第104回ILO総会

第104回ILO総会:インフォーマル経済に取り組む歴史的な労働基準を採択

記者発表 | 2015/06/12

 世界の労働力の半数以上が属していると見られるインフォーマル(非公式)経済は、就労に係わる権利の否定、良質の雇用のための十分な機会の欠如、不十分な社会的保護、社会対話の欠如、低生産性といった、持続可能な企業の育成を阻む大きな障害となる諸要素を特徴としています。ジュネーブで開かれている第104回ILO総会は6月12日に、インフォーマル経済に属する多数の労働者や経済単位のフォーマル(公式)経済への移行を助けると期待される新たな国際労働基準を採択しました。政労使共同での勧告の完全実施などを求める「インフォーマルからフォーマル経済への移行を円滑化する取り組みに関する決議」も同時に採択されました。

新勧告の採択を歓迎するライダーILO事務局長(英語)

 賛成484票、反対1票、棄権5票と、加盟国政労使(日本は政労使とも賛成)の圧倒的多数の支持を得て採択された「インフォーマルからフォーマル経済への移行に関する勧告(第204号)」は、ほとんどの人は自ら選択してではなく、フォーマル経済における機会や他の何らかの生計手段の欠如を理由としてインフォーマル経済に加わる事実を認め、インフォーマル経済からフォーマル経済への移行を円滑化する可能性がある政策と措置に関する実用的な手引きと戦略を示しています。勧告は、フォーマル企業でインフォーマルな職務に就いている雇用者や雇用関係が規制されていない労働者も含み、「法または実務上、公式の取り決めの対象となっていないか、公式の取り決めが十分に適用されていない労働者及び経済単位の行うあらゆる経済活動(不正な活動は含まない)」をインフォーマル経済と定義し、1)労働者の基本的な権利を尊重し、所得保障、生計、起業家精神のための機会を確保しつつ、インフォーマル経済の労働者及び経済単位のフォーマル経済への移行を円滑化する方法、2)フォーマル経済における人間らしく働きがいのある仕事と企業の創出、維持、持続可能性、そしてマクロ経済政策、雇用政策、社会的保護政策、その他社会政策の整合性を促進する方法、3)フォーマル経済の仕事のインフォーマル化を防止する方法について加盟国に手引きを提供しています。移行円滑化戦略を設計する際に考慮に入れるべき12の指導原則を掲げた上で、各国の成功経験を元にした最善事例を参考に、法・政策の枠組みからデータ収集・モニタリングまで幅広い分野にわたって、多様な国の状況に対応する様々な取り組み方を示しつつもすべての国に通用する普遍性を保っています。

歴史的な勧告採択の意義を説く、勧告案を審議した委員会で事務局代表を務めたアジタ・ベラル・アワドILO雇用政策局長(英語)

 地域差はあるものの、途上国では就労者の45~90%、そして従業員数10~250人の中小企業では最大9割までがインフォーマル経済に属しています。ほとんどの国でインフォーマル経済では女性が男性よりも多く働き、また、若者や少数民族、移民、高齢者、障害者といったその他の脆弱な集団の割合が不均衡に高くなっています。インフォーマル経済に対する取り組みを扱った初の国際労働基準として、望ましいフォーマル経済移行方向を指し示し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を達成し、インフォーマル経済で働く人々の就労に係わる基本的な原則と権利を尊重、促進、実現する様々な道を具体的に示すこの勧告の採択は、仕事の世界の歴史に残る画期的な出来事と言えます。

新勧告について語る第104回ILO総会・インフォーマルからフォーマル経済への移行委員会の役員3氏(英語)

 ガイ・ライダーILO事務局長は、何年もかけて政労使の間で徐々に育まれてきた合意であるところの「人々をインフォーマル就業からフォーマル就業の状態に移動するのは正しいこと」との認識の実現は容易なことではなく、複雑で時間のかかるプロセスであることを認めつつも、加盟国がこれを実現する助けになる国際的な手引きの枠組みを形成した点で「この勧告の価値は大きい」として、「重要なのは、単なる勧告の採択ではなく、その実践」と説いています。勧告の草案を審議した委員会の委員長を務めたヴァージル・シーフィールド南アフリカ政府代表は、とりわけ途上国で広く見られるインフォーマル経済の変革を助け、その数百万人の労働者の移行を円滑化し、フォーマル経済における雇用創出を促進し、さらなるインフォーマル化を防止するであろうこの新しい勧告について、「灰色経済を白日の下にさらす上での大きな前進」と評価しています。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。