ILOヘルプデスク 賃金、給付に関するQ&A

Q2:ILOは賃金と団体交渉に関してどのような慣行を奨励していますか。
Q3:ILOの基準では賃金のうち変動可能な(成果に応じた)部分の上限はありますか。
Q4:正規の調達又はファイナンス部門がないため、被用者が業務上必要となる物品や個人保護具を購入しなければなりません。被用者はまず自費で物品を購入し、その後会社からその費用分の返金を請求しますが、返金には長期間かかることがあります。この慣行は適切ですか。
Q5:「生活賃金」の計算方法に関するILOの見解はどのようなものですか。
Q6:労働者に住居及び食料を支給し、労働に対して現金による支払をしないことは許されますか。
Q7:懲罰としての賃金控除に関する国際労働基準はありますか。
Q8:夜間勤務にはより高い賃金の支払が必要ですか。
Q9:ある工場では無許可の休暇をとった労働者、又は最低限の品質基準を満たさない労働者に罰金を科します。
Q10:給与の支払い間隔、例えば月給か隔週払いかなどについて、また労働者に実際に賃金が支払われる日についてどのような国際規則や基準がありますか。
Q11:国際労働基準には職業あっせん手数料の扱いについて何か規定はありますか。
Q12:被用者への支払が1週間遅れた場合、これは強制労働とみなされますか。また、被用者に対する支払について強制労働とはみなされない期間の上限(2週間、1か月など)は存在しますか。
Q13:どのような条件のもとであれば労働者に制服の保証金を要求することができますか。
Q14:労働者には、懲罰の決定に対して申立てを行う権利がありますか。
Q15:当社の拠点や傘下企業の中には、当社福利厚生制度の一環として、従業員に貸付を行っているところがあります。この好事例に負の側面が生じないよう、当社としては、奴隷労働や移動の自由の阻害とみなされかねない事件が生じたり、分割払いによって日給が最低賃金を割り込んだりすることがないようにするための方針の策定を図っているところです。
Q16:私は外洋航行の一等航海士で、この5年間船上で働いています。1回の雇用契約は4~5か月が基本であり、またこれは家族や大切な人たちと離れて暮らす期間でもあります。多くの船にはインターネット接続がなく、家族との連絡はきわめて困難です。使用者が船の乗務員に定期的なインターネットアクセスを提供する必要性を定めた国際的文書は何かありますか。

賃金設定のプロセス


Q1:国際労働基準では、賃金を交渉の対象にするべきとしていますか。


A1:団体交渉は労働に関する条件を定め、労使又は労使団体の関係を規定し、労働協約へと導く自主的なプロセスです[1]。

団体交渉権は基本的権利です[2]。

ILOの結社の自由委員会は賃金、給付、及び手当が団体交渉の対象になり得ると結論付けています[3]。

団体交渉は、企業単位、部門又は産業単位、及び国又は地域単位で行うことができます。どの単位で交渉するかは当事者自身の決定に委ねられます。団体交渉に関するILOの基準及び原則では団体交渉の自主性が強調され、その国のどの単位の交渉であっても交渉を強要する、あるいは交渉に法的障壁を設けることがあってはなりません。なお、労働組合又は使用者がある特定の単位における交渉を拒否することは、結社の自由の侵害にはなりません。
[1] いくつかのILOの条約では、団体交渉実施のための枠組みを規定しています。1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)(特に第4条)、1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)、1971年の労働者代表条約(第135号)、1971年の労働者代表勧告(第143号)
[2]「労働における基本的原則及び権利に関する ILO宣言とそのフォローアップ」(1998年)第2項(a)を参照
[3]「ILO Digest of decisions and principles of the Freedom of Association Committee of the Governing Body of the ILO」第5版、ILO、ジュネーブ(2006年)第913項参照

Q2:ILOは賃金と団体交渉に関してどのような慣行を奨励していますか。

A2:多国籍企業宣言は、類似の企業が存在していない発展途上国で企業が活動する場合、(政府の政策の枠内で、)できる限りよい賃金、給付及び労働条件を提供すべきであり、(これらは企業の経済的地位に関係するものの、)少なくとも労働者及びその家族の基本的なニーズを満たすものでなければならないと定めています[1]。

多国籍企業宣言は本国政府及び受入国政府に対し、多国籍企業と労働者の間での団体交渉を促進することを奨励しています。「特に発展途上国において、政府は、低所得層や低開発地域が多国籍企業の活動からできるだけ多くの利益を得ることを確保するべく適切な方策を講じるように努めるべきである」としています[2]。また、「労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の十分な発達及び利用を奨励かつ促進するため、国内事情に適する措置がとられるべきである」とも述べています[3]。

[1] 多国籍企業及び社会政策に関する
原則の三者宣言(多国籍企業宣言)第41項
[2]多国籍企業宣言第42項
[3]多国籍企業宣言第56項

賃金の基本的保護規定


Q3:ILOの基準では賃金のうち変動可能な(成果に応じた)部分の上限はありますか。

A3:国際労働基準では支払額の計算について特定の方法を定めていません。これは賃金の決定と計算に柔軟性を持たせるためですが、労働者を不当な扱いから保護するために以下の基本的な労働者保護規定に従う必要があります。

賃金の妥当性:支払われる最低賃金は(固定賃金又は出来高払いのいずれであっても)、労働者及びその家族の基本的ニーズを満たす適正な額とし[1]、可能な限り、そして国内の慣行と条件に関連して妥当な限り、以下を考慮することとされています。
  • 国内の賃金の一般的水準、生計費、社会保障給付及び他の社会的集団の相対的な生活水準
  • 経済開発上の要請、生産性の水準並びに高水準の雇用を達成し及び維持することの望ましさを含む経済的要素[2]
  • 生計費やその他の経済条件の変化[3]
ILOは最低賃金が労働者とその家族の基本的ニーズを満たすのに十分かどうかの判定に使用すべき基準値を定めていません。ILOはその代わりに、産業部門単位での賃金決定のための社会対話、特に団体交渉と、全国的な最低賃金設定や労働協約拡大のための三者協議を提唱しています。

多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)は特に企業に適用されるILO規範です。企業に対するILO指針では賃金について、多国籍企業に対し、賃金が労働者及びその家族のニーズを満たすに十分であることを確保するよう奨励しています。特に多国籍企業は「受入国における類似の使用者」が提供するものより「不利でない」賃金及び給付を提供すべきとされています[4]。また類似の使用者が存在しない場合、多国籍企業は、(政府の政策の枠内で、)できる限りよい賃金、給付及び労働条件を提供すべきであり、(これらは企業の経済的地位に関係するものの、)少なくとも労働者及びその家族の基本的なニーズを満たすものでなければならないとされています[5]。さらに多国籍企業宣言では、雇用条件を決定する上での団体交渉の重要な役割が強調されています[6]。

労働者に対する法定通貨による直接の支払:金銭で支払う賃金は、法貨によってのみ労働者に直接支払なければなりません。約束手形、証書、クーポンによる支払を行うことはできません[7]。労働者は好きなときに自分が得た所得を使えるべきですが、自発的な形式の貯蓄は奨励されます。国内法令、労働協約又は仲裁裁定により認められており、現物給与の形式による賃金の支払が慣習となっているか望ましい場合には、現物給与の形式による賃金の一部支払を認めることができます。但し、適切で有益であることを条件とします。現物給与の価額は合理的市場価格で評価されます[8]。

支払額計算の透明性:支払は透明で、所得賃金の総額、なされるべき控除(その理由及び額を含む)、及び支払われるべき賃金の正味額を明確に示す必要があります。賃金からの控除は、国内法令、労働協約又は仲裁裁定により決められている場合にのみ行うことができます。物品の減失又は損害に対する控除は、労働者の責任が立証できる場合にのみ行うことができます[9]。何らかの控除が行われる場合、労働者には書面で通知しなければなりません。雇用を獲得又は維持する目的で使用者又は仲介者に支払う金額を控除することはできません[10]。

定期的支払:賃金は定期的に支払わなければなりません。出来高払いの場合、支払は少なくとも月2回より頻繁に行うこととされています。適切な記録を維持する必要があります[11]。雇用契約の終了に当たっては、労働者には契約の条項を考慮して妥当な期間内に、支払われるべきすべての賃金が最終的に決済されなければなりません[12]。

同一価値の労働に対する同一報酬:報酬金額は、同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬を確保しなければなりません[13]。

企業による商品又は役務の提供に関する控除の限度と条件:企業が販売する商品又は提供する役務は、妥当な価格で提供される必要があります。使用者が設置する売店や運営する施設は利潤を獲得するためではなく、関係労働者の利益のために運営されるべきです。商品又は役務の購入において強制があってはなりません[14]。

[1]1970年の最低賃金決定条約(第131号)第3条(a)
[2]1970年の最低賃金決定条約(第131号)第3条
[3]1970年の最低賃金決定勧告(第135号)第3項及び第11項
[4]多国籍企業宣言第41項
[5]多国籍企業宣言第41項
[6]多国籍企業宣言第56項「労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の十分な発達及び利用を奨励かつ促進するため、国内事情に適する措置がとられるべきである。」
[7]第110号条約第26条及び第28条
[8]第110号条約第27条
[9]第110号勧告第25項
[10]第110号条約第31条及び第32条
[11]第110号条約第33条及び第35条、第110号勧告第9項~第18項
[12]第110号条約第33条第2項
[13]第110号勧告第27項、1951年の同一報酬条約(第100号)も参照
[14]第110号条約第30条

Q4:正規の調達又はファイナンス部門がないため、被用者が業務上必要となる物品や個人保護具を購入しなければなりません。被用者はまず自費で物品を購入し、その後会社からその費用分の返金を請求しますが、返金には長期間かかることがあります。この慣行は適切ですか。

A4:購入に必要な代金が多額であり、その返金の遅れが労働者及びその家族の基本的ニーズを満たすのに困難を生じさせるような場合は、関連する国際労働基準の原則に抵触します。制度は労働者への賃金の定期的支払を妨げるものであってはならず、労働者に明確に説明する必要があります。

関連の国際労働基準
1970年の最低賃金決定条約(第131号)
1970年の最低賃金決定勧告(第135号)

その他の規範
ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言第41項

最低賃金/生活賃金

Q5:「生活賃金」の計算方法に関するILOの見解はどのようなものですか。

A5:ILO憲章ではその前文において、「妥当な生活賃金の支給」に言及しています。ILOの目的と目標に関する1944年のフィラデルフィア宣言では、「賃金及び所得並びに労働時間及び他の労働条件に関する政策ですべての者に進歩の成果の公正な分配を保障し、且つ、最低生活賃金による保護を必要とするすべての被用者にこの賃金を保障する」必要性が強調されています[1]。この原則は、最近では2008年に採択された公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言でも確認されています。

生活賃金の概念は、この言葉そのものではありませんが、「労働者及びその家族の必要」について述べた最低賃金決定条約に見られます[2]。条約勧告適用専門家委員会(CEACR)は、「最低賃金制度の確立は労働者が自らの(また場合によってはその家族の)ニーズを満たすだけの基本的最低賃金を得ることを保証するための手段として語られることが多い。そのため「最低生活賃金」という用語がよく使用される。こうした概念を実践する取り組みには、労働者の実質的状況を改善し、人間の尊厳と一致する、あるいは労働者の基本的ニーズを満たすのに十分な最低生活水準を保障することを目指した姿勢や政策が伴う。このような政策は、少なくとも労働者とその家族がディーセントな生活を送ることを可能にする賃金と同等の報酬を得る万人の権利に関連して「経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際規約」と一致する」と説明しています[3]。

最低賃金決定勧告には、最低賃金は貧困を克服し、すべての労働者及びその家族の必要を満たすことを企図する政策の一要素をなすべきであることが明記されています[4]。また最低賃金決定の基本的な目的は、賃金労働者に対し、賃金の許容される最低水準に関した必要な社会的保護を与えることであるとも述べられています[5]。

またCEACRは、「最低賃金とは、それが労働者及びその家族が生活していくための必要を満たすのに十分であることを意味している。生活していくための必要を満たすことは、最低賃金決定の判断基準であるとともに、本条約の目的の一つでもある。しかしながら、労働者及びその家族の必要を単独で考えることはできない。国の経済及び社会的開発水準に照らして見る必要がある」とも指摘しています[6]。ほかに、可能な限り、また国内の慣行と状況に関連して妥当である限り、考慮すべき要素には以下のようなものがあります。
  • 国内の賃金の一般的水準、生計費、社会保障給付、及び他の社会的集団の相対的な生活水準
  • 経済開発上の要請、生産性の水準並びに高水準の雇用を達成し及び維持することの望ましさを含む経済的要素[7]
  • 生計費及びその他の経済条件の変化[8]
最低賃金設定の目的は、様々な産業部門間で、特に団体交渉を通じて賃金を決定する広範かつ有効な手段がない場合に労働者を保護することです[9]。そのためILOは、最低賃金が労働者とその家族の基本的ニーズを満たすのに十分かどうかの判定に政府が使用すべき基準値(いわゆる「財のバスケット」)を定めていません。ILOはその代わりに、産業部門での賃金決定のための社会対話、特に団体交渉と、最低賃金設定や労働協約拡大のための三者協議を提唱しています。

多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)では、企業に「国家の法令に従い、地域の慣行を十分考慮し、関係のある国際基準を尊重」することを奨励しています[10]。

特に賃金については、多国籍企業宣言では多国籍企業に対し、賃金が労働者及びその家族のニーズを満たすのに十分であることも確保するよう奨励しています。具体的には、多国籍企業は「受入国における類似の使用者」が提供するものより「不利でない」賃金と手当を提供すべきであるとしています[11]。比較対象となる使用者が存在しない場合、企業は(政府の政策の枠内で、)できる限りよい賃金、給付及び労働条件を提供すべきであり、(これらは当該企業の経済的地位に関係することであるが、)少なくとも、労働者及びその家族の基本的ニーズを充足するに十分なものでなければならないとしています[12]。

さらに多国籍企業宣言では、雇用条件を決定する上で団体交渉の重要な役割が強調されています[13]。

実際の最低賃金に関する詳細はILOのデータベースで見ることができます。このデータベースには100か国超の最低賃金水準の絶対値、及び国民一人あたりのGDPと平均賃金の両方に対する相対値の統計が掲載されています。また社会的パートナーの種類と関与の程度など、最低賃金システムの制度面に関する情報も含まれています。

[1] ILOフィラデルフィア宣言、附属書第3部(d)。この原則は、以下の国連の世界人権宣言にも記載されています。「勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。」(第23条第3項)、「すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに(中略)保障を受ける権利を有する。」(第25条第1項)
[2]1970年の最低賃金決定条約(第131号)第3条(a)
[3]ILO最低賃金に関する総合調査(1992年)第33項
[4]1970年の最低賃金決定勧告(第135号)第1項
[5]第135号勧告第2項
[6]総合調査第281項
[7]第131号条約第3条
[8]第135号勧告第3項及び第11項
[9]第131号条約第1条第1項
[10]多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言第8項
[11]多国籍企業宣言第41項
[12]多国籍企業宣言第41項
[13]多国籍企業宣言第56項「労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の十分な発達及び利用を奨励かつ促進するため、国内事情に適する措置がとられるべきである。」

現物給与


Q6:労働者に住居及び食料を支給し、労働に対して現金による支払をしないことは許されますか。

A6:現物給与が現金による報酬を完全に代替することは認められません。多くの国の労働法は、現物給与にできる賃金の割合に上限を定めていますが、これは通常20%から40%となっています。現物給与の割合が50%に上れば、労働者とその家族の生存に必要な現金報酬が不当に引き下げられることになるため、妥当とは言えない可能性があります[1]。


また、許容される現物給与の割合の限度内で、さらに以下の保護策を適用する必要があります[2]。
  • 国内の法令、労働協約、又は仲裁裁定により認められたものであること
  • 現金の代わりに支給された物の価値が公正に評価され、労働者及びその家族のニーズを満たすものであること
  • 酒類又は薬品による現物給与は行わないこと
現物給与は労働者をより依存的で脆弱にするため、不適切な形式の支払が強制労働の状況を生み出す危険があります。財やサービスの形式による「現物」給与は、労働者の使用者に対する依存状態を生み出すものであってはなりません[3]。

[1]「ILO 賃金保護に関する総合調査」ILO、ジュネーブ(2003年)第117項
[2]1949年の賃金保護条約(第95号)第4条、 「ILO 賃金保護に関する総合調査」(2003年)第92項
[3]「Combating forced labour: A handbook for employers and business」ILO、ジュネーブ(2008年)
賃金からの懲罰的控除

Q7:懲罰としての賃金控除に関する国際労働基準はありますか。

A7:国際労働基準は、賃金からの懲罰的控除を行うことが許容できるかどうかについて特に規定していません[1]。条約勧告適用専門家委員会(CEACR)によると、多くの国で賃金控除による懲罰が公式に禁止されています。また、懲罰的賃金控除を認めている国では、国の法制に公正な手続きを保障するための規定、例えば書面による労働者への通知を義務付けることや、不服を申し立てる権利を認めることなどが定められています[2]。

またCEACRは、賃金保護に関する労働基準には3つの主要原則が定められていることも指摘しています[3]。

1.    いかなるものであれ控除が適法であるためには適切な法的根拠(国家の法令、労働協約又は仲裁裁定など)が必要であること。つまり、個人の同意では不十分です。
2.    認められるすべての控除は、労働者が受け取る正味の金額がいかなる場合にも自己及びその家族のディーセントな生活収入を確保するのに十分となる範囲に限定されなければならないこと。
3.    賃金控除を行う根拠、及び控除の程度に関するすべての関連情報を事前に当該労働者に伝達し、予期しない報酬の減額が自分と家族を養う能力を損なうことを回避できるようにすること。望ましい方法は、関連の法令や職場の内部規定などの参照先を雇用契約に適切に含めるか、常時表示しておくことですが、いずれにしても労働者が可能性のあるすべての控除の性格と程度を事前に通知され、国内法に定められた保護対策に関連した権利を知ることができる方法を取ることが必要です。

[1]控除に関連する国際労働基準には、1949年の賃金保護条約(第95号)及び1949年の賃金保護勧告(第85号)があります。第85号勧告の第2項及び第3項は、労働者の誤り若しくは不注意による損害又は使用者の製品や動産の損害の賠償のための賃金からの控除、及び使用者により供給される材料、工具又は装具に関する賃金からの控除のみ取り扱っています。
[2]ILO賃金保護に関する総合調査(2003年)第242項及び第244項
[3] ILO賃金保護に関する総合調査(2003年)第295項~第297項

夜間勤務補償

Q8:夜間勤務にはより高い賃金の支払が必要ですか。

A8:夜業条約(第171号)第8条は、労働時間(短い就業時間や長い休憩時間等)、給与(夜勤手当等)又は類似の給付の形態の夜業労働者に対する補償については、夜業の性質を認識したものでなければならないと定めています。夜業勧告(第178号)第8項及び第9項には金銭的補償について詳しく述べられています。ILOの文書は夜間勤務には追加の補償を行う必要があることを認めていますが、その方法は高い賃金が望ましいとは言え、必ずしもそれに限りません。
 

A9:品質基準や無許可の欠勤など、施設の規則に違反することによる罰金は強制労働にはあたりません。労働者が労働を強制されているかどうかと関係ないからです。しかし賃金保護など他の国際労働基準の原則に関連して問題になる可能性はあります。

賃金保護における主な原則は以下の通りです。

1.    いかなるものであれ控除が適法であるためには、適切な法的根拠(国家の法令、労働協約又は仲裁裁定など)が必要であること。つまり個人の契約や企業の方針による一方的な押し付けでは不十分です。
2.    認められるすべての控除は、労働者が受け取る正味の金額がいかなる場合にも自己及びその家族のディーセントな生活収入を確保するのに十分である範囲に限定されなければならないこと。
3.    いかなるものであれ控除が適法であるためには、適切な法的根拠(国家の法令、労働協約又は仲裁裁定など)が必要であること。つまり個人の契約や企業の方針による一方的な押し付けでは不十分です。
4.    賃金控除を行う根拠、及び控除の程度に関するすべての関連情報を事前に当該労働者に伝達し、予期しない報酬の減額が自分と家族を養う能力を損なうことを回避できるようにすること。望ましい方法は、関連の法律、規則、職場の内部規定などの参照先を雇用契約に適切に含めるか、常時表示しておくことですが、いずれにしても労働者が可能性のあるすべての控除の性格と程度を事前に通知され、国内法に定められた保護対策に関連した権利を知ることができる方法を取ることが必要です。1949年の賃金保護条約(第95号)及び勧告(第85号)を参照してください。

Q10:給与の支払い間隔、例えば月給か隔週払いかなどについて、また労働者に実際に賃金が支払われる日についてどのような国際規則や基準がありますか。

A10:推奨される最大支払間隔は賃金の計算方法によって変わります。1949年の賃金保護勧告(第85号)では以下の指針を定めています。

4.    賃金支払のための最長限度の期間は、賃金支払について以下が確保されるものでなければならない。
(a)    時間、日、又は週単位で賃金が計算される労働者の場合、16日を超えない期間において月2回以上
(b)    月額又は年額で固定給による報酬を得ている従業員の場合、月1回以上

5.    (1) 賃金が個数労働(出来高)又は生産を基礎として計算される労働者については、賃金支払のための最長限度の期間は、できるだけ賃金が16日を超えない期間において月2回以上支払われるようにすること。
(2) 仕事の完成が2週間を超えることを要する仕事を遂行するために使用され、かつ賃金の支払のための期間が労働協約又は仲裁裁定により別段に定められていない労働者については、次のことを確保するため適当の措置を講じなければならない。
(a)    支払が、遂行される仕事の量に比例して、16日を超えない期間において月2回以上計算されること。
(b)    最終的決済は、仕事の完成から2週間以内に行われること。

国内法の規定に関する情報は労働条件法データベースを参照してください。

Q11:国際労働基準には職業あっせん手数料の扱いについて何か規定はありますか。

A11:賃金からの何らかの控除が適法であるためには、国内の法令、労働協約、仲裁裁定などの適切な法的根拠が必要です。個別の契約だけでは不十分です。

企業が守るよう奨励される一般原則は、労働者が職業あっせんサービスについて、いかなる手数料又は経費も、その全部又は一部を直接又は間接に請求されてはならないというものです。しかしながら、国内法ではいくつか例外が認められています。「権限のある機関は、関係する労働者の利益のために、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、特定の種類の労働者及び民間職業仲介事業所が提供する特定の種類のサービスについて例外を認めることができる」(1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)第7条)。したがって、職業あっせん手数料を労働者に課すことができるかどうか国内法制を調べることが重要です。

但し、1949年の賃金保護条約(第95号)第9条には、労働者が雇用され又は継続するため、使用者若しくはその代理人又は仲介人(労務供給又は募集に従事する者)に対して行う直接又は間接の支払を確保するための賃金からの控除は禁止されると定められています。
言い換えると、国内法令のもとで有料の職業あっせん事業の運営が許可されている国では、労働者が民間職業仲介事業所のサービスに対して直接支払うことは認められますが、賃金からの控除を伴ってはならないということです。

賃金からの控除の根拠とその金額に関するすべての関連情報を事前に当該労働者に伝達し、予期しない報酬の減額が自分と家族を養う能力を損なうことを回避できるようにしなければなりません。望ましい方法は、関連の法律、規則、職場の内部規定などの参照先を雇用契約に適切に含めるか、常時表示しておくことですが、いずれにしても労働者が職業あっせんサービスに関する控除を事前に通知され、国内法に定められた保護対策に関連した権利を知ることができる方法を取ることが必要です。

Q12:被用者への支払が1週間遅れた場合、これは強制労働とみなされますか。また、被用者に対する支払について強制労働とはみなされない期間の上限(2週間、1か月など)は存在しますか。

A12:支払の遅延が組織的ではなく、労働者を支配することを意図していない場合(例えば一時的な現金振込の問題により引き起こされた場合など)、これは強制労働ではありません。

強制労働とは、ある人が処罰の脅威によって強制され、また自らが任意に申し出たものではない労働やサービスのことです。

賃金支払の拒否は罰則の対象であり、賃金支払の遅延は強制労働の状態にある可能性があることを示しています。例えば、条約勧告適用専門家委員会(CEACR)は、「雇用を強制労働にするおそれのある、使用者の虐待的行為、例えばパスポートを預かること、賃金の不払い、自由のはく奪、身体的性的虐待などにさらされることが多い移民家事労働者を含む移住労働者の脆弱な状況に対する懸念」を表明しています。

1930年の強制労働条約(第29号)の批准国における適用の調査において、CEACRは賃金の不払又は支払の遅延について、これが強要や脅威の要素を伴う場合にのみ事例を取り上げました。調査された大半の事例において、問題は使用者による賃金の不当な操作と関係し、脆弱な立場に置かれた労働者に債務を負わせる結果となっていました。

長期間の賃金支払の遅延は脆弱状況を生み出すか悪化させる可能性があるため、さらに確度の高い兆候となります。不払の期間の長さ、及びそれが労働者の仕事を辞める自由に及ぼす影響は、給与水準、国、制度的対策、その他の要因に左右されます。自動的に強制労働とみなされる定められた遅延期間はありません。

Q13:どのような条件のもとであれば労働者に制服の保証金を要求することができますか。

A13:一般に賃金の未払と不払は、多額の保証金を含め、労働者の希望に応じて職を辞する権利に対する制約となります。しかし労働者が保証金返金の条件について知らされ、その条件を満たせば実際に保証金が返金されるのであれば、妥当な金額の保証金は強制労働に該当しません。制服に対する保証金については、辞める場合には制服を返却したときに保証金が返金されることを労働者が知らされる必要があります。その他の条件、例えば制服を合理的な状態で返却することなどがある場合にはそれを明確に示し、労働者が辞めたいと思ったときに引き留めることがない形で適用される必要があります。労働者が辞めるときに返金されない保証金は保証金ではなく、労働者が自分の制服について支払を義務付けられる要件です。労働者の賃金からのそのような控除は賃金保護の観点で問題です。使用者により供給される工具、材料又は装具に関する賃金からの控除を次の場合に限定するために適当な措置を講じなければならないとされています。

(a)    関係ある職業又は業務において慣習として承認される場合
(b)    労働協約又は仲裁裁定により定められる場合
(c)    国内の法令又は規則により承認された手続きにより別段に許可されている場合。これは単に会社の方針のみでは不十分です。

上述の条件が満たされれば、労働者が制服について支払を求められることは容認可能ですが、制服が労働者自身の所有物であることを労働者に明確に伝える必要があります。

Q14:労働者には、懲罰の決定に対して申立てを行う権利がありますか。

A14:関連する国際労働基準は、考えうる個々の懲罰内容によって異なります。

懲罰手続が賃金からの控除につながる場合について、条約勧告適用専門家委員会は賃金保護条約に触れながら、懲罰的な賃金からの控除を認める国の国内法令には、労働者への書面による通知を要求したり、不服申立ての権利を認めたりするなど、懲罰処分の公正な手続を保証する規定も盛り込まれていることを指摘しています。

雇用の終了につながる事例については、労働者は雇用終了に対し、妥当な期間内に、裁判所、労働裁判所、仲裁委員会、仲裁人などの中立的機関に訴える権利を与えられるべきです。

より一般的に言えば、すべての労働者はいかなる不利益をも被ることなく不服を申し立て、適当な手続によりこの不服の審査を受ける権利を有すべきです。不当な懲罰手続と認識される行為は、労使関係に関係しているか、その企業の1人又は複数の労働者の雇用条件に影響を与える公算が大きい場合のほか、該当する状況が労働協約、個別の雇用契約、国内法令その他の規則に反していると見られる場合には、不服申立ての対象となる可能性があります。

Q15:当社の拠点や傘下企業の中には、当社福利厚生制度の一環として、従業員に貸付を行っているところがあります。この好事例に負の側面が生じないよう、当社としては、奴隷労働や移動の自由の阻害とみなされかねない事件が生じたり、分割払いによって日給が最低賃金を割り込んだりすることがないようにするための方針の策定を図っているところです。

A15:そうした方針では、賃金の前払や従業員への融資が労働者を雇用に縛り付けるための手段として使用されないことを明確にする必要があります。前払や融資は国内法令に定められた限度を超えてはなりません。貸付金の返済のため行う賃金からの控除は国内法令に規定された限度を超えてはなりません。また労働者は前払や融資の供与と返済に関連した条件を知らされている必要があります。

インターネットへのアクセス


Q16:私は外洋航行の一等航海士で、この5年間船上で働いています。1回の雇用契約は4~5か月が基本であり、またこれは家族や大切な人たちと離れて暮らす期間でもあります。多くの船にはインターネット接続がなく、家族との連絡はきわめて困難です。使用者が船の乗務員に定期的なインターネットアクセスを提供する必要性を定めた国際的文書は何かありますか。

A16:インターネットアクセスを取り上げ、こうした問題に役立つ可能性のある国際労働基準である海上労働条約B3.1.11指針(レクリエーション用の設備、郵便及び船舶への訪問に関する手配)には以下のように定められています。

1.レクリエーションに係る設備及びサービスについては、海運業における技術上、運航上及び他の進歩から生ずる船員の需要の変化に照らして適当なものであることを確保するため、頻繁に検討を行うべきである。

4.実行可能な場合には、船員の費用を負担させることなく、次の便宜を含めることについても考慮を払うべきである。

(j)船舶と陸上との間の電話通信並びに可能な場合には電子メール及びインターネットへの妥当な金額の利用料金による合理的なアクセス