仕事の未来世界委員会報告書

仕事の未来世界委員会報告書を世界に先駆けて日本で議論

 日本の政労使三者は世界委員会の報告書の価値を認め、人間を中心に据えた取り組みを促進し、社会契約を再活性化する上での社会対話の必要性を再確認しました。パネル討議では、報告書の内容が日本の仕事の世界全般、とりわけ働き方改革に関係することが明らかにされました。

記者発表 | 2019/02/01
基調講演を行うデボラ・グリーンフィールドILO政策担当事務局次長 © 厚生労働省 2019

 東京発ILOニュース-ILO駐日事務所と厚生労働省は2019年1月22日に発表された仕事の未来世界委員会の報告書を題材とするILO創設100周年記念シンポジウムを2019年2月1日に東京・千代田区のイイノホールで開催しました。ガイ・ライダーILO事務局長は加盟国に対し、世界委員会の報告書を国内政労使で検討することを呼びかけていますが、これに応える最初の機会であるこのイベントにはジュネーブのILO本部よりデボラ・グリーンフィールド政策担当事務局次長が来日し、世界委員会の委員を務めた清家篤慶應義塾前塾長と共に基調講演を行いました。

 髙階恵美子厚生労働副大臣、神津里季生日本労働組合総連合会(連合)会長、岡本毅日本経済団体連合会(経団連)副会長といった政労使代表による開会挨拶に続いて基調講演を行ったグリーンフィールドILO事務局次長は世界委員会報告書の内容と背景を説明し、清家前塾長は日本の文脈における報告書の意味合いについての見解を披露しました。

 グリーンフィールド事務局次長は、報告書が呼びかけている、人間を中心に据えた仕事の未来のための取り組みは、企業活動のみならず、経済・社会政策の中心にも人間と仕事を据えるよう提案していることを説明し、これは長い「旅の始まりに過ぎず、より明るい未来が達成できるか否かは私たちの選択にかかっている」と結びました。清家前塾長は、「生涯現役社会を作るためには、それと表裏一体のものとして、生涯学習社会と一対でなければ成り立たないことが示されている」との見解を述べました。

基調講演を行う清家篤慶應義塾前塾長 © 厚生労働省 2019

 基調講演と働き方改革の取り組み事例報告に続いて行われた政労使三者によるパネルディスカッションでは、1)労働時間・長時間労働是正、2)テレワーク等柔軟な働き方、3)非正規処遇改善、4)高齢者就労促進の四つのテーマが取り上げられました。人間を中心に据えた取り組みや人間が主導して科学技術を使うという考え方、技能開発、社会契約の再活性化などの具体的なテーマも検討されました。政労使三者は共に世界委員会の報告書の価値を評価しました。そして、破壊的な変化が進行中の仕事の未来に対処する上での社会対話の重要性と必要性に対する認識が改めて示されました。

働き方改革の取り組み事例報告 © 厚生労働省 2019

 閉会挨拶を行った田口晶子ILO駐日代表は、ILOの創設を「とてつもない夢」と表現した米国のフランクリン・ルーズベルト元大統領の言葉を引用した上で、「今度は、より明るい仕事の未来に向けて人間を中心に据えた取り組みを実施するというもう一つのとてつもない夢を実現する必要がある」と結びました。

政労使三者によるパネル討議 © 厚生労働省 2019

 このシンポジウムは、各国の国内事情に沿った加盟国政労使による世界委員会報告書の検討という新たな1章の幕開けを飾るものです。日本の国内イベントに続き、2019年6月に開かれる100周年記念ILO総会における議論に資する重要な貢献及び情報収集の機会となる一連の100周年記念イベントが世界各国で予定されています。


 以上は東京発英文記者発表の抄訳です。