1988年の雇用の促進及び失業に対する保護条約(第168号)

ILO条約 | 1988/06/21

雇用の促進及び失業に対する保護に関する条約(第168号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十八年六月一日にその第七十五回会期として会合し、
 労働及び生産的な雇用は、これらが、共同社会のために資源をつくるものであるのみならず、労働者に収入をもたらし、社会的役割を付与し及び労働者にそれらから自尊心の感情を引き出すものであるため、あらゆる社会において重要であることを強調し、
 雇用及び失業保護の分野における現在の国際基準(千九百三十四年の失業給付条約及び勧告、千九百三十五年の失業(年少者)勧告、千九百四十四年の所得保障勧告、千九百五十二年の社会保障(最低基準)条約、千九百六十四年の雇用政策条約及び勧告、千九百七十五年の人的資源開発条約及び勧告、千九百七十八年の労働行政条約及び勧告並びに千九百八十四年の雇用政策(補足規定)勧告)を想起し、
 すべての発展段階において全世界の各国に影響を及ぼしている広範な失業及び不完全就業、特に、多くの年少者が最初の就職先を求めているという年少者の問題を考慮し、
 前記の失業に対する保護に関する国際文書が採択された後多くの加盟国の法律及び慣行に重要な新しい発展があり、それは既存の基準、特に千九百三十四年の失業給付条約の改正並びにあらゆる適当な手段(社会保障を含む。)による完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択の促進に関する新しい国際基準の採択を必要としていることを考慮し、
 千九百五十二年の社会保障(最低基準)条約における失業給付に関する規定は、一定の保護水準を定めており、工業国における現行の補償制度のほとんどが現在当該水準を超えているが、他の給付と異なり一層高い基準が設定されていないこと、しかしながら、当該基準は、失業補償制度を設けることができる開発途上国にとっては、依然として目標となり得ることに留意し、
 安定的、持続的、かつ、インフレのない経済成長及び変化に対する柔軟な対応に導く政策並びに現在純然たる援助志向の活動のための財源措置に向けられている資源を雇用促進のための活動、特に、職業指導、職業訓練及び職業リハビリテーションに再配分してまでも小企業、協同組合、自営業、地方主導型雇用対策を含むあらゆる形態の生産的な雇用及び職業の自由な選択の創出及び促進に導く政策は、非自発的な失業の悪影響に対して最善の保護を提供すること、他方、それにもかかわらず非自発的な失業が存在していること、したがって、社会保障制度により非自発的な失業者に対して雇用のための援助及び経済的支援を確保することが重要であることを認め、
 特に千九百三十四年の失業給付条約の改正を目的とし、前記の会期の議事日程の第五議題である雇用の促進及び社会保障に関する提案を採択することを決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百八十八年の雇用の促進及び失業に対する保護条約と称することができる。)を千九百八十八年六月二十一日に採択する。

第 一 部 一般規定

第 一 条

 この条約において、
 (a) 「法令」とは、法律、命令及び社会保障に関する規則をいう。
 (b) 「所定の」とは、国内法令により又はこれに基づいて定められていることをいう。

第 二 条

 加盟国は、失業に対する自国の保護制度及び雇用政策を調整するため適当な措置をとる。加盟国は、この目的のため、失業に対する自国の保護制度、特に失業給付の支給方法が完全雇用、生産的雇用及び職業の自由な選択の促進に寄与し、使用者が生産的雇用を提供し及び労働者が生産的雇用を求めることを妨げるようなものでないことを確保するように努める。

第 三 条

 この条約は、国内慣行に従い、使用者団体及び労働者団体と協議し及び協力して実施する。

第 四 条

1 この条約を批准する加盟国は、その批准に際して付する宣言によって、批准により受諾する義務から第七部の規定を除外することができる。
2 1の規定に基づく宣言を行った加盟国は、その後の宣言によって、いつでもその宣言を撤回することができる。

第 五 条

1 加盟国は、その批准に際して付する宣言により、第十条4、第十一条3、第十五条2、第十八条2、第十九条4、第二十三条2、第二十四条2及び第二十五条2に規定する暫定的な例外規定のうち二の規定までを援用することができる。当該宣言には、当該例外規定を正当なものとする理由を述べる。
2 1の規定にかかわらず、加盟国は、自国の社会保障制度の保護の程度によって正当とされる場合には、その批准に際して付する宣言により、第十条4、第十一条3、第十五条2、第十八条2、第十九条4、第二十三条2、第二十四条2及び第二十五条2に規定する暫定的な例外規定を援用することができる。当該宣言には、当該例外規定を正当なものとする理由を述べる。
3 1又は2の規定に基づく宣言を行った加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づいて提出するこの条約の適用に関する報告において、自国が援用しているそれぞれの例外規定について次のいずれかのことを述べる。
 (a) 当該例外規定を援用する理由が引き続き存在していること。
 (b) 当該例外規定を一定の日以後は援用しないこと。
4 1又は2の規定に基づく宣言を行った加盟国は、当該宣言の条件に照らして適当であり、かつ、事情が許すときは、
 (a) 部分失業を保護事由とする。
 (b) 保護対象者の数を増加させる。
 (c) 給付額を増加させる。
 (d) 待期期間を短縮する。
 (e) 給付の支給期間を延長する。
 (f) 法定の社会保障制度をパートタイム労働者の職業事情に適合させる。
 (g) 失業給付の受給者及びその被扶養者に対する医療給付を確保するように努める。
 (h) 社会保障給付に対する権利の取得のため並びに、適当な場合には、障害給付、老齢給付及び遺族給付の計算のために当該給付の支給期間が考慮されることを保証するように努める。

第 六 条

1 加盟国は、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的系統、国籍、民族的若しくは社会的出身、障害又は年齢に基づく差別なく、すべての保護対象者の均等待遇を確保する。
2 1の規定は、第十二条2に規定する制度において認定される集団の事情により正当と認められる特別措置若しくは労働市場において特別な問題を有する種類の者、特に不利な立場にある集団の特別の必要を満たすことを目的とする特別措置の採用又は相互主義に基づく失業給付に関する二国間若しくは多国間の協定の締結を妨げない。

第 二 部 生産的雇用の促進

第 七 条

 加盟国は、優先度の高い目的として、完全雇用、生産的雇用及び職業の自由な選択をあらゆる適当な方法(社会保障を含む。)によって促進するための政策を宣言する。そのような方法には、特に、職業紹介サービス、職業訓練及び職業指導を含むべきである。

第 八 条

1 加盟国は、国内の法律及び慣行に従い、女子、年少労働者、障害者、高齢労働者、長期失業者、当該国に適法に居住する移民労働者、構造的変化の影響を受けた労働者等一定の種類の不利な立場にある労働者であって永続的な雇用を見いだす際に困難を有するもの又は有するおそれのあるもののために新たな職業機会及び雇用援助を促進し並びに自由に選択される生産的雇用を奨励するための特別な計画を策定するように努める。
2 加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づく報告において自国が促進しようとする雇用計画の対象となる種類の者を明示する。
3 加盟国は、生産的雇用の促進を、当初対象とした種類の数よりも多くの種類に漸進的に拡大するように努める。

第 九 条

 この部に規定する措置は、千九百七十五年の人的資源開発条約及び勧告並びに千九百八十四年の雇用政策(補足規定)勧告を考慮してとられる。

第 三 部 保護事由

第 十 条

1 保護事由には、所定の条件に従い、労働能力を有し、就労することができる状態にあり、かつ、実際に仕事を求めている者の場合には、第二十一条2の規定に十分に考慮を払い、適切な職業に就くことができないことによる勤労所得の喪失として定義される完全失業を含む。
2 加盟国は、所定の条件に従い、この条約の保護を、特に経済的、技術的、若しくは構造的性格又はこれらに類似する性格の理由による雇用関係のいかなる中断も伴わない次の事由に拡大するように努める。
 (a) 正規の又は法定の労働時間の一時的短縮として定義される部分的失業による勤労所得の喪失
 (b) 労働の一時的な停止による勤労所得の停止又は減少
3 加盟国は、更に、実際にフルタイムの仕事を求めているパートタイム労働者に給付を支払うように努める。給付とそのパートタイムの仕事からの勤労所得との合計は、フルタイムの仕事に就く意欲を維持するようなものとすることができる。
4 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、2及び3の規定の実施を延期することができる。

第 四 部 保護対象者

第 十 一 条

1 保護対象者には、すべての被用者(公的被用者及び徒弟を含む。)の八十五パーセントを下回らない所定の種類の被用者を含む。
2 1の規定にかかわらず、正規の退職年齢までの雇用が国内の法律又は命令によって保証されている公的被用者は、保護対象者から除外することができる。
3 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、保護対象者は、次のいずれかの者とする。
 (a) すべての被用者の五十パーセントを下回らない所定の種類の被用者
 (b) 発展の水準により特に正当化される場合には、二十人以上の者を雇用する職場におけるすべての被用者の五十パーセントを下回らない所定の種類の被用者

第 五 部 保護の方法

第 十 二 条

1 加盟国は、この条約に別段の定めがない限り、この条約を実施するための保護の方法、すなわち、拠出制度、非拠出制度又は両制度の組合せのいずれによるかを決定することができる。
2 加盟国の法令が給付事由がある期間中に収入が所定の限度を超えないすべての居住者を保護する場合には、与えられる保護は、第十六条の規定に従い、受給者及びその家族の収入を勘案して制限することができる。

第 六 部 給付内容

第 十 三 条

 失業者に対し定期金の形で支給される給付は、保護の方法と関連させることができる。

第 十 四 条

 給付は、完全失業の場合には、受給者に部分的及び過渡的に賃金に代わるものを支給する方法であり、かつ、労働又は雇用の創出の支障とならないような方法で計算される定期金の形で支給する。

第 十 五 条

1 給付は、完全失業の場合及び雇用関係の中断を伴わない労働の一時的な停止による勤労所得の停止が給付事由とされている場合には、次の方法により計算される定期金の形で支給する。
 (a) 当該給付は、保護対象者の拠出金若しくは保護対象者のための拠出金又は従前の勤労所得を基礎とする場合には、従前の勤労所得の五十パーセントを下回らない額に定める。ただし、給付額の又は考慮される勤労所得の最高限度を定めることができるものとし、例えば、この最高限度は、熟練労働者の賃金、関係地域の労働者の平均賃金等と関連させることができる。
 (b) 当該給付は、拠出金又は従前の勤労所得を基礎としない場合には、法定最低賃金若しくは普通の労働者の賃金の五十パーセントを下回らない額又は基礎的生活費のために必要な最低額を支給する水準のうちの最も高い額に定める。
2 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、給付総額は、次のいずれかの額に等しいものとする。
 (a) 従前の勤労所得の四十五パーセントを下回らない額
 (b) 法定最低賃金又は普通労働者の賃金の四十五パーセントを下回らず、かつ、基礎的生活費のために必要な最低額を支給する水準を下回らない額
3 適当な場合には、1及び2に規定する百分率は、租税及び拠出金を控除した定期金の純額と租税及び拠出金を控除した勤労所得の純額を比較することにより得られるものとすることができる。

第 十 六 条

 前条の規定にかかわらず、第十九条2(a)に規定する初期支給期間を超えて支給する給付及び第十二条2の規定に従って加盟国が支給する給付は、所定の基準に従い受給者及びその家族の所定の限度を超える他の収入を考慮して定めることができる。いずれの場合にも、当該給付は、受給者及びその家族に与えられる他の給付と合わせて、国内基準に従って健康的かつ合理的生活条件を保証する。

第 十 七 条

1 加盟国の法令が失業給付を受ける権利について資格期間の満了を条件とする場合には、当該期間は、濫用を防ぐために必要と認められる期間を超えてはならない。
2 加盟国は、この資格期間を季節労働者の職業上の事情に適合させるように努める。

第 十 八 条

1 加盟国の法令が完全失業の場合の給付支給を待期期間の満了後にのみ開始すべきであると定めている場合には、当該待期期間は、七日を超えてはならない。
2 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、待期期間の長さは、十日を超えてはならない。
3 季節労働者の場合には、1の待期期間は、その職業上の事情に適合させることができる。

第 十 九 条

1 完全失業の場合及び雇用関係の中断を伴わない労働の一時的停止による勤労所得の停止の場合に支給される給付は、これらの事由が存在する期間を通じて支払われる。
2 もっとも、完全失業の場合には、
 (a) 第十五条に規定する給付の初期支給期間は、各失業期間において二十六週又は任意の二十四箇月のうちの三十九週に限ることができる。
 (b) 初期支給期間を超えて継続する失業の場合には、第十六条の規定に基づいて受給者及びその家族の及びその家族の収入を勘案して計算することのできる給付の支給期間は、所定の期間に限ることができる。
3 加盟国の法令が第十五条に規定する給付の初期支給期間を資格期間の長さにより異なると定めている場合には、給付の支給について定める平均期間は、少なくとも二十六週とする。
4 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、給付の支給期間は、任意の十二箇月のうちの十三週又は、加盟国の法令が資格期間の長さにより異なると定めているときは、平均十三週に限ることができる。
5 2(b)に規定する場合には、加盟国は、生産的かつ自由に選択される職業を見いださせるという観点から、当該者に対し、特に第二部に規定する措置により適切な追加的援助を与えるように努める。
6 季節労働者に対する給付の支給期間は、2(b)の規定の適用を妨げることなく、当該者の職業上の事情に適合させることができる。

第 二 十 条

 完全失業若しくは部分失業又は雇用関係の中断を伴わない労働の一時的停止による勤労所得の停止の場合に保護対象者が受給する資格のある給付は、次の期間又は場合には、所定の範囲内において拒否し、撤回し、停止し又は減額することができる。
 (a) その者が当該加盟国の領域内にいない期間
 (b) その者が自己の責めに帰すべき理由により解雇されたと権限のある機関が決定した場合
 (c) その者が正当な理由なく自発的に離職したと権限のある機関が決定した場合
 (d) その者が労働争議に参加するため作業を中止したとき又は当該労働争議による作業の中止の直接の結果として働くことを妨げられるときは、労働争議の期間
 (e) その者が不正に給付を受けようとし又は受けた場合
 (f) その者が職業紹介、職業指導、訓練、再訓練又は適切な仕事への再配置のために利用し得る便宜を正当な理由なく利用しなかった場合
 (g) その者が当該加盟国の法令に定める収入維持のための他の給付(家族給付を除く。)を受給している期間。ただし、給付の停止される部分が当該他の給付を超えないことを条件とする。

第 二 十 一 条

1 完全失業の場合に保護対象者が受給する資格のある給付は、保護対象者が適切な雇用を受け入れない場合には、所定の範囲内において拒否し、撤回し、停止し又は減額することができる。
2 雇用の適切さを評価するに当たっては、特に、所定の条件に従い、かつ、適当な範囲内で、失業者の年齢、従前の職業の勤務の長さ、取得した経験、失業期間の長さ、労働市場の状況、当該雇用が本人及びその家族の状況に与える影響並びに進行中の労働争議による作業の中止の直接的な結果として欠員となっている雇用であるかどうかについて考慮する。

第 二 十 二 条

 保護対象者が、国内の法律若しくは命令又は労働協約に基づき、使用者から直接に又はその他の支給源から完全失業の場合に被る勤労所得の喪失の補償に貢献することを主目的とする離職手当を受ける場合には、加盟国の決定に従い、次のいずれかのことを行うことができる。
 (a) その者が受給する資格のある失業給付を、当該離職手当が勤労所得の喪失を補償する期間に相当する期間中停止すること。
 (b) 当該離職手当が勤労所得の喪失を補償する期間に相当する期間中当該者が受給する資格のある失業給付を一時金に換算した価値に相当する金額だけ、当該離職手当を減額すること。

第 二 十 三 条

1 加盟国は、自国の法令が医療を受ける権利を定め、かつ、職業活動をその直接的又は間接的条件としている場合には、所定の条件に従い、失業給付を受ける者及びその被扶養者への医療給付を確保するように努める。
2 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、1の規定の実施を延期することができる。

第 二 十 四 条

1 加盟国は、自国の法令が(a)及び(b)に規定する給付を定め、かつ、職業活動をその直接的又は間接的な条件としている場合には、失業給付の受給者に対し、所定の条件に従い、給付が支給される期間が次の事項について考慮されることを保証するように努める。
 (a) 障害給付、老齢給付及び遺族給付を受ける権利の取得並びに適当な場合にはその計算
 (b) 失業の終了後における医療給付、疾病給付、出産給付及び家族給付を受ける権利の取得
2 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、1の規定の実施を延期することができる。

第 二 十 五 条

1 加盟国は、パートタイム労働者の労働時間又は賃金が所定の条件に従って無視し得るものと認められない限り、職業活動を基礎とする法定社会保障制度をパートタイム労働者の職業上の事情に適合させることを確保する。
2 第五条の規定に基づいて行われる宣言が有効である場合には、1の規定の実施を延期することができる。

第 七 部 新規求職者のための特別規定

第 二 十 六 条

1 加盟国は、失業者と認められたことがない者若しくはその失業者と認められなくなった者又は失業者保護制度の対象となったことがない者若しくは失業者保護制度の対象とならなくなった者で、職を求めている多くの種類のものがいるという事実を考慮する。したがって、次の十種類の求職者のうち少なくとも三種類の求職者は、所定の期間及び条件に従って社会保障給付を受けるものとする。
 (a) 職業訓練を終了した年少者
 (b) 学業を終了した年少者
 (c) 兵役の義務を終了した年少者
 (d) 子供の養育又は病人、障害者若しくは高年齢者の看護に専念した期間を終えた者
 (e) 配偶者が死亡した者で遺族給付の受給資格のない者
 (f) 離婚者又は別居者
 (g) 釈放された囚人
 (h) 訓練期間を終了した成人(障害者を含む。)
 (i) 最後に働いた国の法令に基づいて権利を取得している場合を除くほか、母国へ帰還する移民労働者
 (j) 以前に自営していた者
2 加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づいて行う報告において、保護することを約束する1に掲げる種類の者を明示する。
3 加盟国は、当初に保護することを約束した者の種類の数よりも多くの種類の者に保護を漸進的に拡大するように努める。

第 八 部 法的、行政的及び財政的保証

第 二 十 七 条

1 請求者は、給付の拒否、撤回、停止若しくは減額又は給付額に関する紛争の際に、給付制度の管理機関に不服を申し立てる権利及びその後に独立の機関に上訴する権利を有する。請求者は、利用可能な手続について書面により知らされるものとし、その手続は、簡易かつ迅速なものとする。
2 1の上訴手続は、請求者が、国内の法律及び慣行に従って、自己の選択する資格のある者、代表的労働者団体の代理人又は保護対象者を代表する団体の代理人によって代理され又は援助されることを可能とする。

第 二 十 八 条

 加盟国は、この条約の適用をゆだねられる団体及び事業の健全な管理について一般的責任を負う。

第 二 十 九 条

1 議会に対して責任を負う官庁によって管理が直接行われている場合には、保護対象者及び使用者の代表者は、所定の条件に従い、助言を与える資格でこれに参与する。
2 議会に対して責任を負う官庁によって管理が行われていない場合には、
 (a) 保護対象者の代表者は、所定の条件に従って、管理に参加し、又は助言を与える資格でこれに参与する。
 (b) 国内の法律又は命令は、また、使用者の代表者の参加を定めることができる。
 (c) 国内の法律又は命令は、更に、公の機関の代表者の参加を定めることができる。

第 三 十 条

 雇用を保護するために国又は社会保障制度によって補助金が交付される場合には、加盟国は、当該補助金が予定された目的のためにのみ使用されることを確保し、及び当該補助金を受ける者による詐取又は悪用を防ぐため必要な措置をとる。

第 三 十 一 条

 この条約は、千九百三十四年の失業給付条約を改正するものである。

第 三 十 二 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 三 十 三 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 三 十 四 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 三 十 五 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 三 十 六 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 三 十 七 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 三 十 八 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第三十四条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 三 十 九 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。