児童労働 Q&A

児童労働に関するQ&A
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Q1:就業の最低年齢は、なぜ基本的に15歳か14歳と定義されているのでしょうか。世界的に16歳と定めた場合、どうなるのでしょうか。

A1:企業は法律で定められた最低年齢を尊重する必要があり、これは通常15歳とされています。しかし、これを14歳や16歳と定めている国もあります。国内法により、最低年齢が先進国において15歳未満、又は開発途上国で14歳未満と定められている場合、企業は15歳、又は例外的に開発途上国では14歳という最低年齢の規定を適用しなくてはなりません(1973年の最低年齢条約(第138号)第2条を参照)。当該業務が、危険有害業務(児童の健康、安全若しくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務)と考えられる場合、就業の最低年齢は18歳が適用されなければなりません(1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号) 第3条dを参照)。また、当該業務の固有要件として、18歳以上が求められている場合、最低年齢を18歳と定めることもあります。

そのほか考えられる状況として、16歳を最低年齢と定めることが差別待遇とみなされることもあります。職場における差別とは、すべての「差別、除外又は優先で、雇用又は職業における機会又は待遇の均等を破り又は害する結果となるもの」をいいます(1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号) 第1条第1項を参照)。ある者が当該業務に固有の要件と密接に関連しない特徴により、他者よりも不利な待遇を受けたり、同一の条件、待遇又は基準の適用が一部の者に不当に過酷な影響を及ぼしたりする場合には、差別に該当します。

適切な労働条件の下で若者に雇用の機会を与えることは、雇用の機会から全面的に排除することよりも、最悪の形態を含む児童労働を撤廃するための効果的な取り組みとなりえます。企業は、最低年齢から16歳までの間の若者に、危険有害ではない、ディーセントな雇用機会を与えることで、若年雇用促進において重要な役割を果たすことができます。企業は、政府の雇用政策や目的を考慮しながら、雇用機会の増進及び、雇用水準の向上に努めることが奨励されています。多くの国で、若年雇用の促進は中心的な政策目標となっています。詳しくは「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」第16項をご覧ください。

Q2:サプライヤーが児童労働を使用していないことを証明するために、署名してもらえる書類はありますか。

A2:ILOは、企業が署名すべき文書の提供をしていません。ILOは児童労働撤廃に向け、バイヤー、サプライヤー、労使団体、地域社会間の連携を促進する、より体系的な手法を採用しています。

<児童労働を防止し、子どもたちの就学を確保する企業方針>

Q3:児童労働を防止するため、当社には何ができますか。

A3:一般的に児童労働とは、子どもから教育を受ける機会を奪うか、その発達を阻害するようなあまりに早い年齢から、子どもに仕事をさせることを指します。

最悪の形態の児童労働には、子どもの人身取引や子ども兵士、性的搾取又は不正な活動や、危険有害とされる業務での子どもの利用など、強制労働や奴隷制に類似する慣行を含みます。企業は、「児童労働の効果的な廃止」に貢献するとともに、「その能力の範囲内で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時かつ効果的な措置をとる」[1] べきといえます。

[1] 「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」第27項

最低就業年齢は通常、国内法によって設定され、その規定は尊重されなければなりません。国際労働基準では、就業最低年齢は、一般的に義務教育を修了する年齢である、15歳以上とされています。但し、学校または訓練施設における労働や、13歳以上の軽易な労働で、学校教育に影響を与えないものについては、例外が認められることもあります。

開発途上国においては、最低年齢を原則的に14歳、軽易な労働について12歳に定めることができます。しかし、自発的に最低年齢を16歳としている国もあります(ブラジル、中国、ケニアなど)。

国の開発水準を問わず、18歳未満の者は一切、危険有害な業務(子どもの身体的、社会的、知的、心理的及び精神的発達に害を及ぼす仕事)に従事できません。最悪の形態の児童労働撤廃への取り組みは、他の形態の児童労働を正当化するために利用されるべきではありません。
最悪の形態の児童労働を撤廃するための取り組みは、特に少女や幼児のニーズに配慮したものとすべきです。

18歳未満によるすべての仕事が児童労働というわけではありません。年齢や、仕事の種類、労働条件によって異なります。児童労働と「若年雇用」を混同すべきではありません。就業最低年齢から、若者にはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が紹介されるべきですが、危険有害な業務や、最悪の形態の児童労働からの保護はまだ必要です。また、「軽易な労働」には柔軟性があり、関係する政府機関により認可、監視されていれば、就学年齢である13歳(又は12歳)から従事することができます。

地理的に遠く離れたサプライチェーンを有する特定の産業部門で調達を行う企業は、特に注意を払う必要があります。デュー・ディリジェンスを行う際には、ILOその他の研究を検討して、企業の事業地域で児童労働問題が生じやすい部門を認識すべきです。
児童労働撤廃のために企業が採ることのできる具体的行動としては、以下が挙げられます。
  • 国内法令で規定する就業最低年齢を遵守し、国内法が不十分な場合には国際基準を考慮する。
  • 採用に当たり適切かつ検証可能な年齢確認手段を使用する。
  • すべての従業員について正確かつ最新の記録を保持する。
  • 法定就業最低年齢に満たない子どもが働いているのを職場で発見した場合は、その子どもを働かせないようにするための措置を講じる。
  • 仕事を止めさせられた子どもとその家族が、十分なサービスと実行可能な代替策を利用できるよう、できる限りの援助を行う。
  • 下請業者、サプライヤーその他の取引先に影響力を行使し、児童労働に対処させる。
  • 研修や奨励策を実施するなど、取引先の児童労働対策の能力を構築するための方法を検討する。
  • 成人従業員の賃金を、子どもの稼ぎに頼らなくても家計を支えられるような水準に設定する。
また、企業は可能な場合、児童労働を撤廃するための地域社会の全般的な取り組みに貢献するとともに、以下を含め、仕事を止めさせられた子どもが質の高い教育と社会的保護を受けられるよう援助することもできます。

他の企業、業界団体及び使用者団体と連携し、業界全体としてこの問題に取り組むアプローチを開発するとともに、労働者団体、法執行当局、労働監督署その他関係者との橋渡し役をする。

地方、州又は国のレベルで自社を代表する使用者団体において、児童労働に関するタスクフォース又は委員会を設立するか、これに参加する。国内レベルで児童労働と闘うための重要な政策的・制度的メカニズムの一環として、児童労働対策の国家行動計画の策定を支援する。

自社の影響力が及ぶ範囲内で、教育、技能開発及び職業訓練の機会を提供することにより、児童労働の防止と元児童労働者の社会復帰のためのプログラムに参加する。

可能な限り、メディア・キャンペーンを含む国内的・国際的プログラムに参加するとともに、地方自治体、国家当局、労働者団体その他と連携する。

児童労働の監視に関する情報については、「Eliminating Child Labour. Guide Two: How employers can eliminate child labour」の47~48頁をご覧ください。

Q4:企業は児童労働を防止するため、どのような奨励策を用いることができますか。また、子どもが学校に通えるよう、企業としてどのようなことができるのでしょうか。

A4:企業は3つの種類の行動を起こせます。それは、金銭的な奨励策を提供すること、通学の重要性に対する従業員の認識を高めること、そして、集団行動に参加することです。

1. 児童労働の根本原因としての貧困への取り組みを支援すること。最も重要な奨励策は、成人労働者にディーセントな賃金を支払い、子どもたちを学校に送り出すことができるようにすることです。企業は法定最低賃金の支払いを確保しなければなりません。また、最低賃金が十分でない国では、それを超える賃金の支払いを検討すべきです。しかし、労働者が自らの技能と生産性を高められる能力を持たない限り、賃上げができない企業もあるでしょう。その他、企業が検討しうる奨励金としては、以下が挙げられます。

従業員の子どもを対象に、通学手当を支給すること
一定の教育水準に達した従業員の子どもを対象に、ボーナスを支給すること
幼い子どもが通学せずに働き始めることを防ぐため、親の職場やその近辺に託児所を設けること
子ども向けに放課後のレクリエーション施設を提供し、宿題と遊びの場を確保することで、働きに出ずに済むようにすること

児童労働対策は普遍的な目標ですが、具体的な企業が児童労働を防ぐために用いるべき適切な奨励策は、国情によって大きく左右されます。こうした奨励策は、企業と労働者双方のニーズに合うよう策定すべきです。奨励策をどのような構造にすればよいかにつき、労働者やその代表との対話を行えば、最も効果的な手法を確保できるでしょう。

2. 意識を高めること。企業は教育の価値に対する意識を高めるうえで、極めて重要な役割を果たせます。経済的誘因は原則的に、常に啓発と組み合わせ、奨励策が子供を学校に留め、働かせないという所期の効果を上げられるようにすべきです。

3. 共同で取り組むこと。企業は個別に行動を起こすこともできますが、児童労働問題には、集団で取り組むのが最も効果的です。国内の労使団体は、現地の状況に応じてどのような奨励策が最も適切かに関する提案や指針を提供できることがあります。また、企業は使用者団体を通じ、労働者団体と協力して行動することにより、上記の提案のうち、個別企業にとっては財政的に提供不可能と見られる奨励策の多くが、共同であれば提供できる可能性もあることを認識するかもしれません。

さらに、企業間の協力は、政府が児童労働対策の責任を担うよう主張するうえで、さらに効果があります。集団的に政府の対策を求められる分野としては、以下が挙げられます。
  • 国内法で義務教育の無償化を定めること
  • 教員の適切な研修機会を設けること
  • 教室を増設すること
  • 特に農村部で、有資格教員を募集、採用すること
  • 特に農村部で、中途退学者その他の脆弱な立場にいる子どもに、非正規教育の機会を与えるための資金を提供するとともに、HIV/エイズ孤児を対象とする奨学金制度を設けること
  • 元ストリートチルドレンを対象に、技能訓練プログラムを設けること
  • 児童労働に関する法の効果的施行と監視を行うこと
さらに、サプライチェーンを管理する企業は、デュー・ディリジェンスのプロセスを導入し、児童労働が見つかった場合には、その撤廃に向けてサプライヤーと協力して取り組むための措置を講じることもできます。

Q5:13~14歳の子どもたちが3カ所の工場で働いていることが分かったので、彼らを通わせる訓練センターを探しているのですが、なかなか見つかりません。最寄りの施設でも、ここから約6時間かかります。そのような場合、ILOにはどのような提案がありますか。

A5:良い通学先や職業訓練施設が不足している場合については、子どもたちが法定就業年齢に達するまで賃金を払い続けたうえで、適切な業務(18歳未満の場合は危険有害でないもの)で再雇用するという好事例が見られます。関連の法規制に基づく見習訓練制度も、適切な選択肢となりえます。その工場は見習として、子どもを事務職その他の有害危険でない業務で雇用することができるでしょうか。

この問題に対応する際には、就業最低年齢、軽易な労働に関する規定、及び、18歳未満に禁止されている有害危険業務の一覧などを含む、国内法の法律を理解することが重要な参考となるでしょう。

その他、企業が子どもの親や成人の家族を採用し、結果的に世帯収入を増加させて、子どもたちが働く必要性を低下させたケースも見られます。この場合、子どもたちは家族と一緒に暮らしているようですが、児童労働に代わる実質的選択肢を与えるという意味で、これには大きな利点があります。工場が子どもの親に、適切な賃金を支払う仕事を提供することができれば、子どもに労働を強いる圧力が大幅に弱まるだけでなく、親は工場の人事担当者との会合に毎日又は毎週、出席することになるため、働きかけを行う機会も増えます(子どもが学校や職業訓練施設に出席しているかどうかも、こうした会合でチェックできるため)。バイヤーは、これに関連して(元児童労働者への環境改善支援も含めて)費用が生じる場合、その分担を検討すべきです。少なくとも短期的には、工場の操業費用は増加することになるからです。

最後に、サプライチェーンでの防止策強化も重要です。さもなければ、問題が再発してしまうからです。環境改善が非常に大きな課題となる理由もここにあります。

Q6:取引先で、10歳くらいの子どもがコーヒーを出したり、生産現場で軽易な組立作業をしたりするのを目にしました。取引先に伝えるべきことがあるとすれば、それは何でしょうか。


A6:企業は、その影響力の範囲内で行動するよう奨励されています。企業は自社の職場に責任を持ちますが、それ以外にも影響を及ぼすことができます。児童労働を減らすことを取引先に奨励したり、それを助けたりすることもできます。他の組織と連携し、意識を高めることもできます。また、子ども向けの教育施設を改善する、さらに幅広いプログラムを支援することなども可能です。

よって、取引先に対しては、児童労働があらゆる場所のビジネスで重要な問題となってきており、企業は事後で対応するのではなく、先手を打って行動する必要があるという認識が高まっていることを指摘することができるでしょう。先手を打って解決策を見出す企業は、メディアによる悪評や政府による罰金、バイヤーからの命令を受けなくて済むことになります。また、児童労働を排除するためには、時間と労力がかかります。企業は先手を打つことで、このプロセスを慎重に計画できる可能性が高まります。


<具体的な国・地域の児童労働の現状>

Q7:具体的な国の児童労働の現状について、どこで情報を得ることができますか。

A7:ILOの新たなデータベース「NORMLEX」は、各国がどの条約を批准しているかに関する情報を提供しています。国別情報(Country Profile)や、ILOの監視機構による各国に関するコメントもあります。ウェブサイトには、各国の法規制に関するリンク先も表示されています。

世界レベルと国別・部門別レベルでの児童労働の現状、特徴及び決定要因は、ILOの児童労働に関する統計調査(SIMPOC)によって明らかにされています。

さらに各国労使団体は、当該国の児童労働問題に関する有用な情報源となりえます。

Q8:児童労働に関するILO条約では「開発途上国」の基準をどう定めていますか。

A8:「開発途上国」とは「経済及び教育施設が十分に発達していない加盟国」を指します [1]。この定義を利用し、就業最低年齢を15歳ではなく14歳とする資格があるかどうかは、当該国自身が決めることになっています。そのうち、政府がその決定理由を具体的に示すよう求められたのは、アルゼンチンのケースのみです。

多くの開発途上国がこの定義を利用せず、最低年齢を15歳とするか、16歳というさらに高い最低年齢を設定していることは特筆に値します。

18歳未満の者は、国の開発水準にかかわらず、危険有害な業務、すなわち子どもの身体的、社会的、知的、心理的及び精神的な発達を害する仕事に就くべきではありません[2]。

[1] 1973年の最低年齢条約(第138号)第2条第4項
[2] 1973年の最低年齢条約(第138号)第3条、1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)第2条、第3条(d)、第4条

Q9:ラテンアメリカの児童労働の状況について、また児童労働の防止、撤廃に向けた企業の取り組みについて教えてください。


A9:同地域の現状と、児童労働撤廃国際計画(IPEC)による取り組みをまとめた文書をご覧いただけます。
出生証明書と労働者の年齢確認

Q10:私たちは、国によっては出生届けがないか、偽造されていることもあると知っています。労働者の年齢を確認する適切な方法はありますか。

A10:労働者の年齢を確認するために、「使用者は、その使用する児童及び年少者のみではなく、当該使用者の企業において職業指導又は職業訓練を受ける児童及び年少者の氏名及び年齢又は生年月日(できる限り正当に証明されたもの)を示した名簿その他の文書を保存し並びに権限のある機関の利用に供することを要求されるべき」とされています[1]。

年齢を証明する出生証明書がない場合や、偽造文書が容易に入手できる場合、次のようなアドバイスができます[2]。
  • 雇用前の健康診断は、本人の実年齢の把握や、業務に対する身体的適性の検証に役立つことがあります。このとき、本人のプライバシーの権利の尊重には常に配慮すべきです。
  • 複数の筆記文書や供述書の照合は偽造文書の特定に役立つことがあります。
  • 使用者は、就業最低年齢に満たないと思われる従業員や求職者と面接することで、さらに情報を得ることができます。
  • 就学証明は有用な情報源となりえます。

労働者本人が自分の正確な生年月日を知らないような国では、現地の指標も役立つことがあります。例えば、アジアのいくつかの国では、生まれた年を正確に知らない子どもでも、干支(申年など)は知っていることがあります。また、独立記念日や開戦又は終戦記念日、その他重要な記念日など、大きな歴史的出来事を自分の誕生日と結び付けて知っている人もいるかもしれません。年齢について疑念がある場合には、面接の際に、現地の重要な出来事や、事業を行う国で時期を特定する手段としてどのようなものがあるかをチェックしてみるという手もあるでしょう。

[1]18歳未満の若年労働者の名簿保存に関する使用者の義務については、1973年の最低年齢条約(第138号)第9条第3項を参照
[2]「Eliminating Child Labour: Guides for Employers」 ILO、ジュネーブ(2007年)を参照

Q11:公的証明書では18歳以上とされているものの、従業員本人がそれは偽の証明書で、実際の年齢は18歳未満であることを明らかにしている場合、企業はその従業員を18歳未満とみなすべきでしょうか。それとも、偽の公的証明書で済ませてしまうべきでしょうか。


A11:1973年の最低年齢条約(第138号)を補完する1973年の最低年齢勧告(第146号)は、その16条(a)で「公の機関は、出生証明書の発給を含む出生の登録に関する効果的な制度を維持すべき」ことを定めています。つまり、当局は正しい誕生日を明記した適切な出生証明書制度を確保すべきと言えます。

証明書に記載された年齢が誤りであると信じる理由が企業にある場合でも、それを採用時に求職者の年齢を判定する基準とすべきではありません。現地の当局が発給した文書に、偽の生年月日が記載されていたとしても、最低年齢を下回る子どもの雇用が正当化されるわけではないからです。現地当局がこの問題への配慮を欠く場合、民間企業には、信頼できる出生証明書の必要性に対する当局の認識を高め、児童労働問題に取り組む現地の組織と連携する必要があるかもしれません。

<少女の結婚と児童労働>

Q12:国内法が12歳の少女でも結婚していれば成年、すなわち就業年齢に達しているとみなしている場合、これは児童労働に当たりますか。農業部門の場合についてお聞きしたいのですが。

A12:12歳の少女が、結婚していれば国内法上、成人とみなされるとしても、児童労働が少女に与える悪影響が弱まることはありません。第138号条約は最低就業年齢を15歳、及び例外的に14歳と定めています。第182号条約は、18歳未満の子どもを危険有害な業務、その他最悪の形態の児童労働から守るよう要求しています。最悪の形態の児童労働撤廃のための取り組みでは、少女のニーズに特に配慮すべきです。

ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」は企業に対し、「国家の法令に従い、地域の慣行を十分考慮する」だけでなく、「関係のある国際基準を尊重」することも奨励しています。児童労働に関し、多国籍企業宣言は企業に対し「児童労働の効果的な廃止」に貢献するとともに、「緊急に対処すべき事項として最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確実にするための即時かつ効果的な措置をとる」よう呼びかけています。

児童労働は、子どもたちから教育を受ける権利を奪うものです。最悪の形態の児童労働は、あまりにも幼い時期に仕事をさせることによって、子どもの身体的、社会的、知的、心理的及び精神的発達を損なうことになります。

<見習制度と児童労働>

Q13:18歳未満(かつ14歳以上)の見習労働者が夜業に就くことは認められるのでしょうか。政府が定める見習制度であれば、企業は若年雇用を支援するため、17歳の見習労働者を夜勤に就かせることはできるのでしょうか。

A13:国内法令で18歳未満の子どもによる夜業が禁止されている場合、そのルールを守らなければなりません。該当する国内ルールがない場合、企業は以下を指針とできます。
国際労働基準は原則的に、18歳未満の労働者による夜業を禁止しています。しかし、以下の状況に限り、見習制度の一環として16歳及び17歳の者の夜業を例外的に認めることができます。
  • 当該見習制度が権限のある機関により認可されていること
  • 対象となる若者に、次の勤務との間に13時間以上の連続した休息時間を与えること
  • 若者は、夜業に従事するに先立ち、仕事に関する適切かつ具体的な指導又は訓練を受けること
  • 夜業を含む見習制度の条件を保護、監督するための措置が講じられること
  • 16歳未満の若者の夜業は、見習の場合でも禁止すること

これらの規定は2つの観点のバランスを保つものとなっています。一方で、まだ身体的に発育過程にある若者は、夜業による害悪を受けやすく、事故を起こしやすいほか、夜道の通勤で危険な目にも遭いやすくなっています。他方で、多くの仕事には夜業が必要となるため、夜業を伴う見習制度や職業訓練の機会を全面的に禁止すれば、若者の重要な就労機会を否定することになってしまいます。

Q14:ILOには、見習制度に関し、児童労働に関連する当社の要件をサプライヤーに説明をする際に使える一般的な経験や提言はありますか。


A14:国際労働基準は、企業や訓練施設、職業・技術教育専門学校で子どもと若者が職業指導や訓練を受ける場合、これらの者を保護し、その条件を監督する措置を講じるべきと定めています。
特に「同一労働同一賃金」の原則、すなわち、仕事の量と質に関し他の労働者と同じ要件を満たす類似の性質の作業には、公正な報酬支払と保護の提供に注意を払う必要があります。

実務では、見習労働者が国内最低賃金法令の適用範囲から除外されることがよくありますが、条約勧告適用専門委員会は、この慣行が最低賃金決定条約に違反しない可能性があることを確認しています。こうした場合には通常、見習期間の制限や、訓練確保に関する使用者の具体的な義務のほか、いわゆる「デュアル・システム(座学と職場内実習の組み合わせ)」に関し、訓練センターでの授業に出席するための休暇を含め、「見習」とは何かが明確に定義されています。

Q15:18歳未満のインターン、研修生、学生に適用される保護は、18歳以上のインターン、研修生、勤労学生にも適用されるのですか。

A15:最低年齢条約第3条第3項に定められている特別な保護には、政府による規制と監督に服する見習制度における年少者の健康、安全及び道徳の保護が含まれています。これらの保護は、危険有害な業務を含む見習労働に従事する16歳から18歳の年少者にも適用されます。
18歳以上のインターン、研修生、勤労学生には、その安全や福祉に関し、同様の危険有害な業務に従事するために訓練を受けた成人と同じ保護を与えるべきです。

<児童労働と若年雇用>

Q16:ある企業は18歳未満の者を雇用しないという約束をしています。しかし同社は、18歳未満の者も働く権利を有する国で事業を行っています。これは差別に関するILO条約に違反するのでしょうか。同社はどのような立場を採るべきでしょうか。

A16:労働における差別には「差別、除外又は優先で、雇用又は職業における機会又は待遇の均等を破り又は害する結果となるもの」がすべて含まれます [1]。ある者が、当該業務に固有の要件とは密接に関係のない特徴のために、他者よりも不利な待遇を受けるか、同じ条件、待遇又は基準が一部の者に不当に過酷な影響を及ぼす結果となる場合には、差別に該当します。年齢に基づく差別は頻繁に起きているため、そのような差別を禁止するための対策が奨励されています[2]。

若者に雇用機会を全く与えないのではなく、適切な条件下で雇用の機会を提供することは、最悪の形態を含む児童労働の撤廃に向けた効果的な対策のひとつです。企業は、最低就業年齢から18歳までの若者に、危険有害ではないディーセント・ワークの機会を与えることで、若者の雇用促進に重要な役割を果たすことができます。企業には、政府の雇用政策と目標を考慮して、雇用の機会と水準を向上させることが奨励されています[3]。多くの国では、若年雇用の拡大が中心的な政策目標となっています。

この企業は、法定の就業最低年齢を守るべきですが、最低年齢は通常15歳、一部の国では14歳、さらにその他の国では16歳と定められています。国内法で定める最低年齢が、この水準(先進国における15歳又は開発途上国における14歳)を下回っている場合、同社は従業員の最低年齢を15歳、又は開発途上国について例外的に14歳に設定すべきです[4]。

もし問題となる仕事又は業務が危険有害、すなわち、その性質又は遂行状況から見て、子どもの健康、安全又は道徳を害する可能性が高いとみなされるか、その他の最悪の形態の児童労働とみなされる場合には、18歳を最低年齢とすべきです[5]。また、18歳以上であることが当該業務に固有の要件であることが認められる場合にも、具体的な職務について18歳を最低年齢として義務づけることができます。それ以外の状況で、この制限を設けることは差別に当たります。

[1]1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)第1条第1項
[2]「雇用及び職業における平等に関する総合調査 」ILO(1996年)第234項を参照
[3] 「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」第16項を参照
[4] 1973年の最低年齢条約(第138号)を参照
[5] 1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)を参照

Q17:年少者(16歳以上、18歳未満)の労働時間や残業時間に関し、ILOはどのような労働基準を設けていますか。

A17:18歳未満の若者の労働条件を厳密に監督する措置を講じるべきです。具体的には、以下が挙げられます。
  • 「教育及び訓練(家庭における学習に必要な時間を含む。)、労働日における休息並びに余暇活動のために十分な時間がとれるような1日及び1週間の労働時間に対する厳格な制限並びに時間外労働の禁止」
  • 「夜間における継続12時間以上の休息及び慣例的な週休日の付与(真に緊急な場合を除くほか、例外の可能性が認められない。)」
危険有害な業務に当たるか否かを判定する際には「長時間労働など、特に困難な条件の下」で業務が行われているかどうかを考慮すべきです。危険有害な業務に従事することが認められる最低年齢は、18歳と定められています。