第71回国連総会

第71回国連総会とILO:権利を基盤とし、人を中心に据えた取り組みに向けた活動の増大を図る

記者発表 | 2016/09/19

 「持続可能な開発目標:皆が一丸となって私たちの世界を変えるために一押し」をテーマにニューヨークの国連本部で2016年9月13日に開幕した第71回国連総会は、2015年に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現に向けて国際社会がこれまでに手がけた事項とこれからの活動を詳しく検討していくことになっています。議長に選出されたフィジーのピーター・トムソン大使は、就任に際しての宣誓で「本第71会期は、17の持続可能な開発目標すべての実施における進行を目撃する年としなくてはならない」と述べて決意を表明しました。

 議長週間の冒頭を飾るものとして、9月19日には難民と移民に関するサミットが開かれ、国際的な対応を改善する青写真を定めることが予定されています。最も脆弱な集団の一つに数えられる移民は現在、世界人口の3%以上を占めると見られます。今年5月に発表された国連事務総長報告を討議のたたき台とするサミットは、国際的な人の流れの統治を強め、移民と難民の大きな動きにより良く対応し予測可能な仕組みを形成するまたとない機会を提供する画期的な瞬間であると言えます。このイベントを補足するものとして、アメリカのオバマ大統領も難民リーダーズ・サミットを主催し、各国政府が難民の悲哀に取り組む新たな公約を誓う場を提供する予定です。話し合いの優先事項には、進行中のシリア紛争とそれによって引き起こされた難民危機などが含まれると見られます。

 潘基文国連事務総長にとっての最後の総会であり、私たちが思い描く2030年の世界を形成する手段となることが期待される今総会において、ILOは仕事と雇用に関係した問題の重要性の高まりに光を当て、パートナーシップを通じて野心的な開発課題の追求を成功させる方法を示す予定です。国際社会の活動に対するILOの貴重な貢献であるところの、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人に実現するという課題は、良質の雇用の創出及び数百万人の労働者の労働条件改善を手助けする各国政府及び国連諸機関の活動を支援する一連の重要な政策を示す処方箋となっています。ディーセント・ワークの追求及び達成は、貧困削減や保健・教育面のより良い結果、女性の地位向上、平和で包摂的な社会、持続可能な都市、天然資源の管理、気候変動の影響緩和などといった他の持続可能な開発目標にも幅広い重要な影響を与える可能性があります。ILOは包摂的で持続可能な経済成長、強制労働、児童労働、労働力移動、現代的な職場関係の改善に向けた社会対話、生産的な完全雇用、すべての人のディーセント・ワークといった事項に加盟国と共に取り組みます。生産年齢人口の伸びに合わせるためだけでも2030年までに世界全体で6億人分の新たな就労機会を創出しなくてはならないという課題を前に、各国政府、労使団体、国連諸機関、市民社会、財団やシンクタンクと協力して革新的な解決策を探求します。

 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、17の持続可能な開発目標とその具体的な達成目標である169のターゲットで構成され、2030年までに経済、社会、環境の持続可能性を達成してこの世界を変えるための道筋を示しています。この目標8として、「持続可能で包摂的かつ持続的な経済成長、生産的な完全雇用、すべての人のディーセント・ワークの促進」が目指されており、その達成目標の一つであるターゲット8.7として「強制労働、現代の奴隷制、人身取引、あらゆる形態の児童労働の根絶」が掲げられています。

 ILOはフォード財団、複数国政府、民間セクター、市民社会の行動主体と力を合わせ、このターゲットの達成に向けた政治的意思を構築し、強制労働、現代の奴隷制、人身取引、児童労働の根絶に向けた効果的な措置を推進するグローバルなパートナーシップを立ち上げます。2016年9月21日GMT19時(日本時間翌22日4時)にニューヨークのフォード財団で開かれるハイレベル・イベントで公式に開始される「8.7連合」は、強制労働、現代の奴隷制、人身取引、児童労働のない世界に向けて様々な分野の利害関係者の活動を強化し、政治的支援を活気づかせることを目指しています。この新しいイニシアチブは、◇2025年までにあらゆる形態の児童労働の根絶を目指すターゲット8.7の達成速度の加速、◇調査研究及び知識共有のより良い調整、◇イノベーション(革新)の推進、◇資金の増加とてこ入れの四つの主な分野に重点を置き、一連の活動を通じて、貧困や教育、男女平等、ディーセント・ワーク、不平等、平和と正義といった他の持続可能な開発目標との調整を高めつつ、その前進を手助けすることが期待されます。

 イベントの模様は8.7連合のウェブサイトでご覧になれます。8.7連合のツイッター・アカウント(Alliance8_7)で最新の動きを追ったり、ハッシュタグ#Achieve87を用いて会話に参加することもできます。

 ILOはまた、世界銀行との協同事業として、普遍的社会的保護が経済発展及び社会開発に与え得る決定的に重要な貢献に光を当て、貧困に終止符を打ち、繁栄の分かち合いを後押しする上でそれがカギを握り得ることを示す新たなイニシアチブを開始します。同じく9月21日に開かれるこの「普遍的社会的保護のためのグローバル・パートナーシップ」発足記念イベントでは、普遍的社会的保護を達成した20の途上国から学んだ教訓が紹介されます。

 ILOが直接関与するこの他の重要なイベントとして、グローバルな施策と仕事の未来に関する対話の機会を挙げることができます。これは仕事の世界に新たに生まれつつある趨勢の影響と世界の労働市場が直面している課題に関する理解の促進を目指すものです。

 また、2016年9月20日には、ILOが副議長を務める「保健医療部門の雇用と経済成長に関する国連委員会」の最終報告が発表になります。保健医療及びソーシャルワーク部門における仕事の創出を刺激し、導く行動を提案することを任務として2016年3月に潘基文国連事務総長によって設置されたこの委員会は、フランソワ・オランド仏大統領とジェイコブ・ズマ南アフリカ大統領が共同議長、ILO、世界保健機関(WHO)、経済協力開発機構(OECD)が共同副議長を務めています。

 第71回国連総会は持続可能な開発目標に関する真の進捗の歩みを確保する上で決定的に重要です。ディーセント・ワークの課題が国際的な政策課題の上位にあり続け、2030アジェンダの17の目標全ての大幅な進展に寄与するよう確保するにはILOの取り組みが中心的な位置を占めているのです。

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 以上はILO国連事務所による次の2点のニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。