強制労働

「自由のための50カ国」強制労働議定書批准促進キャンペーンが当初目標を達成

記者発表 | 2021/03/17
1930年の強制労働条約の2014年の議定書の50カ国批准達成に対して各界から寄せられた祝賀メッセージ(英語等・英語字幕付・2分26秒)

 2014年の第103回ILO総会で圧倒的多数の賛成を得て採択された「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」は、強制労働条約(第29号)を現代の問題に対応させるものとして、強制労働の防止、被害者保護、補償などの救済を得、司法を利用できる機会の確保に向けた実効的な措置を講じることを批准国に求めています。

 ILOは国際使用者連盟(IOE)及び国際労働組合総連合(ITUC)と共に、政府に議定書の批准を奨励し、現代の奴隷労働の存在について啓発することを目的として、「自由のための50カ国」強制労働議定書批准促進キャンペーンを開始し、まず50カ国の批准達成を目標に掲げていましたが、2021年3月17日にスーダンが批准したことによってこの目標が達成されました。キャンペーンを通じてこれまで世界中から7万人近くが議定書の批准・実施の呼びかけに対する支持を表明しています。中には官民部門のパートナー、社会的パートナーである労使、市民団体、複数の著名人も含まれています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「大きな里程標の達成」に対する喜びを表明した上で、「強制労働、人身取引、児童労働、現代の奴隷制から自由な仕事の未来は、私たちが共に形作らなくてはいけない未来です。なぜなら、強制労働は私たちが本日から築き始めたいと思う、より良い日常においてどこにも居場所がないからです」と説いて、より一層の取り組みを求めました。

 強制労働は世界中全ての地域であらゆる経済部門で見られ、被害はあらゆる人口集団に広がっています。最新の世界推計によれば、今でもなお、子どもを含む2,500万もの人々が人身取引の被害にあったり、債務奴隷として拘束されていたり、奴隷のような状態で働かされているといった強制労働状態にあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行が、ほとんどの場合社会的保護の利用機会が開かれていない最も脆弱な労働者に影響を与えているため、この数は増加していると見られます。

 しかしながら、「50カ国による批准は祝賀に値しますが、もっと多くのことが必要です」とシャラン・バロウITUC書記長もコメントしているように、批准そのものだけでは十分ではなく、人々の暮らしをより良い方向に変えるには実施がきわめて重要です。「強制労働根絶に向けた全ての企業の明確かつ積極的な公約が必要です」とロベルト・スアレス・サントスIOE事務局長も指摘するように、これには民間セクターを含む世界中の共同努力が必要です。

 国連の持続可能な開発目標のターゲット8.7には強制労働根絶の目標が掲げられていますが、達成年の2030年まで10年を切った今、議定書実施に向けた各国のより一層の努力が求められます。「国連の『持続可能な開発のための2030アジェンダ』のターゲット8.7の達成を望むならば、各地域、各国、村々一つ一つに至る注意深い実施を通じてこの動きをフォローアップし、誰も置き去りにされないことを確保する必要があります」とライダー事務局長は説いています。

 スーダンによる議定書批准式典は2021年3月26日に開かれます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

強制労働条約議定書批准促進キャンペーン協力者からのメッセージ

 強制労働条約議定書批准促進キャンペーンが当初目標であった50カ国による批准を達成したことを受けて、キャンペーン協力者の方々からメッセージが届けられました。

 ILO強制労働親善大使であるブラジル人俳優ワギネル・モウラ氏は、もっと多くの国が強制労働議定書を批准するよう呼びかけています。

ワギネル・モウラILO強制労働親善大使メッセージ(英語・1分13秒)

 50カ国が自由を選択し、ILOの強制労働に関する議定書を批准したこの瞬間を、私は特に誇らしく思います。搾取されたり、商品のように扱われるに値する人など存在しません。平和と繁栄は全ての人の自由にかかっているのです。でも、この戦いはまだ終わっていません。私たちには、キャンペーンに賛同して署名するだけでなく、政府や非政府組織(NGO)の指導者、世論形成に影響をもつ人々、立法者、企業役員、国家元首、あなたの学校、隣近所に働きかける義務があります。なぜなら人々が目を開き、奴隷状態の人々が周囲中に存在することに気付く必要があるからです。

 諸国は強制労働議定書を批准しなくてはなりません。どうか私ワギネル・モウラと共に現代の奴隷制に終止符を打った世代になってください。

 現代の奴隷の恐怖を写真を通じて暴いてきた人道写真家のリサ・クリスティーンさんは現代の奴隷の根絶に向けて私たちには皆それぞれに果たすべき役割があると説いています。

人道写真家リサ・クリスティーンさんからのメッセージ(英語・1分1秒)

 奴隷状態はしばしば明らかに目に見えるところに隠されています。でも今日、私たちは50カ国が強制労働を終結させるとの態度を示した事実を祝っています。それはILOの議定書を批准することによって示されました。私は「自由のための50カ国キャンペーン」の協力者ですので、私の写真をご覧になった方も多いと思います。ですので、今は奴隷状態がどういうものか理解されているかもしれません。そして、今なお、だまされて強制労働状態で搾取されている何百万人もの人が存在することをご存じかもしれません。奴隷制に終止符を打つ上で、私たちには皆、果たすべき役割があります。記者であろうと活動家であろうと、カメラマンであろうと俳優であろうと、私たちは皆、奴隷制をなくすために立ち上がらなくてはなりません。私リサ・クリスティーンと共に人身取引に終止符を打つという約束を果たしてくれませんか。

 ジャーナリストとして強制労働撲滅を訴えてきたレオナルド・サカモトさんは、現代の奴隷制の根絶を優先政治課題とすることを諸国政府に呼びかけています。

強制労働活動家であるジャーナリストのレオナルド・サカモトさんからのメッセージ(英語・1分5秒)

 今日、世界中から奴隷制をなくすことを目指す私たちの歩みはまた一歩前進しました。ILOの強制労働議定書が50カ国の批准を集めたことに祝意を表したいと思います。このメッセージは声高かつ明確です。法律を形作り、影響を与えることのできる人々は、責任を引き受け、強制労働の根絶を優先政治課題にする必要があります。

 「自由のための50カ国キャンペーン」は、現代の奴隷制の撤廃に向けた地球規模の取り組みにおいてカギを握る役割を演じてきました。しかし、いまだになお、私たちは強制労働がこんなにも広く見られ、私たちが消費する多くの製品の製造に用いられている環境の中で暮らしているのです。私たちは皆、奴隷制とつながりがあります。この勢いを土台として、現実を今、現場から変えていく必要があります。

 ノーベル平和賞受賞者であるインドの児童労働活動家カイラシュ・サティヤルティ氏は、現代の奴隷制をなくすことはできないとの考えは受け入れられないと強調しています。

ノーベル平和賞受賞者カイラシュ・サティヤルティ氏メッセージ(英語・2分23秒)

 ILOの強制労働議定書を批准された全50カ国に祝意を述べたいと思います。これはこれらの国々がこの現代の奴隷制に終止符を打つ政治的な公約を示したことを意味します。私はいつも言ってきましたが、自由は神から賜った最も貴重な贈り物です。したがって交渉の余地などなく、妥協は一切許されません。私たちの富、科学技術、憲法を始めとした法の集団的な力によって現代の奴隷制を終結できないという考えを受け入れることを私は拒みます。私たちは現代の奴隷制をなくすことができますし、そうすることになるでしょう。

 親愛なる友人諸氏よ、批准だけでは不十分です。政策の導入を確保しなくてはなりません。最大限の政治的意思が示される必要があります。十分な資金が割り当てられなくてはなりません。私たちは共に、奴隷制を過去の歴史と化すことを誓約しなくてはなりません。奴隷制を目撃する最後の世代にならなくてはなりません。私たちはこれをやり遂げるでしょう。

 さらにまた、きわめて緊急に、この議定書を批准するよう世界の他の諸国政府に呼びかけたいと思います。奴隷制と文明が手を携えて進むことはできません。たとえたった1人の子どもでも、たった1人の人でも奴隷として働かされているならば、私たちは自分たちを教養ある文明人と呼ぶことはできません。そして、皆さんご承知の通り、奴隷として働かされている被害者の4人に1人は子どもなのです。1億5,200万人の子どもが様々な形態の児童労働でつらい生活を送っていることは皆さんご承知でしょうが、その多くが奴隷なのです。この子どもたちは誰の子どもでしょうか。皆私たちの子どもです。皆が私たちの子どもなのです。そして、私たちはその子どもたちに子ども時代の自由、安全、教育を取り戻さなくてはいけないのです。

現代の奴隷制の真実の物語を各国有名人の協力で再現

 強制労働議定書の50カ国による批准を目標とする「自由のための50カ国」キャンペーンが開始されてから多くの有名人が現代の奴隷制の悲惨な実話を物語る広報活動に協力してくれました。以下はこれを再編集してまとめた広報動画です。

現代の奴隷制の真実の物語(英語・1分30秒)

 ある日、男がやってきて、町でメイドとして働ける良い仕事を紹介してくれると言いました。でも、それは嘘でした。

 着いてみると、仕事などありませんでした。借金を返すために売春婦として働けと言われました。拒否しましたが、鍵をかけた部屋に閉じ込められました。

 毎日休みなく10~14時間働きました。どこにも行かせてもらえませんでした。

 そして、脅かされました。従わないと仕事を失うと。出て行くことはできません。他の技能も貯金もありませんから。

 家族の生存のために、父は村の金貸しからの借金を重ねざるを得ませんでした。でも、返す手立てはありません。家族総出で煉瓦作りに行かない限り。

 文句を言うと親方に殴られます。どうしたらいいか分かりません。人生を変えて、もう怖がらずに暮らしていきたいです。

 私は泣きながら立ち去りました。衝撃を受けて、何も手にせずに。

 出演はデヴィッド・オイェロウォ、リンディウェ・ブンガネ、ホアキン・フリエル、フリーダ・ピントー、ロビン・ライト、ワギネル・モウラ、ムルナル・タクールの諸氏。これは実話です。