2006年の海上の労働に関する条約

海上の労働に関する条約 批准100カ国に

記者発表 | 2022/04/12
2006年の海上の労働に関する条約(MLC, 2006)の批准が100カ国に達したことを記念して、ジュネーブのILO本部で式典が開催されました。

100カ国が批准したことによって、世界中の船舶の総トン数のうち96%以上がこの国際基準でカバーされ、世界の船員の労働を供給する国のほぼ全てにも適用されることになります。

オマーンは、100カ国目にこの条約を批准したILO加盟国となり、同国のイドリス・アブドゥル・ラーマン・アル・カンジャリ大使は3月29日、批准書を正式に提出しました。

同大使は、「この条約への加入で地域の優れた海洋国家としてのオマーンの長年の伝統があらためて明確になりました。船員のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向け、条約の支持という我が国の責務も再確認されました。私たちは船員の労働権の保護に尽力していきます」と述べました。

批准書を受け取ったILO事務局長のガイ・ライダーは、この批准を画期的な出来事であると評し、「2006年の海上の労働に関する条約の100カ国目の批准を歓迎します。長年にわたる海洋国家であるオマーンが地域の他の国々に道を示したことは大きな喜びです。オマーンは湾岸協力会議のメンバーとして初めて、船員のディーセント・ワークと船主の公正な競争を確保するための世界的な取り組みに参加することになりました。この批准は世界的な節目であり、『70の条約と勧告を統合したILO条約を』と願った船員や船主、各国政府の勇気を称えるものです。2006年以来、この条約は海事産業の世界的な基準であり、国際海事体制の4本目の柱となっています」と話しました。

かつて業界にあった労働基準は、現代の労働・生活条件をもはや反映していない、批准率が低い、施行・遵守体制が不十分である、などの課題がありました。2006年2月に採択された海上の労働に関する条約はこれらの非常に細かい規定を一つにまとめたことで、世界規模の、一貫した業界の規範や基準によって規制・取り締まりができるようになりました。

国際運輸労連のスティーブン・コットン書記長も「オマーンが海事労働条約を批准したことを歓迎します」と表明。「この条約を採択した最初の湾岸諸国として、オマーンは自国の船員だけでなく、同国に寄港し、戦略上重要な海域を航行する船員も、この条約の下で保護できるようになります。海上の労働に関する条約は現在、世界の船団の96%以上をカバーしています。世界の船員の10人のうち9人の権利や賃金、労働条件を守り、さらにグローバル・サプライチェーンの信頼性も守ることができます」と述べました。

国際海運会議所のガイ・プラッテン事務局長も批准の重要性を強調。「批准国100カ国の達成は、重要な節目です。我々は新型コロナウイルス感染症拡大やその影響で船員交代ができない、といった危機を経験したばかりです。条約を批准した政府は、船員の権利を守るために、自らの言葉を守り、行動を起こさなければなりません。この条約は、国際海事機関の3つの柱であるSOLAS(1974年の海上における人命の安全のための国際条約)、STCW(1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)、MARPOL(1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約)と並ぶもので、より多くの政府の批准が今まで以上に重要です。この条約の批准国が早期に150カ国に達することを望みます」と話しました。

以上はジュネーブ発英文プレスリリースの日本語訳です。