EPIC

世界のリーダー、企業らが2030年までに男女賃金格差を縮小することを誓約

記者発表 | 2018/09/26
ニューヨークで開かれたEPICの誓約イベント模様

 国連総会が開かれているニューヨークで2018年9月26日に開かれた「同一賃金国際連合(EPIC)」のハイレベルイベントにおいて政府や民間企業、労働組合、市民団体のリーダーらから2030年までに男女賃金格差を縮小する具体的な行動についての誓約が行われました。ILO、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)、経済協力開発機構(OECD)が主導して2017年に発足したEPICは、男女同一価値労働同一賃金を現実のものとするために、国内、地域、世界の様々な行動主体の結集を図り、政府、使用者、労働者、労使団体、その他の利害関係者を支援しています。

 同一価値の労働に対して女性の賃金が男性よりも低い状況は部門を問わず世界中で見られ、賃金不平等は経済成長及び女性の仕事における成功を阻む最も根深い障害の一つに挙げられます。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、とりわけその目標5とターゲット8.5においてこの重要な問題に優先的に取り組むこととしています。賃金の平等は女性に力を付けるだけでなく、包摂的な社会の促進、貧困削減、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)や男女平等のための条件の形成などといったそのほかの主要な目標の達成にも重要な影響を与える可能性があります。

 労働力のあらゆる部分まで、同一価値の労働を行う男女の同一賃金を確保するとの公約が行われたイベントにおいて、EPIC事務局の主導者としてガイ・ライダーILO事務局長プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長アンヘル・グリアOECD事務総長は、世界のリーダーらを経験共有の機会に招き、好事例の文書化・普及を進め、男女の賃金不平等の問題に国際政治の注意を喚起することによって男女賃金格差の縮小に向けた歩みを加速化することを誓いました。

 イベントにはアイスランドのグドゥニ・トルラシウス・ヨハネソン大統領、パナマのイザベル・デ・サイン・マロ・デ・アルバラード副大統領兼外務大臣といった首脳クラスの出席もあり、ペルーからヨルダン、スイスからカナダに至る様々な国の政府が、◇官民両部門における不平等な報酬を禁止する法律の実施、◇同一報酬法の遵守を監視する国内委員会の設置、◇同一賃金の重要性に関する全国的啓発キャンペーンの開始を誓約することによって同一賃金達成に向けた歩みを加速させるという共通の理念を表明しました。

 アイスランドのヨハネソン大統領は、性差に基づく差別的慣行を禁じ、同じ雇い主の下で働く男女の同一賃金、平等な雇用条件を求める同一賃金証明法の実施を約しました。国際労働組合総連合(ITUC)は、保育への投資、最低生活水準の設定、ケア労働者の社会的保護の確保に関する広報提言キャンペーンを通じて同一賃金の達成を目指す啓発事業の実施を公約しました。国際使用者連盟(IOE)は性差に基づく賃金差別に特別の注意を払いつつ、就労に係わる基本的な原則と権利を維持し擁護する公約の一部として、男女平等及び非差別の好事例を促進する活動の強化を約しました。セーブ・ザ・チルドレン市民参加のための世界連合(CIVICUS)などといった市民団体は、構成組織が組織内での男女均等を確保するために賃金ポリシーの内部点検を行い、賃金格差を縮小する取り組みを支援することを約しました。

 イケアデロイトペプシコネスレノバルティスなどのグローバル企業の参加もあり、◇無意識の偏りと構造的な障壁の縮小を目的とした採用・昇進慣行の見直し、◇すべての労働者に公正を確保する最善事例の把握と促進、◇性差に基づく差別を禁止するポリシーの実施などの公約を行うことによって、EPICの使命に対する忠誠を表明しました。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「世界中で女性がいまだに同一価値の労働を行う男性よりも低い賃金を受けているという事実は、最も顕著かつ具体的で広く浸透している差別の表現形態」と指摘し、「このメッセージがようやく聞き届けられ、物事が変化し始めるよう確保すること」を「緊急事項」と強調しました。

 ムランボ=ヌクカUN Women事務局長は、「男女賃金格差の縮小には力強い社会的保護制度の存在が決定的に重要」と指摘し、女性に有給の産前産後休暇、手頃な料金の保育・高齢者介護サービス、持続可能な基盤構造を利用できる機会が与えられたところでは有償労働に従事する女性の増加が見られることを挙げ、来年の女性の地位委員会でこの問題を取り上げることを紹介し、社会的保護制度の改善に向けた歩みの加速におけるEPICの助力に対する期待を示しました。

 グリアOECD事務総長は、「男女賃金格差はそれを被っている人たちにとって不公正なだけでなく、我々の経済にとっても害になる」と指摘し、同一賃金がなければ、生産性も競争力もそして幅広く経済全般が損害を受ける状況に注意を喚起し、「男女同一賃金の達成に成功したとすれば、数億人の女性とその家族の生活の質を即座に改善できますが、私たちにはその力があります」と訴えました。


 以上はニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。