2015年国際女性の日

2015年国際女性の日(3月8日):仕事の世界における男女平等はいまだ十分に進展せず、とILO

記者発表 | 2015/03/06

 今年は、1995年に北京で開かれた第4回世界女性会議で、男女平等と女性の地位向上を前進させるための幅広い政策課題を示した北京宣言と行動綱領が採択されてからちょうど20年目に当たります。今年の国際女性の日(3月8日)に向けて、仕事の世界におけるこの20年間の歩みをまとめたILOの概説資料は依然として多くの課題が残っていることを示しています。

 政策、法制、国際労働基準の批准の点では注目すべき進歩があり、例えば、1995年に126カ国だった同一報酬条約(第100号)批准国は現在171カ国、差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)批准国は122カ国から172カ国に増えています。しかし、世界中ほとんどの場所で、女性はしばしば低く評価される低賃金の仕事に就き、教育や訓練、採用の機会からも除外され、意思決定力・交渉力は限られ、無報酬のケア労働のほとんどの責任をなおも担っているといったように、女性は職場における幅広い差別と不平等を経験し続けています。1995年に女性52%、男性80%だった労働力率はほとんど変わっておらず、今でも女性は約50%、男性は77%となっています。2014年11月に開かれた主要20カ国・地域(G20)のブリスベン・サミットで掲げられた2025年までに労働力率の男女間格差を25%減らす目標が達成されたとしたら1億人以上の女性が新たに労働力に加わると見られます。

 今日、女性が所有・経営する企業は全体の3割以上に達するものの、その中心は小規模・零細企業となる傾向があります。女性の役員は全体の19%に達しているものの、大手企業の最高執行責任者(CEO)に占める割合は5%を下回っています。

 男女賃金格差は根強く、一般に女性の収入は男性の平均77%になっています。今のペースでは男女の公平賃金が達成されるには少なくとも71年かかるとILOでは見ています。

 暴力は依然として女性の尊厳及びディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を損なう最大の要素であり、女性の約35%が身体的・性的暴力によって就業に影響を受けています。

 母性保護の機会は改善し、14週間以上の産前産後休業を提供する国は38%から51%に増えたものの、いまだに全女性労働者の41%に当たる8億人以上に十分な保護が提供されていません。男性のケア責任を認める国も増えてきており、1994年には調査対象国の28%にしか存在しなかった父親休暇が2013年現在47%の国に見られます。このように男性もケア責任を担うようになってきたものの、例えば、家族の世話や家事に費やす時間は欧州連合(EU)では女性が平均週26時間であるのに対し、男性は9時間であるといったように、依然としてケア責任の大半は女性が担い、この結果、有給雇用に就く機会が完全に限られたり、パートタイムの仕事に留まるような状況が生じています。

 国際女性の日に際し、ILOは子どもがいる女性といない女性、母親と父親の賃金格差を調べた作業文書も発表しました。『The motherhood pay gap: A review of the issues, theory and international evidence(母親の賃金格差:論点、理論、国際的な証拠の検証・英語)』と題する資料は、住んでいる場所と子どもの数に左右されるものの、子どものいる女性はいない女性よりも収入が低い場合が多いことを示しています。補正前データでは、この格差は先進国よりも途上国の方で、そして子どもの数が増えるにつれて大きくなる傾向があります。

 「働く女性の状況は20年前より良くなったかといえば、限定付でイエス、この進歩は私たちの期待通りかといえば、断然ノー」とガイ・ライダーILO事務局長は評価し、「我々は革新的になり、議論を再構成し、働く女性の権利の確保、そして男女平等と女性の経済的エンパワーメントの促進に一層強く焦点を当てる必要がある」と説いています。ILOのジェンダー・平等・多様性部のショウナ・オルネイ部長も北京会議から20年経って得られた支配的な結論として、「わずかな進歩はあったものの、働く女性が男性と同じ権利、同じ給付を享受できるにはまだ数年、ことによると何十年もかかるだろう」と語っています。ILOはこの課題に応え、現在提案されている国連の持続可能な開発目標で求められている、男女平等と女性の地位向上に関して変化をもたらすような政策課題の提供に向けた世界の活動を支える取り組みを加速させるために、創立100周年に向けて力を入れる活動の一つとして働く女性に関するイニシアチブを展開しています。

 オルネイ部長はまた、3月5日付でILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に「女性と仕事の未来:会話の内容を変えるべき時は今」と題する記事を投稿し、第4回世界女性会議からの20年間で、男女平等や差別に関する法律や政策の策定、条約批准、母性保護の点で大きな進展があったものの、実施面での懸念、賃金や労働力率における男女格差、ひびは入っているものの割れるには至っていないガラスの天井・壁の存在など、進展にはばらつきがあることを指摘しています。その上で、男女平等を阻む障壁の打破に向けた経済的、政治的、社会的な勢いが生まれていることを紹介し、女性は長く待たされ続けたとして、男女平等が標準の世界をいい加減実現する必要があると説いています。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表及びショウナ・オルネイILOジェンダー・平等・多様性部長による英文ブログ記事の抄訳です。