基準設定に関する理事会の方針

ILOが条約の採択という基準設定活動を開始してからすでに90年が経過し、採択された条約も189と膨大なものになっています。そこで当然、以前にできたもので今日の現状と乖離してしまったものや基準の引き上げが必要なものが出てきます。このため、理事会は、常に一定の間隔をおいて、各条約の改正の必要性について検討を行っています。このようにして、今日までに多くの改正条約ができ、また条約の一部を改正する、あるいは新たな規定を追加する付属議定書が採択されました。

1987年の第235回ILO理事会は、基準設定活動に関する今後の方針を決定しました。この方針では、①批准・適用を優先的に促進すべき文書(条約と勧告)、②改正すべき文書、③その他の文書、④新たな基準設定が考えられる主題、の4つに分類することになりました。

1995年から2002年にかけて、1985年以前に採択されたすべての条約・勧告について、中核的労働基準と呼ばれる8基本条約(注1)及び優先条約(注2)を除き、改正の必要があるかについて、検討が行われました。71条約が前記①に分類され(その後採択された条約も含めると76)、現状に適合する最新もので、優先的に批准を促進すべきものとされました。それ以外は改正すべき文書、時代に合わなくなった文書、更なる情報提供が必要とされる文書などに分類されました。なお、時代に合わなくなった文書に分類されたもののうち、すでに撤回(withdraw、後述)された5条約を除く24条約は、「お蔵入りした(shelved) 条約」として批准促進、文書での言及、ILOへの報告提出などの対象ではなくなります。

(注1)
  • 第29号 強制労働条約(1930年)
  • 第87号 結社の自由及び団結権保護条約(1948年)
  • 第98号  団結権及び団体交渉権条約(1949年)
  • 第100号 同一報酬条約(1951年)
  • 第105号 強制労働廃止条約(1957年)
  • 第111号 差別待遇(雇用及び職業)条約(1958年)
  • 第138号 最低年齢条約(1973年)
  • 第182号 最悪の形態の児童労働条約(1999年)
(注2)
  • 第81号 労働監督(1947年)
  • 第129号 労働監督(農業)(1969年)
  • 第144号 三者の間の協議(国際労働基準)(1976年)
  • 第122号 雇用政策(1964年)