ILO新刊:男女平等

ILO新刊:中南米・カリブの働く女性が平等に至る道のりは長く険しい

記者発表 | 2019/08/27

 男女格差がなかなか解消されず、労働における男女平等の達成における歩みが見られない中南米・カリブ諸国は、現行政策の見直しや、ステレオタイプ、行動様式、社会規範などのいわゆる目に見えない要素を含む政策上の課題への重点的な取り組みなど、変化をもたらす一連の措置を採用する必要があると、このたび発表されたILOの新刊書は説いています。

 ILO中南米・カリブ総局の年次刊行物『Panorama Laboral(労働概観・西語)』のテーマ別シリーズ第5号として刊行された『Mujeres en el mundo del trabajo: Retos pendientes hacia una efectiva equidad en América Latina y el Caribe(仕事の世界における女性:中南米・カリブにおける実効的な公平性に向けた課題・西語)』は、同じような仕事内容、同じような経験、教育、家庭状況であったとしても、この地域では、時給換算で女性は平均して男性よりも17%低い賃金を得ていることを示しています。女性の労働力率は2000年までは大きな上昇を示していたものの、それ以後は鈍化し、男性よりも25ポイント低い50.3%に留まっています。同時に、女性は依然として家事の8割を負担しており、これが仕事の世界への実効的な参加を制限しています。報告書は「家事分担の改善こそ、機会平等における進歩のために必要な、多分最も重要な文化の変化」と説いています。

 報告書はまた、男女不平等が最も激しいのは、所得階層下位20%と農山漁村地帯の自営業であることを示しています。

 6章構成の本書はILOが誕生してからの100年間の労働市場における女性の状況を概観すると共に、仕事の未来に関する章では、適切な措置が講じられない場合、男女格差がさらに増す可能性を指摘しています。仕事の世界への女性の参加を改善する方法についての章では、現行政策手段の見直し・改定から、より積極的な労働市場政策の考案まで幅広い提案を示しています。

 報告書の調整責任者を務めたILOのウーゴ・ニョッポ地域経済専門官は、男女格差と貧困問題の関連性を指摘し、「育児・介護といった無償のケアの責任は、女性が労働取り決めにおける柔軟性を求めることを強い、その結果、交渉力が弱く、条件も悪い仕事を選ぶ可能性が男性よりも高くなる」と述べています。

 フアン・ウントILO中南米・カリブ総局長代行は、「女性を労働力に組み込むことに関しては、非常に重要な前進が見られるのは確かであるものの、平等に至る道のりはまだ長く、時に険しい」と説いています。そして、「性差による違いは、今日最も正当化できない不平等形態の一つであり、より豊かで公平かつ結束した社会を構築する道にある明らかな障害物」と指摘しています。


 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。