ILOブログ:新型コロナウイルス
安全であり続けるカギを握るのは職場における手洗い
世界の幾つかの地域では労働者が職場に戻り始めています。ILOの国際労働基準は安全であり続けるための貴重な手引きを示しています。
多くの病気を予防する中心的な方法としてカルロス・カリオン・クレスポILO公務・公益事業専門官が子どもの頃に教え込まれたのは頻繁に手を洗うことでした。今はこの病気に新型コロナウイルス(COVID-19)が含まれています。そして世界中多くの労働者同様、自分自身が安全であり続けるだけでなく他の人々をも守るため、在宅勤務を続ける中でこの習慣を励行しています。
職場復帰が視野に入ってきた今、クレスポ専門官は職場における設備について考え始めました。自宅あるいは職場で安全な水が得られない場所で暮らす16億余りの人々、安全なトイレが得られない42億の人々はどうすれば感染を防げるか、さらに、何カ月も人が利用していなかった職場の水質は十分かといったことです。このような問題を考えた人は過去にも存在し、その証拠として、ILOには職場及び労働者の住宅における手洗い設備について詳しい要件を定めた基準やツールが存在します。これには9本の条約、実務規程19本、そして数多くの勧告が含まれています。農業や事務所における労働から鉱業、海運、陸上運輸まで、対象になっている経済活動は多岐にわたります。この一つ一つの文言や細部が現在187を数えるILO加盟国の政府、労働者、使用者の交渉を経てまとめられたことを考えると、これは決して些細な業績ではありません。
新型コロナウイルスに関連する手引きを示すILO基準には以下のようなものがあります。
- 「1964年の衛生(商業及び事務所)条約(第120号)」は、労働者が使用する建物及び設備は適正に維持し、清潔に保たれるべきこと、十分な量の衛生的な飲料水その他の飲料を提供すべきこと、十分かつ適当な洗浄・衛生設備が備えられていることなどを求めています。
- 「1961年の労働者住宅勧告(第115号)」は、使用者が所有する宿泊施設では労働者のための十分な衛生・洗浄設備が提供されることを提案しています。
- 「1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)」は、安全衛生についての適当な訓練と情報を提供すること、国内の法令及び慣行に従って、労働に関連する安全及び健康のあらゆる側面について個々の労働者及び労働者代表が調べることを許すよう使用者に求めています。
- 「2017年の平和及び強靱性のための雇用及び適切な仕事勧告(第205号)」は、危機対応に従事する労働者の安全と健康を保護しています。
規定されているのは使用者の責任事項に留まらず、政府もまた、職場の衛生に関する助言を提供し、使用者の施設を監視するよう求められています。労働者も職場の安全と健康に関する要求事項を守るよう求められています。
実践例としては以下のような例を挙げることができます。
- ILOの雇用集約型投資計画が南アフリカで開始した新型コロナウイルス関連のイニシアチブは2万人の若者を採用して消毒薬や石けんの配布支援、衛生・予防措置に関する教育の提供、高リスク域の消毒、清掃キャンペーンを展開しています。
- ILOと国際金融公社(IFC)の共同事業であるベターワーク(より良い仕事)計画のニカラグアにおける事業は、同国の衣料部門が頻繁な手洗いや使用者向け手引きなどの予防措置を含む新型コロナウイルス緊急対応策をまとめることを手助けしました。
また、多くの労働協約に衛生設備に関する条項が含まれています。
職場は新型コロナウイルスの感染予防に大いに寄与することができます。治療法やワクチンが得られるようになるまでの唯一の対策は連帯です。諸国が事業再開に踏み切る中、政府、使用者、労働者は力を合わせて安全な労働慣行と安全な施設を通じてコロナ禍を鎮圧しなくてはなりません。全ての労働者が職場で安全かつ十分に手を洗える設備を確保することが、コロナ禍、そして将来発生するかもしれない同種の事態に対する戦いにおける重要な手段の一つとなることでしょうと著者は結んでいます。
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以上はカルロス・カリオン・クレスポILO公務・公益事業専門官によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年6月11日付の英文投稿記事の抄訳です。