ILO/日本開発協力事業

ILOと日本がミンダナオで五つの水道システムを新設

 日本政府の任意資金協力を受けてILOがフィリピンのバンサモロ地域で進めている水道整備事業の下、地域住民、先住民、元戦闘員の手によって新たに構築された五つの水道システムは3,000世帯以上に安全できれいな水を届けることになります。

記者発表 | 2022/03/17
ラナオ・デル・スル州バラバガン市に新設された水道システムの受益者は近隣共同体を含み数千世帯に上ります。© ILO

 ILOは日本政府の任意資金協力を受けて2019年からフィリピンのバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)で給水・下水サービスの改善を通じて和平を促進し、働きがいのある人間らしい仕事を創出しています。この度、2022年3月9日にラナオ・デル・スル州、10日にマギンダナオ州、15日にコタバト州バンサモロ特別地理区のそれぞれで、新設された水道を住民に引き渡す式典が行われ、計五つの水道システムを通じて3,000世帯以上が安全できれいな水を得られるようになりました。

 フィリピンの全国平均よりも安全な水が得られる確率が低いバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域で実施されているこの「ミンダナオにおける和平の確立のための水道設備管理能力向上計画(上下水道プロジェクト)」の下、先住民や旧戦闘員も含む地域住民が水道工事に携わっています。

地域住民、元戦闘員、先住民の人々が工事に携わったILOと日本の協力による上下水道プロジェクトの水道システム引き渡し式典。© ILO

 ラナオ・デル・スル州バラバガン市では269人の労働者が工事に携わって完成した三つの新しい水道システムの受益者は五つのバランガイ(最少行政単位)の2,000世帯以上に上ります。様々な文化が入り交じるバラバガン市に住むマラノオの人々や入植者、先住民らは200リットル入りドラム缶1個当たり2ドルで飲料水を購入していました。

 コタバト州カバカン市ナンガアン・バランガイのモロ民族解放戦線(MNLF)コミュニティーでは、292人の生徒が通う学校と1,000世帯以上に安全できれいな水が届けられます。水道工事には、旧戦闘員が大半を占める約57人の地元住民が携わりました。この第2等級水道システムには安全できれいな水が出る22基の立水栓が設けられています。

 マギンダナオ州ダトゥピアン市の歴史的なバランガイであるレイナ・レジェンテのモロ・イスラム解放戦線(MILF)コミュニティーでは、82人の住民がアクセスと安全保障の障害を乗り越えて構築した水道システムの受益者は95世帯に上ります。プロジェクトに従事した地元労働者の約34%を女性、32%を元戦闘員が占めています。

今は学校を含む数千世帯に安全できれいな水が届けられています。© ILO

 ILOの実施パートナーであるア・シングル・ドロップ・フォー・セーフ・ウオーター社の支援を受けて労働者には技能開発と水道工事の研修が提供されました。労働者には最低賃金が確保され、社会的保護給付も支給されました。プロジェクトではさらに、新型コロナウイルスにも対応した労働安全衛生手順を守ることによって安全と健康も確保されました。問題が発生した場合には社会対話を通じて解決が図られました。機会の平等も促進され、実施のあらゆる段階で地元社会の関与が確保されました。

 三つの州で実施された計五つの水道システムの引き渡し式典には、バンサモロ暫定自治政府(BTA)議会のロメオ・セマ議員やMNLF議長でもあるムスリミン・セマ労働・雇用大臣などの自治政府関係者その他地元政府の主要職員も出席しました。

 引き渡し式典におけるメッセージで、ILOフィリピン国別事務所のカリド・ハッサン所長は、「このプロジェクトは平和構築、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進、貧困削減に寄与しており、元戦闘員や先住民、脆弱な集団を含む地域社会の人々に、より良い労働条件と社会的保護給付を伴うディーセント・ワークと生計手段の機会が開かれました。これらは、持続可能な開発及び新型コロナウイルスからの人間を中心に据えた回復に不可欠な要素です」と語っています。

 越川和彦駐フィリピン特命全権大使も「食、水、住まい、生計手段は人間の安全保障を達成する前提条件の一部です。こういった基本的な必要に対するより良いアクセスを確保することによって、私たちは人々が自らの潜在力を発揮し、やがては社会の発展に寄与する力を付与しています。これが、日本が強く主唱する人間の安全保障の原則なのです」と説いています。

ILOと日本の協力による上下水道プロジェクトの下で新設された五つの水道システムは、ラナオ・デル・スル州、マギンダナオ州、コタバト州バンサモロ特別地理区(SGA)の3,000世帯以上に安全できれいな水を届けます。© ILO

お問い合わせ先:
ILO/日本上下水道(WatSan)プロジェクト(コタバト市)
マ・ジェニリン・アギナルド(Ms Ma Jennylyn Aguinaldo)

ILOフィリピン国別事務所(マニラ市)
ミネット・リマンド(Ms Minette Rimando)


 以上はILOフィリピン国別事務所によるコタバト発英文記者発表の抄訳です。