中南米・カリブ

ILO定期刊行物『中南米・カリブの労働概観』2017年版:3年連続上昇を示した失業率が2018年には低下の見込み

記者発表 | 2017/12/18

 このたび発表されたILOの年次刊行物『Panorama laboral 2017 de América Latina y el Caribe(中南米・カリブの労働概観2017年版・西語)』は、2014年6.1%→2015年6.6%→2016年7.9%→2017年8.4%と3年連続で上昇してきた中南米・カリブ地域の失業率が2018年にはようやく改善して8.1%に低下する予想を示しています。失業者が200万人増えて2,640万人に達したことを示すこの地域の状況に強く影響を与えているのは、域内労働力の約4割を擁し、2017年第3四半期の失業率が前年同期比1.8ポイント増の約13.1%と高止まりを示すブラジルの状況です。

 ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長は、一般的に言ってこの報告書が示している主な変化は、「過去2年間に記録された労働市場の幅広い悪化が終わり、2018年には成長が加速し始めるかすかな光が見られる」という点であり、「この実現は、新たな改善期の引き金になる」と説明しています。しかし、同時に、失業は労働市場の最も目に付く部分に過ぎず、「なかなか解消されない男女不平等、若者の就労の場の欠如、非公式経済の永続に寄与している雇用の質に関連した問題など、域内諸国が考慮に入れるべき雇用分野のその他の側面」に注意を喚起しています。

 女性の労働力率は調査開始以来初めて50%を超えて50.2%に達しましたが、男女格差は依然として存在し、労働力率の点でも就業率の点でも女性の数値は男性の数値を20ポイント下回っています。2017年第3四半期の女性の失業率10.4%は依然として男性の1.4倍に上ります。

 2017年第3四半期の若者の平均失業率は前年同期比0.6ポイント増の19.5%に達しています。これは域内の若者労働力5人に1人に相当する約1,000万人に職がないことを意味します。

 報告書はまた、特別テーマとして、「2005~15年の中南米・カリブの賃金の推移」に1章をさき、過去10年間で中南米の実質賃金は19.8%(年1.8%)、実質最低賃金は42%上昇したことを示しています。

 サラサール=シリナチス総局長は、地域の労働市場は、「労働・社会指標の一般的な悪化の時期を経て変化期に入ってきたように見える」とした上で、「この改善はより高い経済成長が達成されるか否かに左右されよう」と説き、予想される1.2~2%の経済成長では、「貧困を迅速に減らし、中流階級の資金需要を満足し、社会・労働市場指標を真に変えるような影響を与えるには不十分」と指摘し、域内諸国に求められている5~6%の経済成長は、「生産力の発展と多様化の欠如と生産性、教育・職業訓練と基盤構造とのそれぞれのギャップを埋めることによって初めて達成されよう」と説き、「より多くのより良い仕事を伴う、より持続的、包摂的、持続可能な成長を進めるにはこれが唯一の方法」と強調しています。


 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。