新型コロナウイルスと船員

オミクロン変異株の船員に対する影響を制限する取り組みのスケールアップをILO等4国連機関が呼びかけ

記者発表 | 2022/02/28

 新型コロナウイルスの感染拡大を緩和する目的で導入された措置の幾つかを理由として、多くの船員がいまだに船舶を降りることができず、ILOの「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」の規定に従うために求められている11カ月間の既定最長連続船上勤務期間及び契約期限をはるかに超えて海上で足止めを食らったままになっています。その数は減少したものの、依然として相当数に上り、状況を是正し、継続する危機を緩和するにはさらなる取り組みが求められます。

 ILOはこれまでもたびたび船員の苦境に国際社会の注意を喚起してきましたが、この度、国際海事機関(IMO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世界保健機関(WHO)と共に、船員の健康と福祉を守護し、サプライチェーン(供給網)の混乱を回避しつつ、新型コロナウイルス・オミクロン変異株が乗組員の交代に与える影響を制限するよう、各国政府、国家・地方機関、その他の関連する利害関係者に改めて呼びかける共同声明を発表しました。

 2022年2月28日付の共同声明は、コロナ禍の期間を通じて、途上国出身者が多くを占める世界全体で190万人を数える船員がサプライチェーンを通じて決定的に重要な物品の継続的な流れを確保し、世界の海運と貿易が動き続けるよう保つ上でいかに重要な役割を演じてきたかを強調した上で、国際海運とその基幹労働者が、展開しつつある課題に対処するために必要な10項目の重要な行動を列挙しています。これらの行動は、新型コロナウイルスの最新変異株やその抑制に向けて当局が講じている行動を含み、船員とその家族が受けている新型コロナウイルスの悪影響を最小限に留め、地域社会を引き続き守りつつ、世界貿易と持続可能な開発を保護する助けになると期待されます。

 オミクロン変異株とそれに関連した対応措置が乗組員の交代に与えている影響の全貌はいまだ明らかではなく、さらなる「懸念される変異株(VOC)」が登場するかもしれません。乗組員の交代に関して最近見られる好ましい趨勢を維持するため、政府と業界は国際機関と協力して船員と国際社会の健康と福祉を守護しつつ、新たな変異株が乗組員の交代に与える影響を制限する共通の努力をスケールアップする必要があると声明は強調しています。具体的には、ワクチン接種の円滑化、健康書類の認証、個人用保護具の入手とウイルス検査機会の確保などが挙げられます。

 「現在進行中の新型コロナウイルスの世界的大流行の中で、乗組員交代の危機に対処し、船員の安全と健康を防護し、サプライチェーンの混乱を避けるため、協力の継続を呼びかける共同声明」が求めている行動は以下の10点です。

  1. 船員に対する即時の医療機会の提供、求められる医療を船上で提供できない場合における医療のための輸送の円滑化
  2. 船舶乗組員の交代及び安全な国境間移動の円滑化に向けて船員を必要不可欠な業務を提供する「基幹労働者」に指定し、この目的のための関連する文書を認めること
  3. 実行可能な限り、国内の新型コロナウイルス・ワクチン接種計画において船員を優先接種対象とし、WHOの勧告に従い、唯一の法定入国条件としての新型コロナウイルス・ワクチン接種証明を求める何らかの国内政策の適用除外とすること
  4. 船上または港湾における症例把握を円滑化し、上陸や乗組員交代時などの船員の移動を円滑化するため、必要な場合にはPCR検査を含み、ウイルス検査や適切な保護具を船員に提供・投与すること
  5. 船員の渡航及びワクチン接種に関連する書類を含み、国際的に合意された手順及び基準の一貫した適用を確保し、適切な調整を図り、懲罰的措置や罰金、過度の費用を避ける措置を講じること
  6. 「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」や「2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)」などの最新の法的文書の採用及び実施の確保
  7. 2021年12月に公刊され、とりわけワクチン接種の有無に関わりなく、マスクの使用などの非医療的介入行動の重要性に光を当てている、最近更新されたWHOの貨物船・漁船上における新型コロナウイルス管理のための特定産業部門対象手引きの実施
  8. 国際渡航目的で国際民間航空機関(ICAO)に提供するなど、該当する場合、何らかの健康証明に関連した公開鍵証明書を関連する信用ネットワークに提供すること
  9. 進化する科学的知見や展開に沿った関連する手引きの定期的な更新、海上における医療非常事態の低減及びそのような事態への効果的な対応のための仕組みの導入確保に向けた協力の継続
  10. コロナ禍とそれが社会経済に及ぼす幅広い結果を長引かせる可能性がある新たなVOCの野放しの拡大を阻止するだけでなく、船員を安全に保ち、サプライチェーンの混乱を制限するため、協調的な協力努力に着手すること

 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。