FAOによる、農業における児童労働撲滅に向けた取組みの強化について



国際連合食糧農業機関(FAO)は、イタリアに本部を置く国連機関です。FAOは、児童労働撤廃国際年を契機に、農業関係者の能力を高め、児童労働の防止と若者の雇用促進を図る取組みを強化しています。

児童労働の多くは、農業の現場で発生している

児童労働は依然として農業部門で多く見られ、世界の児童労働の70%以上を占めています。2021年の世界推計によると、2016年から2020年の間に、さらに400万人の子どもたちが農業部門での労働を強いられました。現在、推定で1億1200万人の少年少女が、農作物の栽培、漁業・養殖業、畜産業、林業などの農林漁業分野で働いています。

なぜ児童労働がこの分野に集中しているのでしょうか?

児童労働の多くが農業に集中しているのは、労働集約的で危険な作業が多いこと、またそれらの作業を行う成人の労働力確保や、報酬を出すことが難しいことが挙げられます。

しかしながら、家計の貧困は、農業部門で働く子どもが増える主な要因のひとつであり続けています。貧困、飢餓により、児童労働が発生する可能性は高くなります。低所得世帯、生計手段の選択肢の不足、教育へのアクセス不足、労働法での規定が不十分であるなど、すべてが農村部での児童労働の原因となっています。多くの家族や地域社会では、自分たちのニーズを満たすためには、子どもに頼る以外に選択肢がないと感じています。実際、農業に従事する児童労働者の3分の2は、家族経営や家族と一緒に働いていると言われています。学校教育を受けずに働いている子どもたちは、明日以降も食料を得ることが難しくなり、農村部の貧困の連鎖を永続させる可能性が高いのです。

これまでの課題に加えて、COVID-19危機により、世界中で経済活動と雇用が減少し、これまでにない厳しい状況に陥ったことは、特に農業と食料システムに大きな打撃を与えています。このことは、すでに飢餓と貧困の急増につながっており、児童労働にも悪影響を及ぼしかねません。

意欲的な、「持続可能な開発目標(SDGs)」ターゲット8.7を達成し、2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすには、多大な努力を要します。農業分野での進展が必要なのです。貧困と食料不足を減らし、食料システムを変革するためには、協調的な行動が求められます。

最も打撃を受けた部門での問題に対処するには

FAOは各国政府と協力して、社会的保護制度や生産性の向上と所得の拡大のためのイニシアティブを通じて、農村部の経済的包摂を促進しています。
農村部の家庭の所得を向上させ、子供を働かせることなく、学校に通わせる手段を確保することを目的としています。

社会的規範により、親や地域社会は、児童労働を農村部での通常の教育の一部として認識している可能性があります。なぜ子どもは、危険で、成長に長期的な影響を与える可能性のある作業を行うべきではないのか、現場の意識を高めることが、行動や習慣を持続的に変容するための鍵となります。

FAOはパートナーと協力して、子どもたちを働かせることのないよう、持続可能な省力化技術や、危険な労働を防ぐための安全で持続可能な農業の実践も推進しています。また、農業や栄養に関するテーマを農村部の教育に取り入れることで、児童労働に頼る親にとって学校がより適切で価値あるものとなるよう努めています。

革新的な解決策

今年、FAOは、児童労働の防止と若者へのディーセントな雇用促進に向けた世界的な行動を加速させ、幅広い農業関係者の能力を高める取組みを強化しています。

2021年を通して、FAOは農業に関するステークホルダーらと広く地域協議を実施し、進展を加速するための好事例、有望な取組み、革新的アイデアを収集してきました。結果については、グローバル・ソリューション・フォーラムで発表されました。(FAOがILOと協力して11月2~3日に開催したハイレベル・オンラインイベント


このフォーラムには、農業、漁業、畜産業、林業を所管する省庁、生産者・農業団体、労働者団体、開発銀行、企業、市民社会、学識者、子ども、若者の支援団体、元児童労働者らが集結しました。
第5回児童労働世界会議に向けて、世界中で共同行動を実施し、農業に関するステークホルダーのコミットメントを高め、農業・食料システムにおける具体的な解決策を広めていくことを目指しています。

児童労働撤廃国際年のウェブサイト:オリジナル記事(英)はこちら