注意に始動させられ得ないようにするための措置がとられる。
7 この条の規定の適用上、「機械」には、荷揚用機械、機械式ハッチカバー又は動力駆動設備を含む。

第 十 四 条

 すべての電気設備及び電気装置は、危険を防止するように組み立てられ、取り付けられ、操作され及び保守されるものとし、また、権限のある機関によつて認められた基準に従う。

第 十 五 条

  船舶が岸壁又は他の船舶に接して荷積み又は荷卸しが行われているときは、適正に取り付けられかつ固定される適切かつ安全な船舶への通行の手段が提供され、かつ、いつでも利用し得るようにする。

第 十 六 条

1 労働者が船舶若しくはその他の場所へ又はこれらの場所から船で輸送されなければならないときには、安全な乗船、輸送及び下船を確保するため、適切な措置がとられる。この目的のために使用される船舶によつて遵守されるべき条件は、明示されなければならない。
2 労働者が陸上の作業場へ又はそこから輸送されなければならないときは、使用者によつて提供される輸送手段は、安全なものでなければならない。

第 十 七 条

1 船倉又は貨物甲板への通行は、次のいずれかの手段による。
 (a) 固定階段又は、これが実行可能でない場合には、適切な大きさ、十分な強さ及び適正な構造の固定梯子(はしご)、クリート若しくはカップ
 (b) 権限のある機関が受け入れることができるその他の手段
2 合理的でありかつ実行可能である限り、この条に規定する通行の手段は、ハッチの開口部とは別個のものでなければならない。
3 労働者は、この条に規定するもの以外の船倉又は貨物甲板への通行手段を使用してはならず又は使用することを要求されない。

第 十 八 条

1 ハッチカバー又はハッチビームは、堅固な構造のものであり、使用される用途に適する強度を有し、かつ、適切に保全されている場合を除いては、使用してはならない。
2 荷揚用機械の助けを借りて取り扱われるハッチカバーには、スリング又はその他の荷揚用具を固定させるため、容易に入手し得る適切な附属品が取り付けられる。
3 ハッチカバー及びハッチビームは、相互に取り換えることができないものである場合には、それらが属するハッチ及びその中での位置を示すため、明確な印を付けておかれる。
4 権限を与えられた者(実行可能な場合には、船舶の乗組員の一員)のみが、動力式ハッチカバーを開閉することができる。ハッチカバーは、その作動により人が負傷するおそれのある間は、開閉してはならない。
5 4の規定は、船体の戸、ランプ、収納可能な自動車用甲板又は類似の設備のような船舶の動力式の設備について準用する。

第 十 九 条

1 労働者又は車両が墜落するおそれのある開口部であつて、労働者が労働することを要求される甲板上にあるものを防護するため、適当な措置がとられる。
2 適当な高さ及び強度の縁材を取り付けられていないあらゆるハッチは、作業の短時間の中断の間を除き、ハッチがもはや使用されないときは、閉鎖され又は防護装置がもとに戻されるものとし、かつ、責任を負う者は、これらの措置が実施されるようにする任務を担当する。

第 二 十 条

1 動力車両が船倉内で動いているとき又は動力式機械を用いて荷積み若しくは荷卸しの作業が行われるときは、船倉内又は貨物甲板上に留(とど)まることを要求される労働者の安全を確保するために、すべての必要な措置がとられる。
2 ハッチカバー及びハッチビームは、ハッチの下の船倉において作業が行われている間は、取り除かれ又はもとに戻されてはならない。移動に対して適切に固定されていないハッチカバー又はハッチビームは、荷積み及び荷卸しが行われる前に取り除かれる。
3 内燃機関により又はその他の発散源から排出されるガスから生ずる健康障害を予防するため、新鮮な空気の循環によつて船倉内又は貨物甲板上における適切な換気が確保される。
4 船倉若しくは甲板間の場所においてばら積み乾貨物の荷積み若しくは荷卸しが行われているとき又は労働者が船の貯蔵庫若しくはホッパーで労働することを要求されるときは、人の安全のために適当な措置(安全な避難の手段を含む。)がとられる。

第 二 十 一 条

 あらゆる荷揚用機械、あらゆる玉掛用具及び荷の一部を成すあらゆるスリング又はつり具は、
 (a) 良好な設計及び構造のものであり、使用される目的に適した強度を有し並びにいつでも良好な修理状態及び作動状態の下に置かれるものとし、また、据(すえ)付けが必要な荷揚用機械の場合には、適正に据(す)え付けられる。
 (b) 安全かつ適正な方法で使用されるものとし、特に、所定の試験を目的として資格を有する者の指導の下で行われる場合を除き、その安全作業荷重を超えて負荷されてはならない。

第 二 十 二 条

1 あらゆる荷揚用機械及び玉掛用具は、最初に使用される前に及びその安全に影響するおそれのある部分についてのかなりの規模の改造又は修理の後に、国内法令に従い、資格を有する者によつて試験される。
2 船舶の設備の一部を成す荷揚用機械は、少なくとも五年ごとに一度再試験を行う。
3 陸上に設置される荷揚用機械は、権限のある機関によつて定められる期間ごとに再試験を行う。
4 この条の規定に従つて実施される荷揚用機械又は玉掛用具の各試験の終了ごとに、当該試験を実施する者により当該機械又は用具が十分に検査されかつ証明される。

第 二 十 三 条

1 第二十二条の要件に加えて、あらゆる荷揚用機械及び玉掛用具は、資格を有する者により定期的に十分に検査されかつ証明される。このような検査は、少なくとも十二箇月ごとに一度行われる。
2 第二十二条4及びこの条1の規定の適用上、十分な検査とは、資格を有する者による詳細な視覚検査であつて、必要な場合には、検査される機械又は玉掛用具の安全について信頼し得る結論に達するため、その他の適切な手段又は措置によつて補足されるものをいう。

第 二 十 四 条

1 あらゆる玉掛用具は、使用前に規則的に点検される。消耗品である又は使い捨てのスリングは、再使用されてはならない。あらかじめスリングが取り付けられている荷の場合には、スリングは、合理的で実行可能な頻度(ひんど)で点検される。
2 1の規定の適用上、点検とは、用具又はスリングの継続使用が、確かめ得る限度で、安全であるかどうかを決定するために責任を負う者によつて実施される視覚点検をいう。

第 二 十 五 条

1 関係のある荷揚用機械及び玉掛用具の安全な状態についての一応の証拠を提供するような正当に認証された記録が、場合に応じ、陸上又は船上に保存される。この記録には、安全作業荷重並びに第二十二条、第二十三条及び第二十四条に規定する試験、十分な検査及び点検の日付及び結果を明記する。ただし、第二十四条1に規定する点検の場合には、その点検により欠陥が明らかにされる場合にのみ記録する必要がある。
2 荷揚用機械及び玉掛用具の記録は、国際労働事務局によつて勧告される模範様式を考慮して権限のある機関によつて定められる様式によつて行われる。
3 2の記録には、荷揚用機械及び玉掛用具の、場合に応じ、試験、十分な検査及び点検に関し国際労働事務局によつて勧告される模範様式を考慮して権限のある機関が定める様式により権限のある機関が付与し若しくは有効なものと認める証明書又はこの証明書の認証された真正な写しを含む。

第 二 十 六 条

1 船舶の設備の一部を成す荷揚用機械及び玉掛用具の試験、十分な検査、点検及び証明に関し、この条約を批准した加盟国によつてとられる措置及び関係記録の相互承認を確保するため、
 (a) この条約を批准した各加盟国の権限のある機関は、試験及び(又は)十分な検査並びに関連する職務を行う資格を有する者又は国内機関若しくは国際機関を指名し又はその他の方法で承認する。もつとも、指名又は承認の継続は、職務の満足な遂行に依存することとする。
 (b) この条約を批准した加盟国は、(a)の規定に従つて指名され若しくはその他の方法で承認される者若しくは機関を受け入れ若しくは承認するものとし又はそのような受入れ若しくは承認に関して相互取決めを行う。いずれの場合においても、受入れ又は承認は、それらの継続が職務の満足な遂行に依存することとするという条件の下におかれる。
2 次のいずれかの場合には、荷揚用機械、玉掛用具又はその他の荷役用機械を使用してはならない。
 (a) 権限のある機関が、場合に応じ、試験若しくは検査の証明書又は認証された記録を参照して、必要な試験、検査又は点検がこの条約の規定に従つて実施されていると認めることができない場合
 (b) 権限のある機関が、当該機械又は用具の使用が安全でないと考える場合
3 2の規定は、権限のある機関にとつて満足すべき設備が使用されている船舶の荷積み又は荷卸しの遅滞をひき起こすように適用されてはならない。

第 二 十 七 条

1 単一の安全作業荷重を有するあらゆる荷揚用機械(船舶のデリックを除く。)及び玉掛用具には、刻印により又は、これが実際的でない場合には、その他の適切な手段によつて、その安全作業荷重が明確に表示される。
2 二以上の安全作業荷重を有するあらゆる荷揚用機械(船舶のデリックを除く。)には、運転者が各使用条件の下での安全作業荷重を決定することができるようにする有効な手段が取り付けられる。
3 船舶のあらゆるデリック(デリッククレーンを除く。)には、当該デリックが使用される次の場合に適用される安全作業荷重が明確に表示される。
 (a) 巻揚機が単一で使用される場合
 (b) 荷卸し用滑車とともに使用される場合
 (c) すべての可能な滑車位置で巻揚機を組み合わせて使用される場合

第 二 十 八 条

 すべての船舶は、装着計画並びにそのデリック及び附属用具の安全な装着を可能にするために必要なその他の関連情報を携行する。

第 二 十 九 条

 荷を収容し又は支えるためのパレット及び類似の装置は、堅固な構造であり、適切な強度をもち、かつ、その安全な使用に影響を及ぼすおそれのある明らかな欠陥がないものでなければならない。

第 三 十 条

 荷は、安全な方法によつて荷揚用機械につり下げられ又は取り付けられない限り、揚げられ又は卸されてはならない。

第 三 十 一 条

1 あらゆる貨物コンテナーターミナルは、合理的でありかつ実行可能である限り、労働者の安全を確保するように建設され及び運営される。
2 コンテナーを運搬する船舶の場合には、コンテナーを取り付け又は取りはずす労働者の安全を確保するための手段が提供される。

第 三 十 二 条

1 危険な積荷は、船による危険な物品の輸送について適用される国際規則であつて港湾における危険な物品の取扱いについて特に規定するものの関係規定に従つて、梱包(こんぽう)され、印及びラベルによつて表示され、取り扱われ、貯蔵され並びに積み込まれる。
2 危険な物質は、そのような物質の輸送に関する国際規則に従つて、梱包(こんぽう)され、かつ、印及びラベルによつて表示されていない限り、取り扱われ、貯蔵され又は積み込まれてはならない。
3 危険な物質を入れる容器又はコンテナーが危険な程度まで破壊され又は損傷を受ける場合には、危険を取り除くために必要な港湾労働以外の港湾労働は、関係区域において中止されるものとし、労働者は、当該危険が取り除かれるまでは、安全な場所に移動させられる。
4 有毒若しくは有害な物質若しくは因子又は酸素が欠乏している若しくは引火し易い空気に労働者をさらすことを防止するため、適当な措置がとられる。
5 労働者が、有毒若しくは有害な物質が存在しているおそれのある又は酸素が欠乏しているおそれのある狭い場所に入ることを要求される場合には、事故又は健康障害を予防するため、適切な措置がとられる。

第 三 十 三 条

 作業場における著しい騒音の有害な影響から労働者を保護するため、適切な予防措置がとられる。

第 三 十 四 条

1 事故又は健康障害の危険からの適切な保護が他の手段によつて確保され得ない場合には、労働者は、その作業の遂行のために合理的に要求される個人用保護具及び保護衣を支給されるものとし、また、適正に使用するように要求される。
2 労働者は、個人用保護具及び保護衣を管理するように要求される。
3 個人用保護具及び保護衣は、使用者によつて適正に保守される。

第 三 十 五 条

 事故の場合には、危険な状態にある者を救出するため、応急手当の措置のため及び、合理的でありかつ実行可能である限り、負傷者を更に危険にさらすことなく運搬するため、訓練された職員を含む適切な便宜が直ちに利用可能でなければならない。

第 三 十 六 条

1 各加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、国内法令又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の方法により次の事項を決定する。
 (a) 就業時の健康診断若しくは定期的な健康診断又はこれらの双方が必要となるような職業上の危険
 (b) 危険の性質及び度合並びに特殊な事情を十分に考慮した上での定期的な健康診断が行われるべき最大の間隔
 (c) 特別な職業上の健康障害の危険にさらされる労働者の場合には、必要と認められる特別な調査の範囲
 (d) 労働者に対し職業上の衛生サービスを提供するための適当な措置
2 1の規定に従つて実施されるすべての健康診断及び調査は、労働者にその費用を負担させてはならない。
3 健康診断及び調査の記録は、秘密の事項とする。

第 三 十 七 条

1 使用者及び労働者の代表者を含む安全委員会及び衛生委員会は、かなりの数の労働者がいる港湾ごとに組織されるものとする。そのような委員会は、必要に応じ、その他の港湾においても組織される。
2 1の委員会の設置、構成及び機能は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、国内法令又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の適当な方法により、地方的事情に照らして決定される。

第 三 十 八 条

1 労働者は、作業に付随する潜在的な危険及びとられるべき主な予防措置に関して適切な指示又は訓練を与えられない限り、港湾労働に使用されてはならない。
2 荷揚用機械又はその他の荷役用機械は、必要な適性及び経験を有する少なくとも十八歳に達する者又は適正に監督されている訓練中の者によつてのみ操作される。

第 三 十 九 条

 職業上の事故及び疾病の防止に資するため、それらについて権限のある機関に報告がなされ及び、必要な場合には、調査が行われるようにするための措置がとられる。

第 四 十 条

 国内法令又は国内慣行に従い、各埠頭(ふとう)において、実行可能な場合には、作業場からの合理的な距離内で、十分な数の適当かつ十分な衛生設備及び洗濯(せんたく)施設が提供され、かつ、適正に維持される。

第 四 部 実施

第 四 十 一 条

 この条約を批准する各加盟国は、
 (a) 港湾労働の関係者及び関係機関の職業上の安全及び衛生に関する義務を明示する。
 (b) この条約を実施するため、相当な刑罰の設定を含む必要な措置をとる。
 (c) この条約に基づいてとられる措置の適用について監督するため、適当な監督機関を設け又は適切な監督の実施を確保する。

第 四 十 二 条

1 国内法令は、次の事項についてこの条約の規定を適用すべき日限を定める。
 (a) 船舶の構造又は設備
 (b) 陸上に設置される荷揚用機械又はその他の荷役用機械の構造又は装備
 (c) 玉掛用具の構造
2 1の規定に基づいて定められる日限は、この条約の批准の日から四年を超えてはならない。

第 五 部 最終規定

第 四 十 三 条

 この条約は、千九百二十九年の災害からの保護(港湾労働者)に関する条約及び千九百三十二年の災害からの保護(港湾労働者)に関する条約(改正)を改正する。

第 四 十 四 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 四 十 五 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 四 十 六 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 四 十 七 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 四 十 八 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 四 十 九 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 五 十 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第四十六条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 五 十 一 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。