1949年の賃金保護勧告(第85号)

ILO勧告 | 1949/07/01

賃金の保護に関する勧告(第85号)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百四十九年六月八日を以てその第三十二回会議を開催し、
 この会議の会議事項の第七項目である賃金の保護に関する提案の採択を決議し、且つ
 この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
 千九百四十九年の賃金保護勧告として引用することができる次の勧告を千九百四十九年七月一日に採択する。
 総会は、各加盟国が国内事情の許す限り速かに次の規定を適用すべきこと、及びこれを実施するため執られる措置に関し理事会の要求に従い国際労働事務局に報告すべきことを勧告する。

Ⅰ 賃金からの控除

1 労働者及びその家族の生活を保護するため必要であるとみとめられる程度まで賃金から控除を制限するため、すべての必要な措置を講じなければならない。
2(1) 使用者の製品、動産若しくは設備の滅失又はこれに対する損害の賠償のための賃金からの控除は、関係労働者に明かに責任があると立証することができる原因で滅失又は損害が生じた場合のみ許されるべきである。
 (2) かかる控除の額は、公平たるべく且つ滅失又は損害の実額を超えてはならない。
 (3) かかる控除を為す決定が行われる以前に、関係労働者は、何故控除が為されるべきでないかの理由を証明するため合理的な機会が与えられるべきである。
3 使用者により供給される工具、材料又は装具に関する賃金からの控除を次の場合に制限するため、適当の措置を講じなければならない。
 (a) かかる控除が関係ある職業又は業務において慣習として承認される場合
 (b) かかる控除が労働協約又は仲裁裁定により定められる場合
 (c) かかる控除が国内の法令又は規則により承認された手続により別段に許容される場合

Ⅱ 賃金支払の定期性

4 賃金支払のための最長限度の期間は、賃金が次のものよりもしばしば(注:原文は旧字体)支払われることを確保しなければならない。
 (a) 賃金が時間、日又は週を以て計算される労働者については十六日を超えない期間において一月二回
 (b) 報酬が月又は年を基礎として定められる被用者については一月一回
5(1) 賃金が個数労働又は生産を基礎として計算される労働者については、賃金支払のための最長限度の期間は、できるだけ賃金が十六日を超えない期間において一月二回よりもひんぱんに支払われることを確保するようこれを定めなければならない。
 (2) 仕事の完成が二週間を超えることを要する仕事を遂行するために使用され、且つ賃金の支払のための期間が労働協約又は仲裁裁定により別段に定められない労働者については、次のことを確保するため適当の措置を講じなければならない。
  (a) 支払は、遂行される仕事の量に比例して、十六日を超えない期間において一月二回よりもひんぱんに計算されること。
  (b) 最終的決済は、仕事の完成から二週間以内に行われること。

Ⅲ 賃金条件の労働者への通告

6 労働者に知らせるべき賃金条件の詳細は、適当な場合には、次のものに関する事項を包含しなければならない。
 (a) 支払われるべき賃金の率
 (b) 計算方法
 (c) 賃金支払の定期性
 (d) 支払場所
 (e) 控除を為すべき条件

Ⅳ 賃金明細書及び賃金支払簿

7 すべての適当な場合において、労働者は、各賃金支払のとき、関係ある支払期間に関する次の詳細を知らされるべきである。尤もかかる詳細が変更される場合に限る。
 (a) 所得賃金の総額
 (b) 為されるべき控除(その理由及び額を含む。)
 (c) 支払われるべき賃金の正味額
8 使用者は、適当の場合において、使用する各労働者に関し前項に明示される詳細を示す帳簿を保存することを要する。

Ⅴ 工場売店の管理における労働者の参加

9 企業に関連してその労働者に製品を販売するため設けられる工場売店又は類似の施設の一般管理において、関係ある労働者の代表者特に工場福利委員会又は類似の機関(かかる機関が存在する場合)の委員が参加することを確保する取極を促進するため、適当な措置を講じなければならない。