ILOヘルプデスク 賃金、給付に関するQ&A
質問
- 国際労働基準は、賃金は交渉の対象となるべきであるとしていますか?
- ILOは賃金に関してどのような実践策を奨励していますか?
- 賃金額やその支払に関して、ILOの基準はありますか?
- 労働者が業務上必要となる物品や装備をまずは自費で購入し、その上で会社からその費用分の返金を受けるシステムが採用されている中で、会社からの返金が遅れている場合、国際労働基準上の問題はありませんか?
- 生計を立てられる賃金はどのように計算したらよいのでしょうか?
- 賃金を現物支給で支払い、現金による支払をしないことは許されますか?
- 懲戒処分としての賃金控除に関する国際労働基準はありますか?
- 夜間勤務については追加的な報酬の支払が必要ですか?
Q1 国際労働基準は、賃金は交渉の対象となるべきであるとしていますか?
A1 団体交渉のA8以下で前記したように、団体交渉は労働に関する事項や条件を定め、労使関係を規定し、団体協約へと導く自発的なプロセスです。ILOの結社の自由委員会は賃金が団体交渉の対象になり得ると結論付けています。
Q2 ILOは賃金に関してどのような実践策を奨励していますか?
A2 「多国籍企業宣言」34項(参照)は、賃金設定に関して指針を設けており、比較対象の存在しない発展途上国で多国籍企業が操業する場合、当該国政府の政策枠組みの範囲内で、できる限りよい賃金、給付及び労働条件を提供すべきであるとしています。これらは当該企業の経済的地位の影響を受けますが、少なくとも労働者及びその家族の基本的なニーズを充たすものであるべきです。
Q3 賃金額やその支払に関して、ILOの基準はありますか?
A3 柔軟性を持たせるため、賃金額の計算に関する特定の基準はありません。ただ、労働者保護のために以下の事項に従う必要があります。
当該国の実情に照らして労働者及びその家族の基本的ニーズを充たす適正な額であること(第131号「開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約」3条(a) 参照)
- 賃金計算過程の透明性
- 規則正しく定期的に賃金が支払われること
- 男女間における同一価値労働同一賃金の原則の遵守(第100号条約)
- 会社が労働者に販売した商品や提供したサービスの代金費用を理由とする賃金控除の制限
Q4 労働者が業務上必要となる物品や装備をまずは自費で購入し、その上で会社からその費用分の返金を受けるシステムが採用されている中で、会社からの返金が遅れている場合、国際労働基準上の問題はありませんか?
A4 A1で前記した指針からすると、当該購入代金が多額であり、その返金の遅れが当該労働者及びその家族の基本的ニーズを充たすのに困難を生じさせるような場合は国際労働基準に抵触します。
Q5 生計を立てられる賃金はどのように計算したらよいのでしょうか?
A5 生計を立てられる賃金という概念は、労働者及びその家族のニーズを充たすという文脈で使用されています(第131号条約3条(a) 参照)。このような賃金は当該国の経済状況や法制・慣行を考慮した上で決められる必要があります。ILOは具体的な指標を提供する代わりに、社会対話、特に団体交渉を通じた賃金決定を提唱しています。
Q6 賃金を現物支給で支払い、現金による支払をしないことは許されますか?
A6 全てを現物支給で支払い、現金支払を一切しないことは許されるべきではありません。賃金中の許される現物支給の割合は各国の法制により定められています。ここでも、現金による支給をしないことが労働者やその家族の基本的ニーズを損なっていないかという指針が適用されます。また、許される現物支給割合の規定を充たすことに加えて、以下の保護施策を実施する必要があります(第95号「賃金の保護に関する条約4」条 参照)。
- 各国の法制・規制、団体協約、仲裁裁定により認められたものであること
- 現金の代わりに支給された物が適切な評価に基づく物であり、労働者及びその家族のニーズを充たすものであること
- アルコール飲料や薬物による現物支給はしないこと
強制労働A8の回答も参照してください。
Q7 懲戒処分としての賃金控除に関する国際労働基準はありますか?
A7 ありません。ただ、多くの国で賃金控除による懲戒処分が公式に禁止されているとの指摘があります。また、そのような減給方式の懲戒処分が許されている国の中でも、労働者保護のために制限が設けられている国があります。
Q8 夜間勤務については追加的な報酬の支払が必要ですか?
A8 第171号「夜業に関する条約」8条(参照)は、労働時間、給与又は類似の給付の形態の夜業労働者に対する補償については、夜業の性質を認識したものでなければならないとし、第178号「夜業に関する勧告」8項及び9項 (参照)は、追加的な報酬による補償が望ましいとして規定しているものの、必ず賃金の割増の形態によらなければならないとするものではありません。
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