ILO新刊報告書

社会的保護、人口の半数以上利用できず アジア太平洋

記者発表 | 2022/08/30
ILOは30日、社会的保護についての報告書「The World Social Protection Report 2020–22: Regional companion report for Asia and the Pacific」を発表しました。社会的保護にアクセスできる人はアジア太平洋地域の人口の半分以下にとどまり、社会的保護分野の公的支出も世界平均を大きく 下回っていることがわかりました。アジア太平洋地域の大部分で大きな進展があったものの、世界の他の地域に比べて社会保護政策は遅れている、としています。

報告書によると、アジア太平洋地域の社会的保護分野の公的支出が各国GDPに占める割合は、過去2年間で平均7.5%で、半数の国は2.6%に満たず、世界平均の12.9%を大きく下回っていることがわかりました。少なくとも1つの社会的保護制度を利用できている人は同地域の人口のわずか44.1%で、具体的には、産前産後休業(産休)を取得する女性は45.9%、失業給付を取得する人は14%でした。

拠出型社会保障制度は通常、フォーマル経済(公式経済)で働く人々に限られ、非拠出型の制度は社会の最貧困層の小さなグループを対象としています。大規模かつ重要な労働者集団が保護されないまま放置されており、この中間の層、いわゆる「ミッシングミドル」には多くの女性、移民労働者、自営業者、零細・小企業の労働者、家事労働者、家内労働者、寄与的家族従業者が含まれています。

報告書は、格差だけでなく、社会保障制度への資金や投資が相対的に低いために適切な保護を提供できないことが多いのも問題だと指摘しています。ILO社会保護担当上級専門官の Nuno Meira Simoes da Cunha は、「アジア太平洋地域の社会的保護の課題は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行にとどまらず、高齢化、移民、都市化、技術進歩、災害、気候変動などの動向にも対応しながら取り組む必要がある」と述べています。

以上はバンコク発英文記者発表の抄訳です。