ILO新刊:中南米・カリブの管理職における女性

ILO新刊-中南米・カリブでは女性ビジネスリーダーが増加、企業トップに関してはまだ進展の余地あり

記者発表 | 2017/05/23

 2015年に出されたILO使用者活動局の刊行物『Women in business and management: Gaining momentum(勢いづくビジネスと管理職における女性・英語)』は、トップ管理職における女性の割合はまだ低いものの、この20年間で中間・上級管理職の女性は増え、データが得られる108カ国中80カ国で女性管理職の割合が増加していることを示しました。この地域版としてこのたび発表された新刊書『Women in business and management: Gaining momentum in Latin America and the Caribbean(中南米・カリブで勢いづくビジネスと管理職における女性・英語)』は、中南米・カリブでは女性の労働力率が世界の下降傾向とは対照的に上昇を示しており(2006年48.5%→2016年49.7%)、企業トップに占める女性こそ4.2%と改善の余地があるものの、高技能専門職の女性の増加によってビジネスと管理職における男女の多様性に関し、世界のリーダーとなるべく道を邁進していると記しています。

 報告書はデータが得られる域内全ての国で高等教育修了者数では女性が男性を上回り、専門職、中間・上級管理職の女性は大幅に増加し、ほとんどの国で管理職に占める女性の割合は3割を超え、域内19カ国では欧米先進諸国にも匹敵する4割以上を記録していることを示しています。女性管理職の割合が世界で最も高いのは59%のジャマイカであり、これに5割以上のベリーズ、ケイマン諸島、コロンビアが続いています。

 しかし、トップ管理職に関しては女性の不在が目立ち、最高経営責任者(CEO)や取締役に占める割合では他の地域に後れを取っています。中南米・カリブの上場企業1,259社中で女性CEOは4.2%に過ぎず、半分近くの役員会が男性だけで構成されており、女性取締役の割合は平均8.5%に過ぎません。デボラ・フランス=マッサンILO使用者活動局長は、「ビジネス上の論拠がかつてないほど強くなっている」として、あらゆるレベルの管理職、リーダー的職位における男女の多様性は、競争上の強みとなることを指摘し、中南米・カリブのビジネスにおける相当の進展を評価しつつもこれまでの進展が鈍い役員レベルについて「もっと注意が必要」として、「女性が成功し、地域全体に形成された勢いを維持するため、女性のための機会と正しい条件」を形成する必要性を訴えています。

 女性がリーダー的地位に就くのを阻む最大の障害としては、社会の伝統的な男女の役割や女性の方が負担が重い家族的責任などが挙げられています。ここでの一つの指標は無償労働に費やす時間ですが、中南米10カ国の平均では女性の週無償労働時間は男性の1.7~3.5倍に達することが判明しています。

 さらに、地域全体にわたって根強い男女賃金格差が見られ、全体的な格差は世界平均の0~45%の範囲に収まるものの、懸念される傾向として管理職における格差の拡大が見られます。これは才能ある多くの女性がトップ管理職を目指して奮闘し、その地位を占めることを妨げる重要な障壁となっています。

 このように中南米・カリブにはなおも「ガラスの天井」が存在しますが、報告書は地域の女性管理職が人事や広報などといった世界的に女性が多い分野ではなく、調査研究や製品開発、業務や総務などといった補佐的でない管理職に就く場合が増えている事実に光を当て、「明確な進展の印」として、ほど遠くない将来、ガラスの天井が打破されることへの期待を示しています。

 報告書はILO使用者活動局がペルーの全国民間企業団体連合(CONFIEP)と共催して2017年5月23日にリマで開く地域会合で発表されます。地域の性的多様性における進展加速を図る、より幅広い取り組みの一部をなすこの会合には域内のビジネスリーダーと使用者団体代表が出席し、トップ管理職を中心に職場における女性の前進を阻む障害と達成された進展を巡る話し合いを行います。翌24日に開かれる使用者団体向けワークショップでは、会員企業の間で性的多様性をさらに促進する方法が検討されます。

 ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長は、「経済、政治、社会の各面で勢いが形成されつつある今こそ、障壁を打ち崩し、才ある集団全体の多くの強みの活用に努めるよう確保すべき時」と説き、「今回のような会議は、進展を振り返り、将来に向けた行程表を提供する重要な機会となる」と期待を表明しています。

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 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。