1981年の団体交渉条約(第154号)

ILO条約 | 1981/06/03

団体交渉の促進に関する条約(第154号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十一年六月三日にその第六十七回会期として会合し、
 フィラデルフィア宣言が、「団体交渉権の実効的な承認……を達成するための計画を世界の諸国間において促進する国際労働機関の厳粛な義務」を承認していることを再確認し、この原則が、「全世界のすべての人民に十分に適用できる」ことに留意し、
 千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約、千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約、千九百五十一年の労働協約勧告、千九百五十一年の任意調停及び任意仲裁勧告、千九百七十八年の労働関係(公務)条約及び千九百七十八年の労働関係(公務)勧告並びに千九百七十八年の労働行政条約及び千九百七十八年の労働行政勧告に定める現行の国際基準の基本的重要性を考慮し、
 これらの基準の目的、特に、千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約第四条及び千九百五十一年の労働協約勧告1に規定する一般原則を達成するため一層の努力を行うことが望ましいことを考慮し、
 したがつて、これらの基準が、当該基準に基づき自由かつ自主的な団体交渉を促進することを目的とする適当な措置により補足されるべきであることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である団体交渉の促進に関する提案の採択を決定し、   
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十一年の団体交渉条約と称することができる。)を千九百八十一年六月十九日に採択する。

第 一 部 適用範囲及び定義

第 一 条

1 この条約は、経済活動のすべての部門について適用する。
2 この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内の法令又は慣行で定めることができる。
3 公務については、この条約の適用の特別な方式を国内の法令又は慣行で定めることができる。

第 二 条

 この条約の適用上、「団体交渉」とは、次の事項のうち一又は二以上の事項について、使用者、使用者の集団又は一若しくは二以上の使用者団体と一又は二以上の労働者団体との間で行われるすべての交渉をいう。
 (a) 労働条件及び雇用条件を決定すること。
 (b) 使用者と労働者の関係について定めること。
 (c) 使用者又は使用者団体と一又は二以上の労働者団体の関係について定めること。

第 三 条

1 国内の法令又は慣行が千九百七十一年の労働者代表条約第三条(b)に規定する労働者代表の存在を認める場合には、この条約の適用上、「団体交渉」を当該労働者代表との交渉に適用する範囲については、国内の法令又は慣行で決定することができる。
2 1の規定により、「団体交渉」に1にいう労働者代表との交渉を含める場合には、これらの代表の存在が関係のある労働者団体の地位を害するために利用されることがないようにするため、必要なときには適当な措置をとる。

第 二 部 適用方法

第 四 条

 この条約は、労働協約若しくは仲裁裁定により又は国内慣行に適合するその他の方法によつて実施されない限り、国内法令によつて実施する。

第 三 部 団体交渉の促進

第 五 条

1 団体交渉を促進するため、国内事情に適する措置をとる。
2 1の措置は、次のことを目的とする。
 (a) 団体交渉は、この条約の対象とされている活動部門において、すべての使用者及びすべての労働者の集団にとつて可能であるべきであること。
 (b) 団体交渉は、第二条(a)から(c)までに規定するすべての事項について漸進的に拡張すべきであること。
 (c) 使用者団体と労働者団体との間で合意された手続規則の制定を奨励すべきであること。
 (d) 団体交渉は、用いられる手続を規律する規則がないことにより又はこのような規則が不適当であることにより妨げられるべきではないこと。
 (e) 労働紛争の解決のための機関及び手続は、団体交渉の促進に寄与するようなものであると理解すべきであること。

第 六 条

 この条約は、団体交渉中の当事者が自主的に参加する調停又は仲裁制度の枠内で団体交渉が行われるような労使関係制度の運営を妨げるものではない。

第 七 条

 公の機関が団体交渉の発展を奨励し及び促進するためにとる措置は、公の機関と使用者団体及び労働者団体との間における事前の協議及び、可能な場合には、合意の対象とする。

第 八 条

 団体交渉を促進するためにとる措置は、団体交渉の自由を妨げるように理解され又は適用されてはならない。

第 四 部 最終規定

第 九 条

 この条約は、現存するいずれの条約又は勧告も改正するものではない。

第 十 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 一 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 ニ 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 三 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 四 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 五 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 六 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十二条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 七 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。