持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて:アジアのサプライチェーンにおける本業を通じた責任ある労働慣行の促進(2019年11月25日開催セミナー報告)
ILOとAPIR(アジア太平洋研究所)は関西でシンポジウムを共催し、日本と中国の電子・電機産業における調査成果の発表と、本業を通じたSDGs実装化の方法に関する議論を実施
企業の生産性と競争力強化の一環として責任ある労働慣行を促進し、SDGs達成につなげていく。11月25日に大阪で開催されたシンポジウムでは、90名を超える官民の参加者を前に、このような議論が展開されました。
後藤健太教授(関西大学)は、「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムにおける電子・電機企業の調査の成果を発表し、責任ある労働慣行の見本事例を紹介しました。取り上げられたのは、長期的な生産性と競争力の向上を目的とする日常的な企業活動に組み込まれた労働慣行です。調査では、企業の社会的責任(CSR)を慈善活動や単なるコストと考えるべきではなく、研修、従業員との対話やサプライヤーへの支援など、実際のビジネス上の目的に基づく持続可能な取り組みとして捉える必要があるということが明らかとなりました。[写真:後藤健太教授(関西大学)による基調講演]
また、中国労働・社会保障科学研究院の黄昆氏は、中国の電子・電機産業における調査の成果を発表しました。調査では、数多くの中小企業が含まれる中国のサプライチェーンの複雑性が浮き彫りとなりました。黄氏は提言の一つとして、こうした中小企業の能力を強化するために、行政機関やバイヤー企業による支援の必要性を訴えました。この提言は、日本側の調査の好事例である、バイヤー企業からサプライヤー企業への技術支援や助言の提供とも軌を一にするものです。さらに、日中双方の調査ではいずれも対話の重要性が指摘されました。
責任ある労働慣行に向けた取り組みは、パネルディスカッションでさらに詳しく取り上げられました。コニカミノルタの別府幹雄氏は、持続的な成長が、同社の今後の中期経営計画で中心的な位置づけにあると語りました。SDGsを重視するのは、社会・環境課題の解決に取り組むことが、グローバル社会で人財や資金を惹きつけ、企業の評判を高め、ひいては自社の持続的な成長に資すると捉えているからです。例えば、コニカミノルタはCSRに関するアドバイスやノウハウの提供を通じて取引先の活動を後押ししていますが、その根底にも、こうした取り組みが最終的には自社の事業の強化にもつながるという長期的展望があります。[写真:パネルディスカッション]
近畿経済産業局の内海美保氏は、関西SDGsプラットフォームの事例を基に、政府の役割について語りました。このプラットフォームには、企業、自治体、市民団体、教育研究機関など、800超の組織が加盟しており、セミナーやワークショップの定期的開催や参加を通じて、情報共有や企業同士の取り組みの紹介を行い、業界を超えた企業間連携を後押ししています。同氏はまた、近畿経済産業局の活動として、関西の企業がアジアに進出した際に本業を通じて現地のニーズや課題に対処した好事例を紹介しました。
後藤教授は議論の中で、SDGsを実装化していくために、ステークホルダーを特定し、その関与を促していくことが必要と指摘しました。特に、目標の達成に向けて力を合わせていく上では、経営層のコミットメントが必須となります。また、持続可能な成長には企業に蓄積された暗黙知が重要であることを踏まえ、人的資源の質を高めていくことが企業と社会の長期的な発展に不可欠であると述べました。
黄氏はシンポジウムを振り返り、こう述べています。「このイベントは、調査の面でも今後の活動実施の面においても非常に有益なものになりました。好事例など、後藤教授による日本側の調査の発表からは学ぶことが多く、今回のシンポジウムで共有できた調査の成果や見解を中国側の調査にも反映させる予定です。また今後、中国で同様のイベントを行う上でも、本イベントは大いに参考になるものでした。」
[写真:基調講演を行った黄昆氏(中国労働・社会保障科学研究院)]
_______
「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムは、EUが資金拠出してILO、OECDとの緊密な連携により立ち上げられました。アジアの6ヵ国(中国、日本、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)で実施され、企業の社会的責任(CSR)と責任ある企業行動(RBC)に関する課題や機会を話し合う場を提供しています。プログラムでは、国際的に認められた指針であるILOの多国籍企業宣言とOECDの多国籍企業行動指針に基づいて、調査、普及、政策アドボカシー、セミナー開催等の活動に取り組んでいます。

また、中国労働・社会保障科学研究院の黄昆氏は、中国の電子・電機産業における調査の成果を発表しました。調査では、数多くの中小企業が含まれる中国のサプライチェーンの複雑性が浮き彫りとなりました。黄氏は提言の一つとして、こうした中小企業の能力を強化するために、行政機関やバイヤー企業による支援の必要性を訴えました。この提言は、日本側の調査の好事例である、バイヤー企業からサプライヤー企業への技術支援や助言の提供とも軌を一にするものです。さらに、日中双方の調査ではいずれも対話の重要性が指摘されました。

近畿経済産業局の内海美保氏は、関西SDGsプラットフォームの事例を基に、政府の役割について語りました。このプラットフォームには、企業、自治体、市民団体、教育研究機関など、800超の組織が加盟しており、セミナーやワークショップの定期的開催や参加を通じて、情報共有や企業同士の取り組みの紹介を行い、業界を超えた企業間連携を後押ししています。同氏はまた、近畿経済産業局の活動として、関西の企業がアジアに進出した際に本業を通じて現地のニーズや課題に対処した好事例を紹介しました。
後藤教授は議論の中で、SDGsを実装化していくために、ステークホルダーを特定し、その関与を促していくことが必要と指摘しました。特に、目標の達成に向けて力を合わせていく上では、経営層のコミットメントが必須となります。また、持続可能な成長には企業に蓄積された暗黙知が重要であることを踏まえ、人的資源の質を高めていくことが企業と社会の長期的な発展に不可欠であると述べました。

[写真:基調講演を行った黄昆氏(中国労働・社会保障科学研究院)]
_______
「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムは、EUが資金拠出してILO、OECDとの緊密な連携により立ち上げられました。アジアの6ヵ国(中国、日本、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)で実施され、企業の社会的責任(CSR)と責任ある企業行動(RBC)に関する課題や機会を話し合う場を提供しています。プログラムでは、国際的に認められた指針であるILOの多国籍企業宣言とOECDの多国籍企業行動指針に基づいて、調査、普及、政策アドボカシー、セミナー開催等の活動に取り組んでいます。