人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラム

人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラム開幕:野心を行動に移すことを訴えるILO事務局長

記者発表 | 2022/02/22
人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラムで開会演説を行うガイ・ライダーILO事務局長 © M. Crozet / ILO

 新型コロナウイルス危機に対する国際的な対応を強化する具体的な行動を提案するために、世界中から国家元首・政府首脳、国際機関や多国間開発銀行のトップ、労使指導者の参集を図り、2022年2月22日から3日間にわたってバーチャル形式で開かれるILOの「人間を中心に据えた回復に向けたグローバル・フォーラム」が、夢のような野心の表明と、新型コロナウイルスの世界的大流行が社会と経済に与えている影響に対処するために必要な集団行動との間に横たわるギャップの解消を国際社会に呼びかけるガイ・ライダーILO事務局長の訴えと共に開幕しました。

 ライダー事務局長は開会演説で、最も弱い層に最も大きな打撃を与えているコロナ禍によって拡大した不平等に光を当て、次のように訴えました。「今の道筋は、たとえそれが回復の道筋だとしても、この分離を長引かせ、強めています。私たちはただ、この動きを食い止め、逆転させる行動を起こさなくてはなりません。そうでなくては、この動きは私たちの世界をより不公正なものとし、最終的に、より危険なものとしてしまうでしょう。包摂的な成長と働きがいのある人間らしい仕事、全ての人に機会が開かれた普遍的社会的保護、労働者保護と企業に対する下支え、二酸化炭素の排出量が正味でゼロとなるような炭素中立性に向けた公正な移行という、本フォーラムが取り上げる四つの分野の一つ一つで、協力と共同行動の具体的な道筋を新たに構築することによって、私たちは突破口となる筋書きに明確な結果をもって重要な貢献を行うことができるでしょう」。

 開会式で演説したアントニオ・グテーレス国連事務総長も、フォーラムは「コロナ禍から回復し、持続可能な開発目標を救出する私たちの能力が秤にかけられている決定的に重要な時期」に開かれていると評価した上で、「必要なのは、人を第一とする、人間を中心に据えた環境に優しい回復」と強く訴え、この内容について次のように説明しました。この意味するところは、「公正な移行にとって決定的に重要な、あらゆる種類のショックに対する最善の防衛線である普遍的な社会的保護の達成」、「非公式部門(インフォーマル・セクター)の仕事の公式(フォーマル)化の加速と働きがいのある人間らしい仕事に対する戦略的な投資」です。人を第一に据えるということは、「ワクチンに係わる真の公平性、債務免除やより公正な課税制度などを通じて自国の人民を支える財源が全ての国に開かれるような国際的な金融の仕組みの改革、危機の規模と緊急性に見合った気候分野の公約」を意味します。

 開会式で演説した世界各地の国家元首・政府首脳、国際的な組織のトップからも多国間及び政労使三者の協力を強化することによって人間を中心に据えた回復を前進させようとの呼びかけに対する賛同の声が聞かれました。開会式における演説者は次の通りです(演説順)。◇レナーテ・ホルヌンク=ドラウスILO理事会使用者側副議長、◇カテレーネ・パスキエILO理事会労働者側副議長、◇アントニオ・グテーレス国連事務総長、◇イグナツィオ・カシス・スイス連邦大統領、◇マッキー・サル・セネガル共和国大統領、◇ジョコ・ウィドド・インドネシア共和国大統領、◇アルベルト・フェルナンデス・アルゼンチン共和国大統領、◇オラフ・ショルツ・ドイツ連邦共和国首相、◇シャラン・バロウ国際労働組合総連合(ITUC)書記長、◇ロベルト・スアレス国際使用者連盟(IOE)事務局長、◇ガイ・ライダーILO事務局長、◇文在寅大韓民国大統領、◇テドロス・アダノム・ゲブレイェスス世界保健機関(WHO)事務局長、◇クリスタリナ・ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事、◇ゴズィ・オコンジョ=イウェアラ世界貿易機関(WTO)事務局長、◇ムハンマド・スライマン・アルジャセル・イスラム開発銀行(IsDB)総裁、◇ベス・ダンフォード・アフリカ開発銀行(AfDB)農業・人間開発・社会開発担当副総裁、◇ミシェル・パーミリーIOE会長、◇ルカ・ビセンチーニ欧州労働組合連盟(ETUC)書記長。

 開会式の模様を含み、3日間にわたるフォーラムはILOのウェブサイト経由でご覧になることができます。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、中国語、アラビア語に加え、国際手話による通訳も用いられています。開会式に続き、初日には「働きがいのある人間らしい仕事と包摂的な経済成長」に関するテーマ別討議が行われました。23日には「普遍的社会的保護」と「労働者保護と企業に対する下支え」の二つのテーマ別討議が行われます。最終日には「公正な移行」のテーマ別討議に続き、「新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた包摂的かつ持続可能で強靱な回復に向けて」と題する最終討議をもって閉幕します。フォーラムでは、ILOの「行動に対するグローバルな呼びかけ」及び国連事務総長が提起する「仕事と社会的保護の世界的加速装置」が掲げる野心に対応するために必要な行動及び投資の検討も行われる予定です。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。