第104回ILO総会

第104回ILO総会閉幕:社会正義を前進させるには仕事の未来の先読みが必須とライダーILO事務局長

記者発表 | 2015/06/13

 ILO加盟国の大半から約160人の大臣を含む計4,500人近い政府、使用者、労働者の代表が出席し、6月1日から2週間にわたってジュネーブで開かれていた第104回ILO総会が13日に閉幕しました。6月12日にはクック諸島の加盟が承認され、ILOの加盟国は186カ国となりました。

 総会はインフォーマル経済で働く多数の労働者や経済単位のフォーマル経済への移行を支援する国際的な枠組みとなることが期待される新たな勧告や予算総額7億9,700万ドルの2016/17年度事業計画などを採択しました。6月11日に開かれた「気候変動と仕事の世界」をテーマとする仕事の世界サミットでは、2014年のノーベル平和賞の共同受賞者である「児童労働に反対するグローバルマーチ」のカイラシュ・サティアルティ代表フランスのフランソワ・オランド大統領パナマのフアン・カルロス・バレーラ・ロドリゲス大統領の特別演説も行われました。

ライダーILO事務局長による第104回ILO総会閉会演説(英語)

 ガイ・ライダーILO事務局長が今年の総会に提出した、創立100周年記念事業の一つである「仕事の未来イニシアチブ」の詳細案は政労使三者の強い支持を受けました。事務局長はこれを受けて、ただちに計画を実行に移す考えを示し、加盟国政労使に資金面での支援と参加を要請しました。このイニシアチブは、仕事と社会、人間らしく働きがいのある仕事、作業・生産組織、仕事の統治(ガバナンス)の四つのテーマについて、幅広い世界的な議論と調査研究を行い、これをもとにハイレベル委員会が準備する仕事の未来に関する報告書が2019年の100周年記念総会に討議資料として提出されるというものです。これは次の100年に入るに当たり、社会正義に関して付託された任務をILOが実現する方法を規定するものになることが期待されます。ライダー事務局長はこの作業について、2015年以降の開発課題や気候変動パリ会議のフォローアップなどの同時に進行する他の重要な国際的なプロセスとも結びつける希望を示しました。

 アラブ被占領地の労働者の状況に関する事務局長報告付録は、パレスチナにおける前年比25%超の失業者数増加などの深刻な状況を報告しており、多くの総会出席者が演説でこの苦境に言及しました。

 総会の基準適用委員会は、条約適用上の問題が指摘されている24の個別案件の審議を行い、モーリタニアの強制労働条約(第29号)、カザフスタンとスワジランドの結社の自由及び団結権保護条約(第87号)の適用状況に総会の注意を特に喚起しました。委員会はまた、農業の結社権と農業従事者団体をテーマに、結社権(農業)条約(第11号)農業従事者団体条約(第141号)及び同勧告(第149号)を対象に実施された総合調査報告を検討し、農村経済のあらゆる労働者及び使用者に法及び実際上も結社の自由を確保する公約を再確認しました。

 人間らしく働きがいのある生産的な雇用の創出と中小企業に関する一般討議では、人間らしく働きがいのある生産的な雇用の達成において中小企業は決定的に重要との合意が大枠で達成されました。討議の結論文書は、世界の就業者の3分の2が中小企業で働き、新規に創出される雇用の大部分が中小企業におけるものであることを認めた上で、上手に設計された中小企業政策はより多くのより良い仕事の創出を助け、持続可能な経済成長に寄与するとして、中小企業の多様性に鑑み、企業の規模や産業部門、成長状態、操業年数などの特性を考慮に入れた介入策を提案しています。ILOに対しては、金融機会を含む起業家精神の育成、企業活動のための環境作り、生産性や労働条件の改善、バリューチェーン(価値連鎖)開発、協同組合企業の促進に焦点を当てて現行の介入活動の内容を維持することや、インフォーマルな中小企業のフォーマル化に向けた活動を強めること、活動を戦略的かつ測定可能なものとし、中小企業政策の分野で何が機能し、何が機能しないかに関し、政府及び社会的パートナーを方向付けるために、介入策の影響について精査する必要性に注意を払うことが求められています。

 社会的保護の分野の内で労働者保護について初めて行われた反復討議では、ILO加盟国で労働者保護における前進が見られたことについては合意が達成されたものの、依然としてあまりにも多くの労働者が法の適用対象から除外されているか、法が実際には適用されていないか、保護水準が不十分であるといった理由からそのような進歩の恩恵を受けていないことが指摘されました。この問題を審議した委員会はそこで、賃金、労働時間、労働安全衛生、母性保護といった分野における労働条件の規制を「効果的かつ包摂的な労働者保護の中心事項」に位置づけ、仕事の世界で現在進行中の変化と歩調を合わせて労働者の保護を司るような法、規制、制度の必要性を説いています。また、性差についての配慮を強め、すべての労働者に保護を広げることの重要性、そしてそのような保護の達成に寄与するものとして、社会対話と団体交渉に関する実効性のある仕組みの重要性が強調されました。活動優先分野としては、◇労働時間と、仕事、家庭、私生活の調和、◇中小企業にも労働者保護の範囲を拡大すること、◇非標準的な雇用形態の労働者の実効的な保護、◇作業組織の変更からもたらされる可能性がある、心理社会的リスクと職場内暴力、関連したストレス及びメンタルヘルス問題、◇責任ある公共調達慣行を通じた労働者の保護の促進、の諸分野が特定されました。

 第104回総会の議長はラトビアのイエバ・ヤウンゼメ厚生事務次官が務めました。6月5日には、「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」の最初の批准国となったニジェールの批准記念式典が開かれました。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。