航空産業
航空産業におけるディーセント・ワークを強化する新たな協定をICAOと締結
ILOと国際民間航空機関(ICAO)は1953年に合同航空委員会設置の可能性に関する覚書を締結していますが、この度、これを更新する形で、航空産業におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の前進を図り、新型コロナウイルスの世界的大流行からの人間を中心に据えたこの産業の回復を奨励することを目指して新たな協定を締結しました。
両機関の協力拡充の要望は既に2013年に開かれた「民間航空産業に対する世界経済危機の影響グローバル対話フォーラム」でILO加盟国政労使から表明されていましたが、新型コロナウイルスの世界的大流行が他の多くの産業よりも航空産業に大きな打撃を及ぼしている中で、協力緊密化の必要性が増していました。
今回の合意は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の諸目標、とりわけ航空産業における女性の推進、この産業部門におけるデータ収集、持続可能なディーセント・ワークに関連した諸目標の達成に寄与することが期待されます。さらに、調査研究や技術会議、諮問業務、訓練、指針やツール、方法論の開発などの一連の共同活動をもたらすことも考えられます。
ILOは2022/23事業年度に民間航空部門の環境に優しいグリーンで持続可能かつ包摂的な経済回復に関する技術会議の開催を予定していますが、相互代表の条項に基づき、ILOとICAOはそれぞれのルールに従い、相互に他方機関の代表を会議に招請します。共通の関心事項及び利害事項に関して定期的な意見交換を行う協議手続きも発動します。協定の期間は5年ですが、更新可能になっています。
ILOを代表して協定書に署名したガイ・ライダー事務局長は、「コロナ禍が航空部門の労働者の権利に対して引き起こした深刻な課題に鑑みると、今回の協定締結は非常に時宜を得たもの」と評価した上で、「コロナ禍の影響と戦い、この産業部門に社会的に持続可能な回復とディーセント・ワークを築くために、ICAOの皆さんと協働することを楽しみにしています」と期待を表明しました。
ICAOを代表して協定書に署名したサルバトーレ・シャキターノ理事会議長は、「今回のILOとの合意書の締結は、持続可能な開発に対する航空産業の貢献を高めることを支えるものとして国連諸機関と新たなパートナーシップを築き、女性の権利促進に向けた強く決然としたリーダーシップと公約を示すことを求める、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの持続可能な開発目標(SDGs)と男女平等に関するICAO総会の決議に応えるもの」と説明しました。
国際民間航空についての国家間のグローバルな話し合いの場となることを使命として設立されたICAOは現在、日本を含む193の加盟国を擁し、航空安全、運航の能力と効率性、保安と円滑化、経済開発、環境保護の五つの包括的な戦略目標を掲げています。政策・基準の策定、その遵守監査、研究・分析、支援提供、その他数多くの活動と加盟国及び利害関係者との協力を通じて航空能力の構築を図っています。中心的な機関として、総会と理事会が設けられています。
以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。