建設業における労働安全衛生

ILO専門家会合が建設業安全衛生実務規程を改定

記者発表 | 2022/03/01

 政府及び労使団体の代表が出席し、2022年2月21~25日に開かれたILOの専門家会合は、1992年に出された「建設業における安全と健康に関する実務規程」を改正・更新して閉幕しました。世界全体で2億2,900万人を超える建設労働者に利益をもたらす可能性がある新たな規程は、建設業が新型コロナウイルスの世界的大流行から回復するための経済の原動力である国や都市化率及び人口成長率が最も高い国々で重要な役割を演じることが期待されます。これはまた、将来世代の男女どちらにとってもこの産業部門の魅力を高める可能性があります。

 新しい実務規程は、1992年版の規程に加え、「1988年の建設業における安全健康条約(第167号)」及び付随する同名の勧告(第175号)を始めとした国際労働基準その他の産業部門別規程を土台とし、過去数十年間に建設産業で起こった労働条件と作業実務における変化に鑑み、労働安全衛生実務その他の保護措置の改善が求められるこの産業内の新たな分野を考慮に入れたものとなっています。新たに導入された主な改正点は、労働安全衛生マネジメントシステム、母性保護、廃棄物・排気管理の重要性を強調しています。

 新型コロナウイルスの世界的大流行は建設部門の企業にも労働者にも深刻な打撃を与えていますが、この産業には雇用創出を含み、回復を刺激する多大な潜在力が秘められています。一方で、回復措置はより環境に優しいグリーン経済に向けた公正かつ持続可能な移行に対する建設部門の貢献を支える可能性があります。

 2021年9月に出された業務関連傷病負荷に関するILOと世界保健機関(WHO)の共同推計は、2016年に190万人の死亡原因となった業務関連傷病の予防に向けた公約の強化を呼びかけていますが、同書で特定された19の職業性リスク因子を巡って見出された事項の多くが建設職場における安全衛生の改善にとって意味を持っています。

 会議の議長を務めたユッカ・タカラ国際労働衛生委員会(ICOH)会長は、労働安全衛生の促進に携わってきた数十年に及ぶ経験に鑑み、社会対話の重要性を改めて強調した上で、政労使専門家の際だった貢献のお陰で建設部門の実務規程が改正されたことを評価しました。

 労働者側副議長を務めたアルゼンチン建設業労働者組合(UOCRA)のモニカ・テプフェル専門研修コーディネーターは、「改正されたILO実務規程は建設部門の労働者を守るため、建設プロジェクトのサイクルを通じて重要な実務上の手引きを提供すると確信しています」と期待を示した上で、この部門の労働者にとって重要な優先事項となりつつある環境の持続可能性に関する新たな規定を含む新しい規程の野心的適用範囲を評価しました。使用者側副議長を務めたブリティッシュコロンビア州海事使用者団体のジョン・ベケット業務副会長も、改正されたこの規程が、「リスク評価の実施、そして危機からキックスタートするに当たり、この産業部門の生産性と雇用の潜在力を後押しするカギを握る予防を第一優先事項として事業活動を進める上で建設部門の労使を支援する実務的な手引き」を提供することへの期待を示しています。政府側副議長を務めたルイス・ホシャ・ブラジル政府代表は、この改正された安全衛生実務規程によって、建設部門には、「全国的労働安全衛生制度とこの産業部門の労働安全衛生制度の両方を強化するためにこの部門に必要となる最新の労働安全衛生分野のツールと手法が備わりました」と評価しています。

 アレット・ファン・ルールILO部門別政策局長は、「建設部門における労働安全衛生を強化することによって人間を中心に据えたコロナ禍からの回復に寄与するであろうこの新しい実務規程は、企業の生き残りと事業の継続性を支えつつ、この産業部門が今後予見されていない課題に立ち向かい、労働者の安全と健康を守ることを可能にするでしょう」と期待を示しています。

 採択された新たな実務規程は理事会の承認を経て公刊されます。会議のウェブページでは討議のたたき台となった実務規程案がご覧になれます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。