1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)

ILO条約 | 1983/06/20

障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)
(日本は1992年6月12日に批准)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十三年六月一日にその第六十九回会期として会合し、
 千九百五十五年の職業リハビリテーション(障害者)勧告及び千九百七十五年の人的資源開発勧告に定める現存の国際基準に留意し、
 千九百五十五年の職業リハビリテーション(障害者)勧告が採択された後、リハビリテーションの必要性に対する理解、リハビリテーション事業の範囲及び組織並びに同勧告が対象としている問題に関する多くの加盟国の法令及び慣行に著しい進展が見られたことに留意し、
 国際連合総会が千九百八十一年を「完全参加と平等」をテーマとする国際障害者年と宣言したこと並びに包括的な障害者に関する世界行動計画が、社会生活及び発展への障害者の「完全参加」並びに「平等」という目標の実現のため国際的及び国内的に効果的な措置をとるためのものであることを考慮し、
 これらの進展の結果、すべての種類の障害者が雇用され、かつ、社会において統合されるようにするため、農村及び都市の双方においてこれらの障害者に対して機会及び待遇の均等を確保する必要性を特に勘案したこの問題に関する新たな国際基準を採択することが適当となったことを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である職業リハビリテーションに関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十三年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約と称することができる。)を千九百八十三年六月二十日に採択する。

第 一 部 定義及び適用範囲

第 一 条

1 この条約の適用上、「障害者」とは、正当に認定された身体的又は精神的障害のため、適当な職業に就き、これを継続し及びその職業において向上する見通しが相当に減少している者をいう。
2 この条約の適用上、加盟国は、職業リハビリテーションの目的が、障害者が適当な職業に就き、これを継続し及びその職業において向上することを可能にし、それにより障害者の社会における統合又は再統合の促進を図ることにあると認める。
3 加盟国は、この条約を、国内事情に適し、かつ、国内慣行に適合する措置によって適用する。
4 この条約は、すべての種類の障害者について適用する。

第 二 部 障害者のための職業リハビリテーション及び雇用に関する政策の原則

第 二 条

 加盟国は、国内事情及び国内慣行に従い、かつ、国内の可能性に応じて、障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する国の政策を策定し、実施し及び定期的に検討する。

第 三 条

 前条の政策は、すべての種類の障害者に対し職業リハビリテーションに関する適当な措置が利用できるようにすることを確保すること及び開かれた労働市場における障害者の雇用機会の増大を図ることを目的とする。

第 四 条

 第二条の政策は、障害者である労働者と他の労働者との間の機会均等の原則に基づくものとする。障害者である男女の労働者の間における機会及び待遇の均等は、尊重されなければならない。障害者である労働者と他の労働者との間の機会及び待遇の実効的な均等を図るための特別な積極的措置は、他の労働者を差別するものとみなしてはならない。

第 五 条

 代表的な使用者団体及び労働者団体は、第二条の政策の実施(職業リハビリテーションに関する活動に従事する公的機関と民間団体との間の協力及び調整を促進するためにとられる措置を含む。)に関して協議を受ける。また、代表的な障害者の及び障害者のための団体も、協議を受ける。

第 三 部 障害者のための職業リハビリテーション及び雇用に関する事業の発展のための国内的な措置

第 六 条

 加盟国は、法令又は国内事情及び国内慣行に適合するその他の方法により、第二条から前条までの規定を実施するために必要な手段をとる。

第 七 条

 権限のある機関は、障害者が職業に就き、これを継続し及びその職業において向上することを可能にするための職業指導、職業訓練、職業紹介及び雇用に関する事業その他関連の事業を実施し及び評価するための措置をとる。労働者全般のための現存の事業は、可能かつ適当な場合には、必要な調整を行った上活用する。

第 八 条

 農村及びへき地の社会における障害者のための職業リハビリテーション及び雇用に関する事業の確立及び発展を促進するための措置がとられるものとする。

第 九 条

 加盟国は、障害者の職業指導、職業訓練、職業紹介及び雇用に関する事業を担当するリハビリテーションのカウンセラーその他の適当な能力を有する職員を訓練すること並びにこれらの職員が利用されることを確保するよう努める。

第 四 部 最終規定

第 十 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 一 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 二 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 三 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 四 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 五 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 六 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十二条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 七 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。