「ディーセント・ワークと社会的連帯経済(SSE)」事務局報告書

本報告書は、第110回ILO総会のディーセントワークとSSE委員会での一般討議における論点を提供するとともに、その叩き台となります。

ニュース記事 | 2022/04/28
2021年3月、第341回理事会は、ディーセント・ワークと社会的連帯経済(SSE)を第110回国際労働総会(2022年)の議題とし、一般討議に付すことを決定しました。この一般討議は、ILOにおけるSSEの初めての包括的な議論であり、国連システムのハイレベルでSSEの発展の可能性について話しあう初の機会になります。

ILO加盟国政府・労働・使用者団体の三者、SSEパートナーとの議論に先駆けて作成された報告書は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、イタリア語、日本語で提供されています。ヒンディー語、インドネシア語、モンゴル語、ポルトガル語、タガログ語、トルコ語の翻訳版も近日公表されます。

SSEは新しい概念ではありませんが、今世紀に入ってから、その政策的重要性と注目度が著しく高まっています。世界的なCOVID-19のパンデミック下で、SSEは、そのメンバー、ユーザー、コミュニティーに雇用を創出・維持し、サービスを供給するという役割を通して注目されるようになりました 。

新しいビジネスのあり方を求める声が高まる中、SSEは、包括性、持続可能性、強靭性を育む事業体(企業)モデルの基礎を提供することができます  。SSEの重要性が注目を集める中、その定義、測定方法、規模、影響、限界そして可能性については、さらなる検証が求められています。


一般討議の期待される成果は、ILOにさらなる指針を与える結論と決議です。期待される成果は、以下のとおりです。
  • 関連する原則と価値を含め、「社会的連帯経済」という用語の普遍的な定義を提供すること。
  • ディーセント・ワークと、労働生活を通して人々が直面するその時々の課題(transitions)に対する総合的な支援の管理・促進へのSSEの貢献度を評価すること。
  • 国内SSEのための環境整備を希望する加盟国への政策ガイドラインを提供すること。
  • 開発協力を通じてなど、SSEの世界的な推進に関与する方法についてのガイダンスを事務局に提供すること。
  • SSEを代表するまたはSSEの推進に関わる機構、組織、機関と幅広いパートナーシップを確立し、維持するよう事務局に奨励すること 。
本報告書は、以下の5章で構成されています。
  • 第1章では、世界のSSEの輪郭を描き、その概念の構成要素を詳しく説明し、議論のための定義を提案します。また、SSEの地域的な概要も示しています。
  • 第2章では、ディーセント・ワーク・アジェンダ、そしてより広く「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定義されたグローバルな開発の優先事項に対するSSEの貢献を明らかにします。
  • 第3章では、ILOの政労使(三者)の構成員とSSEの関係について、世界各国の事例を基に考察しています。
  • 第4章では、歴史的背景、現在のプログラム、開発協力政策とパートナーシップ、能力開発活動に特に重点を置きながら、SSEに関する事務局の活動を説明しています。
  • 第5章では、ディーセント・ワークと持続可能な開発に対するSSEの貢献度を高めるという観点から、今後の方向性について議論しています。SSEに資する環境を促進させることの重要性を強調し、SSEと仕事の未来との関連性を論じ、SSEに関する今後の事務局の取り組みの道筋を提案しています 。
世界187カ国から政労使三者の代表が参加するILO総会の一般討議は、2022年5月30日から6月11日の間に行われます。

社会的連帯経済について採択された政策と法律は、ILOの労働・社会保障・関連人権法令のNATLEXデータベースでもご覧いただけます。

また本報告書のプレゼンテーション(パワーポイント)はこちらから閲覧可能です。

地域別の報告書についてのプレゼンテーションは、こちらから閲覧可能です。
アフリカ(英語フランス語), アジア太平洋地域(英語), 米州大陸(英語スペイン語), アラブ諸国(英語), 欧州・中央アジア(英語

普遍的社会的保護に向けた社会的連帯的経済組織の推進」についてのILO概説は、社会的保護局と企業局協同組合ユニットが共同で執筆しました。

概説は、2022年の第110回ILO総会に向け作成された事務局報告書「ディーセントワークと社会的連帯経済」の関連する章に基づき議論を展開しています。

英語記事オリジナルはこちら