G20サミット

人間を中心に据えた新型コロナウイルスからの回復手法に対するG20の支持表明をILOは歓迎

記者発表 | 2021/10/31
G20ローマ・サミット出席者 © G20

 2021年10月30~31日にローマで開かれた主要20カ国・地域(G20)の首脳会合は、6月に開かれたILO総会で187加盟国政労使によって採択された「人間を中心に据えた回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ」に沿ったG20ローマ首脳宣言を最終日に採択しました。宣言は、新型コロナウイルスの世界的大流行によって拡大した不平等に留意し、安全で健康的な労働条件、全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、社会正義、社会対話の確保に向けた各国首脳の公約を強調するものとなっています。さらに、不平等の縮小、貧困根絶、労働者の移行と労働市場再統合への支援、包摂的で持続可能な成長促進に向けた社会的保護制度の強化も約束されています。

 サミットに出席したガイ・ライダーILO事務局長は、G20諸国の首脳陣が新型コロナウイルスの世界的大流行からの回復計画において人間を中心に据えた政策アプローチを採用すると断言したことを歓迎しています。

 ライダー事務局長は、サミットの世界経済と国際保健のセッションで、「サプライチェーン(供給網)の混乱、エネルギー価格の急騰、インフレ懸念、債務苦境に直面し、労働市場の回復展望は依然として不均一かつ不確実であり、回復は各国の正しい財政刺激策出動能力とワクチンの入手可能性に大いに左右される」と述べて、先日発表された『ILO monitor: COVID-19 and the world of work(新型コロナウイルスと仕事の世界ILOモニタリング・英語)』最新版でも光が当てられた世界的な労働市場の回復の失速と高所得国・低所得間の多大な差異を指摘しました。そして、「世界がG20に取り組みの強化を期待する中、私たちが直面しているグローバルな課題に対するグローバルな解決策が求められ、その対応には勤労者と労働市場を含む必要があり、すなわち、包摂的かつ持続可能で強靱な、人間を中心に据えた回復が求められる」と強調しました。

 持続可能な開発に関するセッションで、ガイ・ライダーILO事務局長は、もう一つの「カギを握る事項」として、社会的保護とよりグリーンな経済に向けた公正な移行に光を当てました。そして、「社会投資における地球規模の格差を縮小するために、現地、国家、国際の各レベルの取り組みを結びつける必要性」を説き、この点で、アントニオ・グテーレス国連事務総長が9月に国連総会で発表した「仕事と社会的保護の世界的加速装置」に対する支持を各国に呼びかけました。さらに、「全体として、気候変動を阻止する雇用の配当が全面的に実現し、全体として、破壊されるよりも多くの仕事が創出されるよう確保するために、さらなる公正な移行が必要」と訴えました。

 世界の注目が2021年10月31日に開幕する国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26気候サミット)に移る中、G20首脳宣言も持続可能な開発のための財源に加え、環境、気候変動、エネルギーに多くの部分を割いています。宣言はまた、「ブリズベン・ゴールに向けた、そしてそれ以降のG20ロードマップ」の実施公約などの男女平等と女性のエンパワーメント、そして男女賃金格差の縮小に特に重点を置いて女性の雇用の量と質の迅速な向上に向けた諸国の公約を再確認するものとなっています。優先項目としては他に、性差に基づく暴力の撤廃、男女間に存在するデジタル格差の解消、若者の技能開発、難民・移民のコロナ禍対応への包摂などが挙げられています。

 宣言はILOに対し、経済協力開発機構(OECD)と連携して、労働市場に恒久的に置き去りにされる危険が最も高い若者の割合を2025年までに15%減らすことに向けたG20諸国の公約であるアンタルヤ・ユース・ゴールに向けた進捗状況を引き続き監視するよう求めています。また、OECDがILO、国際移住機関(IOM)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力して制作し、G20に提出した『国際移住と強制移動の傾向と政策2021年年次報告』にも留意しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。