ILO理事会

第343回ILO理事会閉幕

記者発表 | 2021/11/17
理事会模様 © ILO

 新型コロナウイルスの環境下でILO理事会はバーチャル形式に移行していますが、前3回よりは多いものの限られた数の政労使理事が対面で参加しつつ、大多数が遠隔接続するハイブリッド方式で、2021年11月1日から開かれていた第343回ILO理事会はILOの業務の継続性を確保するものとして予定されていた議事を全てこなし、11月12日に閉幕しました。

 今理事会の主な成果について、ILO公式会議・文書・渉外局のディミトリナ・ディミトロワ次長は次のように紹介しています。

◎ILO総会フォローアップ:新型コロナウイルス対応

 今理事会では、今年6月に開かれた第109回ILO総会で採択された「新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ」の実施に向けた具体的な行動が検討されました。人間を中心に据えた回復に向けた進捗状況の追跡、人間を中心に据えた回復のための財源確保、各国の優先事項を決めるための政労使三者による国内対話、人間を中心に据えた回復のための多国間活動の四つの主な行動路線に焦点を当てて、この合意文書を実施し、各国の回復戦略を支える行動が検討されました。この文書では、加盟国を支える力強く整合性のある地球規模の対応を動員することを目的としてハイレベル多国間政策フォーラムを開催することが提案されていますが、理事会ではその形態に関する検討も行い、2022年初めにILO加盟国政労使、国家元首・政府首脳、関連する国際・地域機関トップに参加を呼びかけてハイブリッド方式で開催することが決定されました。これらの活動は全て、2019年の第108回ILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」の掲げる野心的な目標を前進させるILOの活動に焦点を当て、その加速化を図るものとなります。

◎ILO総会フォローアップ:労働安全衛生

 新型コロナウイルスの世界的大流行を背景に、労働安全衛生の重要性はかつてないほど顕著になっています。2019年の第108回ILO総会では、ILOの就労に関わる基本的な原則と権利の枠組みに安全で健康的な労働条件を含むことを理事会に求める決議が採択されています。この提案を検討した理事会は、来年の総会議題にこの案件を含むことに合意し、2022年3月に開かれる第344回理事会で検討される背景文書と来年の第110回総会で審議される決議案を準備することを事務局に要請しました。

◎ILO総会フォローアップ:ミャンマー

 今年6月のILO総会では、ミャンマーにおける基本権の尊重と民主主義の回復を求める決議が採択されていますが、理事会はその後の展開を検討し、同国における民主的文民統治の回復に向けた進展の欠如、人権・労働者の権利の侵害、威嚇や暴力の使用の継続について深刻な懸念を表明し、ハラスメントを止め、労働者・使用者団体が自由と安全が確保された環境の中で権利を行使できるよう確保し、強制労働の利用を即時に停止することを軍事政権に求めました。そして、来年の総会におけるフォローアップ活動の可能性も含み、同国を巡る動向に関する報告を2022年3月の次期理事会に提出するよう事務局長に求めました。

◎基準適用問題:ベネズエラ

 「1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)」、「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」、「1976年の三者の間の協議(国際労働基準)条約(第144号)」の適用が問題とされて設置された審査委員会から出された勧告を政府が受諾しない旨決定したベネズエラの案件に関し、理事会は受諾しないとの姿勢を続ける政府に遺憾の意を示しつつも、社会的パートナーである労使団体との対話を開始するために講じられた措置を認め、これをさらに発展させ、ILOの支援を受け、その立ち会いの下で開かれる社会対話フォーラムとするよう求めました。そして、審査委員会の勧告の完全かつ効果的な実施に加え、2022年3月までに事務局長特別代表を設ける選択肢を含む、この過程を支える技術支援の提供に関し、政府と交渉し、事務局の活動報告を来年3月の次期理事会に提出することを事務局長に求めました。理事会は今後の展開を評価し、ILO憲章で想定されているようなあらゆる可能な措置を検討することとなります。

◎基準適用問題:バングラデシュ

 「1947年の労働監督条約(第81号)」、第87号条約、「1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)」の適用上の問題に関する苦情申し立てが提起されているバングラデシュに関しては、これを巡る動向が検討されました。2021年5月に政府から申し立てられている未処理事項の実施に向けた最終行程表が出され、9月にその実施状況に関する報告書が送付されてきたのを受け、理事会は来年3月の次期理事会までフォローアップを続けることに合意し、取るべき行動に関する決定を2022年11月の第346回理事会まで先送りしました。

◎事務局長選挙

 2022年3月の次期理事会では、事務局長選挙が行われますが、理事会は初の方式として、2022年1月20~21日に候補者との公開対話を開催することを決定しました。現在、オーストラリア、トーゴ、南アフリカ、フランス、韓国から5人の候補者が出ていますが、全員に平等な条件と一貫した手法を確保する形態についても合意が達成されました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。