新型コロナウイルスと海事部門

新型コロナウイルスに関連した船員の権利に関する合意をILOも歓迎

記者発表 | 2020/07/09

 英国政府が主催して2020年7月9日に開かれた初のバーチャル国際海事サミットにおいて新型コロナウイルス(COVID-19)危機によって海上に取り残された船員の権利を守る国際的な措置が新たに決定されたことをILOは歓迎します。

 サミットではウイルスの世界的大流行によって20万人以上の船員が海上に取り残されることになった、地球規模の船員交替危機の問題が検討され、英国、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、インドネシア、オランダ、ノルウェー、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、アラブ首長国連邦、米国といった参加13カ国は、船員を基幹労働者扱いしてその権利を強化する共同声明を発表しました。国際海事機関(IMO)その他の国連・国際機関も支持する新たな措置は、ウイルス流行の中でも移動し、帰国する、より大きな自由を船員に与えることになります。

 船員はウイルス流行の打撃を最も強く受けている労働者集団の一つです。社会にとって重要なサービスを提供しているにもかかわらず、ウイルスの拡散を止めるために講じられた措置によって帰国や乗船ができないために安全衛生上のリスクに直面し、今では心身がますます疲弊しています。国際的な移動の制限やウイルス抑制措置によって既に何ヶ月も船上に閉じ込められている者もいます。今回の合意は船員に国境を開き、国際航空便を増やすことによって帰国の取り組みのスピードアップを図ることになります。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、新型コロナウイルスの世界的大流行によって海事部門に生じた危機に対応する、社会的パートナーと国際社会による調整を図った取り組みを歓迎すると共に、共同宣言の実施を支援することを全加盟国に呼びかけています。

 ILOは船員を、ウイルスの流行の中でも貿易の流れや必要不可欠な医療用品、安全具、食料品その他の重要物資の移動を確保する「基幹労働者」として認めるよう各国政府に呼びかけています。「2006年の海上の労働に関する条約」の手引きを用いて、様々な政府及び労使団体、そして国際運輸労連(ITF)、国際海運会議所(ICS)、IMO、世界保健機関(WHO)、国際民間航空機関(ICAO)、欧州連合など複数の国際機関と共に問題の解決に取り組んできました。

 コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長は、「この適時のイニシアチブと前途に向けた視点を共有する機会をILOに与えてくれた」英国のグラント・シャップス運輸大臣とケリー・トルハースト航空・海事・安全保障担当政務次官に感謝の意を表した上で、「この切迫した問題を解決し、船員交替を速める助けになるであろう有用かつ実践的で適時の行動のための公約を提供する共同声明」に対するILOの支持を表明しました。そして、ILO加盟国政労使がこのイニシアチブの実行などを通じて船員交替の問題に取り組むのを支援することを約しました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。