「ビジネスと人権」 新刊紹介

労働における企業の社会的責任 政策を提言

ニュース記事 | 2022/12/01
ILO駐日事務所は12月1日、労働に関する「企業の社会的責任」と「責任ある企業行動」についての政策提言をまとめた報告書を公開しました。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも企業に労働者の権利を含む人権尊重が求められる中、政策立案に携わる関係者と企業に理解を深めてもらい、実務に生かしてもらうのが狙いです。

報告書は「労働に関する企業の社会的責任(労働CSR/RBC)の実現に向けた政策提言 ビジネスと人権の視点からみた日本のあるべき国家政策とは」(大阪経済法科大学・菅原絵美、 ILO駐日事務所・田中竜介の共著)。国際規範の成り立ち、さまざまなステークホルダーによる取り組みとその発展を軸に構成されています。

特に「ビジネスと人権」の考え方を形づくった2011年の国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(国連指導原則)をはじめ、OECD(経済協力開発機構)の多国籍企業行動指針、ILO多国籍企業宣言国連の持続可能な開発目標(SDGs)の4文書の役割を強調し、政府に実践のための政策設定を促すとともに、サプライチェーン上の労働者の権利保護など企業の人権尊重責任の性質を踏まえ、企業の取り組みを促進できるような具体的な政策を提言。政府が国際規範に沿い、グローバル経済と社会を持続可能なものにするための政策理念(ビジョン)を示すことが喫緊の課題だと述べています。

ビジネスと人権をめぐる日本政府の動きとしては、国連指導原則の下で2020年に「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)を、今年9月には企業の人権尊重の取り組みを推進する「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。著者は「この報告書を通じて政府や企業が労働における企業の社会的責任への理解をいっそう深め、政策の議論に役立ててもらえれば」と話しています。

この報告書は「アジアにおける責任あるサプライチェーンプログラム」において、 欧州連合(EU)の資金を活用し、作成されたものです。