ILO新刊:男女平等

世界的な女性管理職増大の勢いを示すILO新刊

記者発表 | 2015/01/12

 このたび発表されたILOの新刊書『Women in business and management: Gaining momentum(勢いづくビジネスと管理職における女性・英語)』は、トップ管理職における女性の割合はまだ低いものの、この20年間で中間・上級管理職の女性は増え、データが得られる126カ国中80カ国で女性管理職の割合が増加していることを示しています。

 オーナーまたは経営者が女性である企業は全体の3割強に達するものの、零細・小企業の場合が多く、会社が大きくなるほどに女性がトップに就く可能性は減り、世界的大企業の最高経営責任者(CEO)に占める女性の割合は5%程度に過ぎないことを指摘して、報告書を作成したILO使用者活動局のデボラ・フランス=マッサン局長は、職場における真の男女平等達成に向けた道のりは「まだ遠く、トップ管理職の場合は特にそうである」と語っています。報告書は、もっと多くの女性に事業成長の道を開くことが平等のためのみならず、国の発展のためにも「決定的に重要」と強調しています。

 取締役が全員男性である企業がいまだに一般的であるもののその数は減ってきており、少数ながら女性取締役が2割を超える国もあり、女性の取締役会議長が最も多いノルウェー(13.3%)やトルコ(11.1%)ではこの割合が1割を超えています。しかし、フランス=マッサン局長は、いまだに「ガラスの壁」が存在して女性は人事や広報、総務のような特定の種類の管理職に集中している事実を指摘して、最高経営責任者や会社社長のようなトップ職の候補者を増やすためにも「戦略的な分野の上級管理職の地位に到達する女性の数が増えることが決定的に重要」と説いています。

 報告書は幅広い国のビジネス及び管理職における女性に関する統計に加え、管理職及びそれ以下のレベルでの男女賃金格差や女性の教育達成度に関する統計も含むと共に、より高い管理職レベルに女性を進めようとの動きが世界中で増してきている状況を明らかにし、1,200社以上の企業調査から得られた様々なイニシアチブを紹介しています。

 2012年またはそれに最も近い年の得られるデータを元にした世界126カ国の女性管理職比率では、ジャマイカ(59.3%)が最も高く、パキスタン(3%)が最も低くなっています。主な国では他に、15位米国(42.7%)、25位ロシア(39.1%)、41位英国(34.2%)、96位日本(11.1%)、そして地域別の首位は、アフリカが26位のガーナ(39%)、アジアが4位のフィリピン(47.6%)、中南米が2位のコロンビア(53.1%)といったようになっています。

 報告書は教育資源のほぼ半分が女子に投入されている事実に注意を喚起して、高技能女性を引き寄せ、離職を防止し、昇進させることへの企業の投資はビジネスのためになる可能性が高いと説いています。さらに、各国の使用者団体は女性に指導的役割を与えるビジネス上の根拠に関する啓発活動において大きな役割を演じることができるとして、女性の活躍を推進する日本経済団体連合会(経団連)の活動などを紹介しています。この調査研究は、「女性の継続的な労働力率上昇が世界の成長と競争力の最大のエンジンとなっていることを示している」と語るフランス=マッサン局長は、意思決定に携わるトップレベルのチームや構造への女性の参加と企業成績との正のつながりを示す研究がますます増えている事実を指摘しつつも、何らかの行動が取られない限り、トップレベルで均等を達成するには100~200年かかる可能性があるとの見通しを示し、「単純に言って女性のトップはビジネスのためになる」と説き、必ずしも必要または効果的でなく、異論の多い強制割当制を避けるためにも今こそガラスの天井を永遠に打破しようと呼びかけています。

 報告書は現存する男女格差の縮小に向けて以下のような策を提案しています。

  • 特別の待遇や割当制に対する代案として、仕事と家庭に充てられる時間を管理する柔軟な解決策の探求
  • 母性保護や育児支援の提供が才能ある女性の募集・離職防止を通じて会社に付加価値をもたらす可能性
  • 文化的障壁を打破し、セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)に立ち向かう意識改革
  • 高い教育水準にもかかわらず女性が取り残されるような「穴あきパイプライン」対策
  • 性別に配慮した人事方針・措置の実行
  • 女性がキャリアの最初から男性と同じような挑戦のしがいのある業務を与えられるよう確保すること

 

* * *

 以上は日本関連事項を盛り込んだジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

 関連広報素材として、平等と差別禁止についての啓発活動を通じて女性のキャリア開発を後押しするモンテネグロの使用者団体の活動紹介などを盛り込んで報告書の内容を紹介する音声ニュースや、モンテネグロに加えてウガンダとフィジーの女性管理職の声を伝える広報動画も作成されています。